イタリアで造られるブドウの粕取り蒸留酒グラッパ
世界でいちばん有名な粕取り蒸留酒と言えます

@ブランデーとの違い

ブドウを原料とする蒸留酒という意味では
グラッパもブランデーの一種に分類されます

ブランデーは
主に白ブドウの果汁のみを原料に造られ
そこから発酵 蒸留し 木樽で長期熟成します

一方 グラッパは
白ブドウに限らず黒ブドウからも造られ
ブドウの搾り粕が原料で
果汁以外にも皮や種が含まれているので
粕取りブランデーとも呼ばれています

グラッパ造りに利用されるブドウの搾りかす

ですから
果実の絞りかす(ポマース)を原料とした
ポマース・ブランデー」の仲間となります


蒸留方法も
法律でしっかり定められているブランデーと違い
グラッパは造り手によって蒸留方法が異なることから
アルコール度数が30~60度と差が生じる場合もあります

製造方法に造り手の個性が大きく表れるのが
グラッパの大きな特徴と言えます


@歴史

グラッパは
既に10世紀頃にはヨーロッパで流行していました

当時のワインは 上流階級が楽しむ贅沢品で
貴族などの富裕層しか飲めませんでした

そこで
庶民がワインの絞り粕に水を加えた「ヴィネッロ」を蒸留して
お酒を造り出したのがグラッパの始まりと言われています

このように大衆向けの蒸留酒として生まれたグラッパですが
イタリア北部の伝統酒でもあります

当時は 寒いときに体を温める
風邪をひいたときにミルクに混ぜて飲むなど
まさに素朴な安酒といった立ち位置でした


@造り方

ワインを醸造した時に出た
ブドウの皮 種 果軸やブドウ果汁の残りなどを
加熱してアルコールや香りを蒸発させ
その後冷やして液体にしたものがグラッパです

赤ワインの搾りかすには
アルコールが相当量含まれていますが
白ワインの搾りかすにはほとんど含まれないため
グラッパを造る際は
搾りかすをもう一度発酵させてから蒸溜します


伝統的には「非連続式」と呼ばれる蒸留法で造られていました

グラッパ造りをする小さな蒸留所のオーナー

この方法は
近年主流の「連続式」と比べると大量生産に向いていませんが
原料の香りや風味はこの蒸留法の方が生きるので
「非連続式蒸留」で造られているグラッパは
造り手の個性を楽しむことができます

マールのように樽熟成をすると
円熟味が増しまろやかな味わいになりますが
逆にグラッパが持つブドウのフレッシュなアロマを感じることは
できなくなります

こうした造り手の個性を存分に楽しめること
何とも言えないブドウのフレッシュなアロマを楽しめることが
グラッパの最大の魅力と言えるでしょう


@造り手

グラッパ専門の造り手が
ワインを造る際に生じるブドウの搾り粕を
ワイナリーから買い取って造りますが
ワイナリーがグラッパを造ることもあります

イタリアワインの帝王と呼ばれる「ガヤ」や
元祖スーパータスカンを生み出した「サッシカイア」などの
有名な銘柄のブドウを使用したグラッパもある一方で

ガヤのグラッパのボトル
サッシカイアのグラッパのボトル

既に亡くなられてしまいましたが
北イタリア ピエモンテ州の小さな町で
小規模な自家製造を続けたレヴィ爺さんのような
素朴な味わいの手作りグラッパを少量生産する
カルト的造り手もいて

ラベルの絵を描くレヴィ爺さん
ラベルをボトルに貼るレヴィ爺さん

レヴィ爺さんが
ラベルに自筆の可愛いいイラストを描いたボトルは
ガヤやサッシカイアを上回る値段で
取引されることもあります

レヴィ爺さんのグラッパのボトル
レヴィ爺さんのグラッパのボトル・その2

@熟成期間

最も多いタイプが
ガラスやステンレスタンクで最低6ヶ月間熟成させた若いグラッパで
無色透明でフレッシュな香りと味わいが特徴的です

若いグラッパ

一方で 長期熟成されたグラッパや樽熟成されたグラッパは
ブランデーのような色が付き 味もまろやかになります

なかには10〜20年と
かなり長期熟成させたグラッパもあります

長期熟成されたグラッパや樽熟成されたグラッパ

トラミネールモスカートなどの
特に芳香性が強いブドウ品種の搾り粕から造られたグラッパは
「グラッパ・アロマティカ」と呼ばれます

熟成方法や熟成期間に指定はないものの
素晴らしい香りが持続していることが特徴です

グラッパ・アロマティカ

書き手はモスカートのグラッパが大好きです!


@楽しみ方

ストレートでいただくのがいちばんで
原料のブドウのフルーティーな香りを楽しめます

イタリアでは
エスプレッソに少量のグラッパを混ぜて飲む
カフェ・コレット」という楽しみ方も一般的で
グラッパのブドウの香りがふわっと立ち上り
リラックスさせてくれますが

エスプレッソとグラッパ
カフェ・コレットを造っているところ

書き手はグラッパがもったいなくて
ストレートでしか飲みません(笑)

小振りで特徴的な形をしたグラッパグラス
ブドウの搾り粕のフルーティーな香りを楽しみましょう!

グラッパグラスに注がれたグラッパ
高橋医院