新型コロナウイルスの
ワクチンの話題を提供してきました

ワクチン接種の大きな目的のひとつは
体内にウイルスに対する中和抗体を作らせることですが
中和抗体を体内に確実に存在させるためには
ワクチンより効率的な方法があります

それは 抗体カクテル療法 です

10月にトランプが新型コロナウイルスに感染したときに
ベセスダの海軍病院で行われた治療です

トランプが抗体カクテル療法を受けたことを報ずるニュース

あの時は まだFDAに承認されていなくて
ずいぶん大胆なことをやるなあ
でも あのシチュエーションで敢えてやるということは
余程 効果が期待されているのだろうと
書き手は関心を持ちながらニュースを聞いていました

なんだよ 奴が昔言っていたように
消毒液を点滴してやればいいのに!
なんとことは思っていませんでしたよ(笑)

トランプに抗体カクテル療法を行ったことを証明する文書


この治療は まず試験管内で
新型コロナウイルスを中和する抗体を作ります

新型コロナウイルスに感染して 回復した患者さんのなかから
中和抗体を大量に作っている人を探して
その患者さんの血液を採取して
新型コロナウイルスに反応するBリンパ球を精製します

そのBリンパ球から
抗体を作る遺伝子をクローニングして
それを永久に増える能力を持つ細胞に導入し
抗体遺伝子の産物である中和抗体を
持続的に大量に作らせます

抗体を作る過程を説明する図

こうして得られた たくさんの抗体から
ウイルス中和能が高い抗体を
スクリーニングして選び出します

抗体のスクリーニング方法を説明する図

そして お眼鏡にかなった抗体を
試験管内で大量生産して
抗体製剤として患者さんに投与するのです


で なぜカクテル療法かというと

上記のプロセスで得られた複数の抗体を
カクテルのように混ぜ合わせて投与するからです

どうしてカクテルが必要かというと
ウイルスは変異する可能性がありますから
ウイルスの異なる部分を認識する抗体を
組合せてカクテルにして使えば
たとえウイルスが変異しても対応できるし
ウイルス中和活性も高まる可能性があります

カクテルによりウイルス変異に対応できることを示す図

そのため
それぞれ十分な中和活性を有して
新型コロナウイルスのスパイクタンパクのRBDの
異なる領域に結合し
さらに相互に干渉しない抗体の組合せを絞りこむのです

抗体の組合せについて説明する図


現在 抗体カクテル療法をリードしているのはリジェネロン社
REGN-COV2という製品が
軽度から中度で入院していない799名の
新型コロナウイルス感染者を対象にした
第3相臨床試験にパスしています

製品化されたREGN-COV2

REGN-COV2による
ウイルス量低減と重症化抑制の効果が認められ
一定期間での安全性が確認されたのです


この製品は 2種類のモノクローナル抗体
REGN10933REGN10987のカクテルで

REGN10933とREGN10987は
RBDのトップとサイドの異なる個所に
互いに干渉することなく結合します

REGN10933とREGN10987が結合する部位の違いを示す図

前者はRBDドメイン内の
ACE2に直接結合する領域と重なっていますが
後者はほとんど重なっていません


REGN-COV2を中和抗体陰性者に投与すると
中和抗体陽性者にみられたのと同様なウイルス量の低減が見られ
ウイルス量低減効果は ウイルス量が高いほど顕著でした
また 症状緩和に至る日数の短縮も見られ
ウイルス量が高いほど顕著でした



そして驚いたことに FDAはワクチンより早く
11/21に緊急使用を許可しました

FDAが発行した緊急使用許可証

使用の対象となるのは
軽度から中度の症状で
重度にまたは入院が必要になるリスクが高い
新型コロナウイルス感染患者さんです

カクテル療法の適応患者について説明する表

期待されているのですね!


日本では12/10に中外製薬
REGN-COV2の日本における開発 販売に関する独占ライセンス契約を
リジェネロン社と提携しているロシュと締結したと
プレス・リリースされました

さすが中外さんです!
中外製薬が出したプレス・リリース

これは 意外に優れモノかもしれません
早く実際に臨床の場で使えるようになると良いですね

抗体カクテル療法について説明する図

でも 抗体製剤だから きっとお値段は張るのでしょうね
高橋医院