セリフを語り
ストーリーを説明し
歌を唄う

それを全部ひとりでやってしまうのが太夫です

その迫力たるや まさに圧巻! 

驚きで思わず口が開いてしまいました!

大夫の写真

舞台の幕が上がると
上手の床が盆回しでくるりと180度回転して 
左に太夫 右に三味線弾きが正座して登場します

上手の床の写真
三味線弾きの写真

この出場の仕方が 意表をついていて
しかもなんとなく滑稽で 

初めてみる者にはとても印象的です!

太夫は 見台という脚本(床本と言います)を
置く台から

見台という脚本の写真

床本を両手でとりあげ 
頭の位置にまで持ち上げて
床本に深く一礼してから 語り始め
舞台がスタートします

床本の写真""

セリフは
主人公の侍 その奥さん 子供にいたるまで 
全部ひとりの太夫が語る

野太いどすの効いた声
可憐な若い女性の声
幼い子供の声 

あらゆる音色 抑揚のセリフを
間髪入れずに語り分けるのですよ!

ホント びっくりです!

そして
ストーリーを語るナレーション部分では
三味線が控えめに情感を醸しだし
声高らかに歌を唄う部分になると
三味線は全力で盛り上げる

これが延々と続くわけで
再度 ホントにびっくりしました

大夫が歌う様子

この迫力 テンポのキレはすごい!

いやー この雰囲気が味わえただけでも 
初めて文楽を見に来た甲斐がありました

昔は文楽を「見る」のではなく「聴いた」そうで 
素直に納得です!

太夫が主役で 
人形は太夫が語り唄い上げる世界の表現を
お手伝いしているだけ?
 
そんな気すらしてきました

こんなに全てをひとりで仕切ってしまう舞台形式は 
日本でも西洋でもあまりないのではないかな?
 

面白かったのは
舞台の両脇にセリフが表示される
電光掲示板があること

確かに日本語なのに
聞き取りづらいこともあるのですが
義太夫節は全て
文楽発祥の地の関西弁で語り唄われているそうです

なるほどです


太夫は床の上で 腹から声を出して語り唄うため
お尻の下に「尻引き」という
小さな台のようなものを置き 
それに載ってつま先立ちの姿勢をとり

「尻引き」の写真

着物の下には腹帯を巻き 
さらに「おとし」という拳大よりちょっと大きめの
ミニ米俵のようなものを腹に入れ

「おとし」の写真

腹式呼吸で 
しっかりと大きな朗々とした声を
お腹の底から出せるように工夫しています

腹式呼吸する大夫の様子
 
声を作るのに20年

50歳代でも若手と言われる文楽の世界にあって
人形遣いよりも三味線弾きよりも 
さらに一人前になるための修業期間が長いとか

腹から出すのが「声」でなく「音」になるには 
さらなる修行が必要だそうです 

再度なるほどですが
でも 三味線弾きも人形遣いも従えて 
自分の声だけで「世界」を作り上げるのは 
さぞかし気分が良いことでしょう

いやー この世界は奥が深そうです(笑)


 

高橋医院