<ヒトの一生と腸内細菌叢の形成>

人の腸内には
膨大な量と種類の細菌が存在していますが

オギャーとお母さんから生まれてきたばかりの
赤ん坊の腸内には
細菌は全く存在していません

いわば腸内無菌状態で 人は生まれてくるのです

お母さんの産道を通っている間に
腸は初めてさまざまな細菌に暴露され
その後も色々な細菌が侵入してきて
徐々に腸内細菌叢が形成されていきます

まず生後3~4日で
体に良い影響を及ぼす善玉菌とされる
ラクトバチルス(乳酸桿菌) ビフィズス菌が
増えてきます


善玉菌が増えていく様子

その後の腸内細菌叢の形成は

*衛生環境 
*食事内容 
*抗生物質の使用 

などにより影響されます

抗生物質の腸内細菌叢形成への関与については
前回ご紹介しました


中高年になると
善玉菌のビフィズス菌が減ってきて
有害物質を産生する悪玉菌ウェルシュ菌が増えてきます

いわば 腸内細菌叢の老化現象ですね


<善玉菌と悪玉菌>

ところで 善玉菌と悪玉菌は何が違うのでしょう?

既にご紹介したように
腸内細菌は
人が食べて胃などで消化されて
それから腸に流れてくる消化物を食べています

人それぞれに食べ物の好みがあるように
腸内細菌も細菌の種類ごとに好みが決まっていて
特定の菌は特定の消化された成分を食べる

そしてある細菌の排泄物が
他の細菌に食べられるという連鎖が形成されます

この過程で腸内細菌が作る「代謝産物」の一部が
腸から吸収されて血液を介して全身に回り
人の健康状態に影響を与えます

良い影響を与える成分を作る菌は 善玉菌

悪い影響を与える成分を作る菌は 悪玉菌


@善玉菌

腸内細菌叢の20~30%を占め

病原菌の増殖を防いで整腸作用や吸収力を高めたり
免疫活性を増強したりします

ビフィズス菌乳酸桿菌がその代表ですが
下痢のときに処方するお薬の一部は
これらの善玉菌の成分です


@悪玉菌

全体の10%ほどで
アンモニア アミン フェノールといった有害物質を産生して
タンパク質を腐敗させたりします

大腸菌 ウエルシュ菌などがその代表で
前述したようにウエルシュ菌は加齢により増えてきます

善玉菌と悪玉菌の特徴を説明する図

@残りの60~70%は日和見菌

善玉菌が多いときはおとなしくしていて
悪玉菌が増えてくると同調して悪さを始めます

バクテロイドスがその代表です

日和見菌が増えたり減ったりする様子

うーん 日和見が多いのは
人の世界も腸内細菌の世界も似たようなものでしょうか?(笑)
高橋医院