自己免疫反応で起こるセリアック病
アレルギー反応で起こる小麦アレルギー
と並ぶグルテン関連疾患が
グルテン過敏性腸炎です

<グルテン過敏性腸炎とは?>

セリアック病 小麦アレルギーではない人で
グルテンを含む食物の摂取により
セリアック病で見られるような消化管症状などを示し
グルテンの除去により症状の改善が得られる病気です

消化管でのグルテンの透過性および感受性が高まる疾患で
遺伝的素因 自己免疫機序 アレルギー機序などは
あまり病因に関係しません

グルテン過敏性腸炎について説明する図

<疫学>

世界の有病率は0.6~13%
日本での有病率は5%
と推測されています

過敏性腸症候群と診断されている患者さんのなかに
この病気の患者さんが潜んでいる可能性が示唆されていて
0.5~1%前後がグルテン過敏性腸炎ではないかと
推察されています

テイーンエイジャー 中年に多く
男性より女性に多いとされています

但し 後述するように
確定した診断基準やバイオマーカーがないので
正確な有病率ははっきりしていません


<症状>

腹部膨満 腹部不快感 腹痛 下痢
などが主症状で
吸収不良をきたすことは原則としてありません

腹部以外の症状としては
疲労 頭痛  関節痛 筋肉痛
皮膚症状 肌荒れ
不安感
生理不順 不妊
アトピー 喘息 鼻炎
などがあります

過敏性腸症候群の症状に似ていて鑑別が困難ですが
過敏性腸症候群に比較すると
貧血 体重減少 アトピーが多いようです

一方 自覚症状がない患者さんも非常に多い

そうした患者さんのなかには
日常生活で感じる程度の不調で
病院に行くほどの重い症状とは自覚していないことが多く
潜在的な患者さんが多数存在している可能性が
指摘されています

<診断>

残念なことに はっきりとした診断マーカーがありません

診断マーカーの候補は
いまのところ抗グリアジンIgG抗体のみですが
有用性はまだ確立されておらず
陽性率は50%程度とされています

またセリアック病で高頻度にみられる
HLA-DQ2 DQ8の陽性率は50%ほどです

つまり
セリアック病 炎症性腸疾患 過敏性腸症候群などを否定する
除外診断が主となります

グルテン チャレンジテストという検査があり
6週間 グルテンフリーの食事をしたあとに
2~8g/日のグリアジン(パン2枚 またはパスタ80g相当)を
1~2週間以上摂取し
臨床症状・病理所見の変化を評価する方法が提案されています

しかし 不確実で日常臨床では施行しにくいのが難点です

2週間の完全除去で 体調 症状の変化を見るテストもあり
除去後のグルテン再開で症状が再出現すれば
確実な診断が得られるとされています


<過敏性腸症候群との鑑別がポイント>

グルテン過敏性腸炎では
過敏性腸症候群を起こしやすい可能性が指摘されています

逆に 前述したように
長い間過敏性腸症候群として経過観察されていた患者さんが
グルテン過敏性腸炎である場合もあります

このように 今のところ
両者の関係には曖昧で不確実な点が残っています

グルテン過敏性腸炎の患者さんより
過敏性腸症候群の患者さんの方がたくさんおられるので
過敏性腸症候群の治療に難渋する場合に
グルテン過敏性腸炎の可能性を考えるべきかもしれません
高橋医院