シェリー
スペインのワインで忘れてはならないのが シェリーです! シェリーはへレスの英語読みで まさにそのヘレス地方で作られる 独特の味わいのちょっと変わったワインです ヘレス地方は スペインの南 地中海に臨むアンダルシアとセビリアとカディスの間にまたがる へレス プエルト・デ・サンタ・マリア サンルカール・デ・バラメーダ を結ぶ三角形の地帯です 前回 ご紹介した北部のリオハやガリシア地方と異なり 太陽の光がさんさんと降り注ぎ 陽気な人たちがフラメンコを踊り イスラムに支配されていた頃の異国情緒も漂う まさにスペインらしいエリアです シェリーは 世界3大酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン) のひとつです 酒精強化ワインは 製造過程でアルコールが追加される アルコール度数の高いワインで 主にスペインやポルトガルで作られます 普通のワインのアルコール度数は11〜14度ですが 酒精強化ワインは15〜22度くらいあります スペインやポルトガルが大活躍した大航海時代 船の中は暑くなりやすいだけでなく よく揺れるために 通常のワインだと劣化してしまいます そこで そんな船内でも美味しくワインが飲めるように 酒精強化ワインが発案されました シェリーの原料となる白ブドウは ヘレス地方全域で栽培されているパロミノ種ただ一種です 夏の気温が高温に達するため ブドウの糖度がとても高くなり 香りも強くなります 食前酒に最高なのは 辛口のフィノ アモンティジャード やや塩味があるマンサニージャ 甘口タイプは デザートワインとしても楽しめます シェリーは 通常通りに発酵させた白ワインを樽に入れ 特殊な酵母を入れて作られます ワインが空気と反応できるように 樽の約4/5までワインを入れ 特殊な酵母が作る白い膜・フロールを表面に発生させます 冬が始まる前に ワインの繊細さにより 繊細なフィノ フルボディのオロロソ に分類します フィノは アルコール追加による酒精強化により アルコール度を15%にまで上げます このアルコール度だと フロールが発生しやすくなります 樽に移すと ワインの表面はフロールの膜で覆われているので空気に触れず フロールの影響により 独特のシャープな香りと 辛口の風味となります 色は もとのワインと同じままです つまり フロールがシェリー酒に独特の風味をもたらしてくれるのです フロールは 残糖 グリセリン アルコールなどの甘味成分を消費するので 辛口度が増します 辛口で軽く アーモンド風味の香りがします 同じく辛口のマンサリーニャは フィノよりキリッとした塩味を思わせる軽快な酸味がある辛口です アモンテイヤーは フィノを熟成させたもので 琥珀色で ヘーゼルナッツの香りがして ソフトでリッチな味わいが楽しめます 一方 オロロソは 酒精強化によりアルコール度を17%にまで上げ 特殊な酵母の働きを弱めフロールを消します そのため 樽のなかでワインは空気に触れて熟成するので 褐色の ドライで豊かな香り まろやかだけれど 重みがあり コクが強いワインになります その後 最低2年間は樽で熟成させます クリームは オロロソから作る甘口のシェリーで 刺激的な香りと強いコクがあります 甘口のシェリーは ペドロ・ヒメネスというブドウから作られます このブドウは糖分が非常に多いので 甘く濃厚な味わいのシェリーができます このように一口にシェリーと言っても多種多様で 食前酒として 食後酒として さまざまな楽しみ方があります 是非 さまざまなTPOに応じて飲み比べてみてください シェリー作りで面白いのは ソレラシステムと呼ばれる独特の 樽の保管・ブレンド方法です 樽を大きな倉庫で保存するとき いちばん古い樽から一定量のシェリーを抜いたら 次に古い樽から 抜いたのと同じ量を補填し その作業をいちばん新しい年の樽まで 順番に繰り返していきます こうして複数のビンテージをブレンドする 独創的な方法で作られます 辛口のシェリーは 夏の暑い日に木陰で食前酒としていただくのが最高です 個人的には トニックウオーターで割って シェリートニックで楽しむのも気にいっています 一方 オロロソやペドロ・ヒメネスは 寒い冬に暖かい部屋で食後にいただくと素敵です バニラアイスクリームにかけて食べても 美味しいですよ!
高橋医院