IgG4関連硬化性胆管炎の
病因 検査所見について説明します

<病因>

抗核抗体の出現
発症と関連したHLA遺伝子型の存在
ステロイドに対する良好な反応性
などにより 自己免疫の関与が推測されていますが
はっきりとした病因は明らかにされていません

<病理組織の特徴>

主に肝内外の大型胆管に発生し
貫壁性にみられる高度のリンパ球と形質細胞の浸潤と
線維化により
胆管壁の肥厚をきたします

また
炎症は胆管壁のみならず
肝外胆管周囲の脂肪組織 末梢神経 肝門脈域に波及します

IgG4陽性細胞の増加は特徴的ですが
しかし 特異的ではありません
この点は注意すべきです

<検査>

@血清IgG4値

135mg/dLがカットオフ値とされていて
90%の症例が高値を示します

IgG4関連硬化性胆管炎の診断や
胆管がんやPSCとの鑑別にも
血清IgG4 値の測定が提案されています

しかし
IgG4関連硬化性胆管炎においても
10%の症例では血清IgG4高値を認めず

胆管がんでも8~14% PSCでも9~22%で
血清IgG4高値例を認めることから

血清IgG4高値は
IgG4関連硬化性胆管炎の診断には有用ですが
必ずしも特異的ではなく
胆管がんやPSCを
血清IgG4 値のみで否定できるものではありません

特に 胆管がんの否定が重要なtype 3 4では
カットオフ値を206mg/dLと高めに設定して鑑別すべき
という意見もあります

@MRI MRCP

胆管拡張 壁肥厚 胆管の全体像を 非侵襲的に描出でき
胆管の拡張や狭窄の程度や分布が把握できます

IgG4関連硬化性胆管炎の胆管像の特徴は
*比較的長い狭窄
*下部胆管の狭窄
*原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像所見
(数珠状狭窄 帯状狭窄 憩室様突出など)を認めないこと
です

また 胆管壁肥厚は
胆管像の狭窄部のみでなく
非狭窄部にも広範囲におよぶのが特徴的です

@胆管外病変

再度 強調しますが
自己免疫性膵炎を87~92%と高頻度に合併します

自己免疫性膵炎においても
IgG4関連硬化性胆管炎の合併は多く
特に下部胆管狭窄は
自己免疫性膵炎の80%程度に認められます

それ以外のIgG4関連疾患としては
*涙腺・唾液腺炎
*後腹膜線維症
*腎病変
*肺病変
*動脈病変(大動脈 冠動脈)
*リンパ節病変
などが報告され
これらの合併の検索を行うことが提案されています

@肝生検

特異的な組織像を認めることはまれで
推奨されていません

@ステロイド治療のトライアル

自己免疫性膵炎 他のIgG4関連疾患をともなわないタイプのように
胆管がんやPSCとの診断が難しい症例に対して
慎重な胆管がんの除外診断を行ったのち
ステロイドトライアルを行うことが提案されています

ステロイドトライアルの効果判定は
ステロイドを0.4~0.6mg/kg で投与し
1~2 週後に胆管像の改善をMRCP/ERCPで確認します

改善がない場合は
悪性腫瘍を疑い もういちど再検討すべきです
高橋医院