原発性硬化性胆管炎・PSCと並ぶ
胆管が固くなる病気が
IgG4関連硬化性胆管炎です

この病気もPSCと同様 国が定める指定難病です

<IgG4関連硬化性胆管炎とは?>

*血清IgG4値の上昇
*胆管壁におけるIgG4陽性形質細胞とリンパ球の密な浸潤と
 線維化と閉塞性静脈炎
を特徴とする胆管炎です

高率に自己免疫性膵炎を合併するのが特徴で
合併率は約90%に達します

自己免疫性膵炎以外にも
全身にさまざまなIgG4関連疾患を合併する例が多く
IgG4関連疾患の胆管病変と考えられています

IgG4関連疾患については このあと詳しく説明します

ステロイド治療にに良好に反応するのも
大きな特徴です

<疫学>

患者数は 概ね2500人ほどで
60 歳以上の高齢者に多く
平均年齢は66歳

男性が83%を占めます

<症状>

黄疸が最も多く
患者さんの35%が呈しますが

無症状のまま診断された症例が
28%と多いのが特徴的です

いずれの場合も
自己免疫性膵炎の合併はおよそ90%程度です


<診断基準>

画像 血清学的 病理組織学的所見
他のIgG4関連疾患の併存
ステロイド治療の有効性
の組み合わせにより診断されます

@胆管の特徴的な画像所見
壁肥厚をともなう びまん性または限局性の胆管狭窄

@血清IgG4高値

@胆管外のIgG4関連疾患の合併

@胆管壁の病理組織学的所見
1)高度なリンパ球・形質細胞の浸潤と線維化
2)IgG4陽性細胞>10/HPF
3)花筵状線維化
4)閉塞性静脈炎
の4 項目のうち3 項目以上を満たせば
IgG4関連硬化性胆管炎の組織学的確診

これらの項目以外に
ステロイドによる治療効果が
オプションの項目として採用されています


<分類>

@胆管像による分類

*Type 1
64%を占める
下部胆管(膵内胆管)に狭窄を呈するタイプです

下部胆管がんや膵臓がんとの鑑別が重要です

*Type 2
13%で
肝内外の胆管に多発性に狭窄を呈し
PSC との鑑別が重要になります

*Type 3
10%で
下部胆管と肝門部胆管に狭窄を呈します

*Type 4
10%で
肝門部胆管に狭窄を呈し
胆管がんとの鑑別が必要とされます

Type 3 4のように
肝門部に限局性に狭窄をきたす病変は
胆管がんを慎重に除外する必要があるので
胆管生検や管腔内超音波検査(IDUS)などが推奨されます

@自己免疫性膵炎の合併の有無による分類

繰り返しになりますが
IgG4関連硬化性胆管炎は
自己免疫性膵炎を高率に合併します

両者とも
多くは下部胆管の狭窄をともないますが
胆管壁の肥厚と
膵の炎症と浮腫による影響の両方を加味して
両者を評価する必要があります

自己免疫性膵炎の合併を認めず
IgG4関連硬化性胆管炎単独で発症する場合もありますが
4.4%に過ぎません

Type4が多いとされています

この場合は診断が難しく
胆管像のType分類を行い
各々のTypeの診断アルゴリズムに従って
鑑別診断を進めていきます


<原発性硬化性胆管炎・PSCとの鑑別>

IgG4関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎の
胆管像は類似しているので
両者の鑑別は重要です

@疫学

IgG4関連硬化性胆管炎は
60 歳以上の高齢者に多いのに対し
PSCは若年者と高齢者の二峰性を示します

PSCでは
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の合併が多いですが
IgG4関連硬化性胆管炎では
炎症性腸疾患の合併はまれです

@病理所見

炎症の主座が上皮であるPSCとは異なり
IgG4関連硬化性胆管炎の上皮には
細胞障害や炎症細胞浸潤はみられません

@治療効果

PSC
予後不良の進行性の慢性疾患で
ステロイドや免疫抑制剤治療に反応せず
現時点では肝移植のみが唯一の治療法と考えられています

IgG4関連硬化性胆管炎予後良好で ステロイド治療に反応する可逆性病変です

このように
IgG4関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎では
さまざまな大きな違いがあるので
鑑別は比較的容易です


<二次性硬化性胆管炎との鑑別>

PSCでも説明しましたが

*感染症 胆管悪性腫瘍に伴う胆管硬化性変化
*胆道の手術や外傷 総胆管結石に伴う慢性炎症
*先天性胆道異常
*腐食性硬化性胆管炎
*胆管の虚血性狭窄
*動注化学療法による胆管障害や狭窄に伴うもの

などの二次性胆管病変の可能性を除外する必要があります


<胆管がんとの鑑別>

肝門部や肝内胆管のIgG4関連硬化性胆管炎の胆管像は
肝門部胆管がんの胆管像と類似しています

IgG4関連硬化性胆管炎の存在が
まだ社会に浸透していなかった頃は
胆管がん疑いで切除されたIgG4関連硬化性胆管炎もありました
高橋医院