ビールネタの続編で

前回ご紹介したラガーとエールの
製造法の差異について説明します


ビールの起源は 
古代オリエントにまでさかのぼれると言われています





ビールの造り方を 思い切り簡略化して説明すると

*大麦を水につけて発芽させ 
 麦芽内で酵素のアミラーゼを活性化させる

*アミラーゼが 大麦のでんぷんを糖質に分解する

*糖質に酵母が作用して
 アルコール発酵によりアルコールと炭酸ガスができる

*できたアルコールにホップを加えて苦味を出させる

主なポイントはこれだけです


極端な話
大麦で出来たパンを湯につけて放置しておき

空気中に運良くビールを作れるような酵母が浮遊していて
落下してきたら
ビールもどきができるわけです

実際に
ランビックビールという種類のベルギービールは
今でも醸造所の空気中に浮遊している野生の酵母を用いて
作られています

ランビックビール


中世の修道院では
これと似たような方法でビールもどきが作られ

栄養満点な飲み物として
病人に療養食として供されていたとか

修道院のビール造り

うーん でも マズそうですね(笑)


で 今日のお題に戻って
ラガーとエールでは 
この作り方のどこが違うかというと

酵母の種類が違うのです

ビール酵母

左利き系の方は
上面発酵 下面発酵という言葉を
聞かれたことがあるかもしれません

アルコールが作られる発酵の過程で

発酵槽の上面に浮いてくるタイプの酵母を
上面発酵酵母

逆に下に沈んでいくタイプの酵母を
下面発酵酵母

と呼びますが

ラガービールは 下面発酵酵母で
エールビールは 上面発酵酵母で 

作られます


もともとビール造りは 
上面発酵酵母を使っていました

つまり 昔はビールと言えばエールだった

上面発酵のエール


というのも 
上面発酵は下面発酵より
造り方が簡単なのです

上面発酵酵母を用いると 
20℃前後の常温で短い時間で発酵が行われ
盛んに炭酸ガスを出すため 
最終的に酵母は上面に浮かんできます

温度管理をする必要がないので 醸造は簡単!

そして
発酵させたときと同じくらいの温度
つまり室温程度で飲むと美味しく 
複雑な香りと深いコクが楽しめます


一方 下面発酵酵母を用いたビール造りは
10℃以下の低温で 
長時間の発酵を行う必要があります

15世紀後半に 
南ドイツ・バイエルン地方の醸造家達が
低温でも活動する酵母の存在に気づきました

低温で醸造できるということは
高温醸造に比べて雑菌の繁殖や腐敗を防げて好都合で
しかも出来上がったビールは
エールに比べると 穏やかで爽快な飲み心地でした

下面発酵のビール

しかし 空調設備がない時代でしたから
秋の終わりにビールを仕込んで 
洞窟の中で氷とともに貯蔵し
翌春に取り出すといった作業をしていました

貯蔵(ラガー)されたビールなので 
ラガービールと呼ばれるようになり

冷却機などの設備が発明された
19世紀以降に世界中に普及し

その後の設備の改良により 
大量生産できるようになったことから

大規模工場で製造されるラガーは 
先輩のエールをしのぎ
今やビールの主流になっています


確かにラガーは爽快感があり穏やかな香りで
冷やすとさらに美味しくなるので
日本のように夏の湿気の多い環境では
とても美味しいし しかも飲み飽きない

しかし ラガーは 
なんとなく味も香りも画一的で 深みがない

そんな風に感じる人たちの間で
香りが高く複雑で 味に奥行きがある
エールの魅力が広がり始め


さらに折からの 
地ビール・クラフトビールブームが重なりました

クラフトビールの工場

地ビール・クラフトビールの多くは
ラガーでなくエールで
(エールを造るには大規模設備はいりませんから)

さらに醸造所ごとの個性的な味わいが楽しめるため
空前のエールビールブームが巻き起こっています

前回のビールブログにも書いたように
書き手もエールの魅力にはまっているひとりです


そういえば 今年の書き手の誕生日には
書き手の趣味をよくご存じのスタッフさんたちから
こんなプレゼントをいただいて 
とても嬉しかったです!

プレゼントされたビール

確かに夏のラガーは
喉越し爽快で美味しいけれど

これからの季節は 
生ぬるいエールをゆっくりと味わうのに最適です

色々なブリュワリーのエールを飲み比べも楽しいです

まだエール未体験の方は 
是非 楽しんでいただきたいと思います


ちなみに 
書き手が今年いちばん感動したのが このエール

ファーイースト ブルーイング社の 
和が香るエール 馨和(かぐあ)

かぐあビール

山椒の香りがして 本当に美味です!
高橋医院