長らく続いてきたワイン解説も いよいよ最後
ボルドーとブルゴーニュのワインの解説に入ります

フランスの2大ワイン銘醸地である
ボルドーブルゴーニュ

ボルドー ブルゴーニュの位置を示す地図

この2大銘醸地は
文化 経済を含めたさまざまな観点から
対比して語られることが多いです

<ボルドー>

ボルドーの宣伝ポスター


ボルドーでは
カベルネ・ソーヴィニヨンメルロといった
タンニンの強い品種を用い
重厚な赤ワインが産み出されます

濃い紫赤色の深みのある色合い
内向的で優雅な香りがあり
ベルベットにたとえられる舌触り
タンニンによる渋み
も楽しめます

畑が存在する場所により土壌の質が異なるので
いくつかの品種が栽培され 
それらをブレンドしてワインが造られます

ボルドーのブレンドシステムを説明する図

見た目 色合いが重視され
熟成したタンニンを口の中で長い間転がして
テイスティングして評価します

年代物が貴ばれますが
高価だし それほどたくさん飲めません(笑)

また ボトルは「いかり肩」で
澱が沈まりやすい形になっています

ボルドーとブルゴーニュのボトルの形の違いを示す図


ボルドーは起伏のない地形で
広大な敷地にブドウ畑が延々と続き
その中にシャトーと呼ばれる
お城のような建物が点在しています

ボルドーのシャトー

ブルゴーニュの
ドメーヌ(ブドウ栽培農家 ワイン醸造家)が有する畑面積は
平均約8ヘクタールほどですが
ボルドーの格付けシャトーの平均的な畑の規模は約50ヘクタールで
その規模は大きく異なります

ボルドーの広大なワイン畑

また
ボトルの5大シャトーの生産量は併せて100万本超え

これはブルゴーニュのトップドメーヌの
コント・ラフォンのモンラッシェが約1000本
リジェ・ベレールのラ・ロマネが約3000本
であるのに比べると
生産量は300~1000倍にもなります

ボルドーの年間総生産量の多さを示すグラフ

ちなみに
中国などの新興市場の登場や収穫量減少などの理由から
近年ブルゴーニュワインは世界的に品薄となりがちですが
生産量が多いボルドーでは そうしたことはありません


歴史的 経済的には
ボルドーには大きな港があったので
12世紀以降のイギリスの世界市場の拡大により
ボルドーワインは重要な輸出品として
海外に輸出され始めました

ボルドーの月の港

ボルドーワインの輸出先は
今では世界約170ヵ国に及び
世界中で1秒間にボトル21本が売れています

ボルドーの海外輸出量が多いことを示すグラフ

金額と取引量のパフォーマンスなどの基準から選出される
毎年注目のランキング“パワー100”最新版では
フランスワインの輸出に関しては
2年連続で1位にラフィット 2位マルゴー 3位ムートンと
上位はすべてボルドーワインで占められ
4位に初めてブルゴーニュのロマネ・コンティが入っています

ボルドーでは
ブドウ畑の所有者はブルジョワ的 貴族的なイメージがあり
教養があり 洗練されていて
身なりも洒落ています

ボルドーのブルジョワ的 貴族的なイメージががあるワイナリーの建物


<ブルゴーニュ>

ブルゴーニュの宣伝ポスター

ブルゴーニュで造られる赤ワインは
基本的にはピノ・ノワールだけの
単一品種を用いて造られます

ベルベットや絹のような
繊細で口触りの滑らかさを有しています

鮮やかな赤色
強烈に発散する香り
絹のような口当たり 爽やかな喉越し
が特徴的です

ピノ・ノワールでできたワインのボトル

また ブルゴーニュワインは
栓を開けた時の
ブーケと呼ばれる香りが重視されます

ブーケを楽しむ風景

ブルゴーニュ用のワイングラスも
ワインの香りが楽しめるような形になっています

ブルゴーニュ用のワイングラスの形状を説明する図


歴史的には ブルゴーニュに設立された
ベネディクト派クリュニイ会 シトー会などの
大修道院が貢献し

ブルゴーニュの大修道院

修道士たちは 畑が位置する場所により
個性が異なるワインが生まれることを見抜いて
古くから良いクリマを識別してきました

ワイン造りをする修道士たち
ブルゴーニュのクリマ

そうして造られたブルゴーニュワインは
ブルゴーニュ公爵 フランス王 アヴィニヨン教皇らが
顧客となりました


ブルゴーニュの地形は ボルドーと異なり
きつい傾斜が中心の地形で

ブルゴーニュの斜面に広がるワイン畑

細かく分散 区分けされた畑の所有者は
田舎風の農民的なイメージの小規模農家が中心で
ひとつの畑を
多くの所有者が分割して所有していることもあります

ブルゴーニュの小規模なワイン畑の外観

また前述した「なで肩のボトル」は 
17世紀に造られ始めました


<ボルドーとブルゴーニュの愛好家はタイプが異なる>

@カトリックとプロテスタント

ボルドー愛好家はプロテスタント
ブルゴーニュ愛好家はカトリックが多い

ボルドー愛好家は
プロテスタントの倫理に従うように
過度に酔っぱらわず 自制心を持ちながら飲みます

カベルネ・ソーヴィニョンを飲むと
厳粛な気分 豊かな深みのある精神状態になり
モンテーニュやモンテスキューについて
語りだしたくなるそうです

@ローカルとグローバル

ボルドーは 輸出などで世界に開かれた印象があり

ブルゴーニュは
地域密着型のローカルなワインという傾向があります

@元気な人のワイン 病人のワイン

ブルゴーニュ愛好家は
ピノ・ノワールは官能的なブドウで
あふれんばかりに豊かなワインで
飲み手が全身をゆだねながら酔っぱらって楽しむ
と評価します

ボルドーは病人のワインで
ブルゴーニュは元気な人のためのワイン
というジョークもあるそうです(笑)
高橋医院