栄養素としてのタンパク質
久しぶりに ヒトの体の仕組みの話をします タンパク質は 糖質 脂質と並ぶ3大栄養素ですが 生体活動におけるその機能が注目されることが多く 栄養素としては糖質や脂質ほど 脚光を浴ることがありません <タンパク質の消化・吸収> 食物に含まれているタンパク質は 消化管で消化・吸収されて アミノ酸として体内に入ります @消化 胃で消化酵素のペプシンにより ぶつ切りにされます ペプシンは 強い消化作用を有しているので まず不活性型のペプシノーゲンとして分泌され 胃酸の作用で一部が切り離されて 活性型のペプシンになります このシステムにより 分泌細胞がペプシンで自己消化されるのを 防いでいます さらに十二指腸で 膵液に含まれるトリプシン キモトリプシンなどにより さらに細かく分解されます これらの酵素も それぞれ不活性型として分泌され トリプシンにより活性化されます 吸収される直前には ペプチダーゼにより 1~3個のアミノ酸にまで分解されます @吸収 アミノ酸は 吸収上皮細胞の膜にあるトランスポーターにより 吸収されます 吸収されたアミノ酸は 体内でタンパク質を作り エネルギー源 糖新生の材料としても利用されます <エネルギー源としてのタンパク質> タンパク質1gから 4kcalのエネルギーが産生されます 脂質は9kcal 糖質は4kcalです 運動時は エネルギーの10%が タンパク質から供給されます <栄養素としてのタンパク質 アミノ酸の指標> @生物価 摂取した食品に含まれる窒素の 何%が体内に残るかを計算した値で これが多いほど 生物価・栄養価が高いといえ 70以上だと良質とされます 牛乳 卵 80~90 牛肉 大豆 75 小麦 50~55 米 65~70 @アミノ酸価・栄養価 その食品に含まれる必須アミノ酸のなかで 最も不足している第一制限アミノ酸の量をもとに 計算される値で 必須アミノ酸がどれだけ含まれているかを示します 牛乳 卵 牛肉 大豆 100 米 61 小麦 39 @目玉焼きでも大丈夫? タンパク質が加熱されると 高次構造が崩れて形が変わりますが 栄養価・アミノ酸組成は変わらないので 焼いて食べても大丈夫です むしろ加熱により形が変化することで 消化されやすくなったりします <食後 低血糖時の体内アミノ酸動態> @食後 食事で得られたアミノ酸により 血中アミノ酸が増加し 食後に筋肉などで促進しているタンパク質合成に使われます インスリンは 組織へのアミノ酸吸収の促進 タンパク質合成の促進 分解の抑制 を行い タンパク質の代謝を助けます @低血糖のとき 低血糖時には糖新生が促進されますが 体タンパク質の分解が促進されて アミノ酸が糖新生の材料になります <アミノ酸の出納> 体内のアミノ酸プールは *食物から得られたアミノ酸 *体内で合成されたアミノ酸 *体内のタンパク質が分解されてできたアミノ酸 から成り立ちます このプールには 20種類のアミノ酸が必要量だけ保たれています アミノ酸プールのアミノ酸を利用して 体内で必要に応じてタンパク質が作られます 体内では常にタンパク質が作られているので 食事としてタンパク質を摂取して アミノ酸プールを補充する必要があります また 体内でエネルギー不足が起こると アミノ酸は 糖新生 脂肪酸 ケトン体の合成の材料となり エネルギー源として使われます 一方 過剰になったアミノ酸は 肝臓で尿素に変換されて排泄されます
高橋医院