健康診断などで
内視鏡検査もバリウム検査も行わず

血液検査だけで
胃がんのリスクを判定する
ABC健診

が普及しています

負担にならない血液検査で
胃がんのハイリスクの方を見つけ出して
リスクが高い方には
内視鏡検査を受けていただこう
という趣旨の検査です


ただ 唐突に胃がんのリスクが高いと言われても
いったいどうしてそんな結果が得られたのか
戸惑う方も多いことでしょう

そこで
胃がんリスク健診であるABC健診では
どのようなことが行われているか
説明します


<ABC健診で行われていること>

ABC健診では 採血を行い

*ピロリ菌抗体の有無

*ペプシノゲンという物質の血中動態

を評価して
ピロリ菌感染の有無
胃の粘膜の委縮や炎症の有無
を調べています


ABC検査で行われる血液検査


これまでに説明してきたように
胃がんの発生には
ピロリ菌感染が密接に関わっていますから
ピロリ菌抗体の有無の重要性は
ご理解いただけると思います

では もうひとつのペプシノゲン検査とは
何なのでしょう?


<ぺプシノゲンとは?>

胃の細胞から分泌される
消化酵素・ペプシンのもととなる物質で

ペプシノゲンの約1%が血中に流れ出すので

その血中濃度を測定することにより 
胃粘膜での
ペプシノゲン生産動態がわかります

@ペプシノゲンI とペプシノゲンII 
 その分泌部位の違い

ペプシノゲンには
ペプシノゲンI とペプシノゲンII の
2つのタイプがあります

*ペプシノゲンIは
 主に胃の体部にある
 胃底腺から分泌されるのに対し

*ペプシノゲンIIは
 胃底腺に加え
 噴門腺(胃の入り口)や幽門腺(胃の出口)からも
 分泌されます

ペプシノゲンI Ⅱの分泌部位


@胃粘膜萎縮による
 ペプシノゲンI Ⅱの分泌量の変化

胃粘膜の萎縮が進行すると
胃の体部にある胃底腺の領域は萎縮するので
ペプシノゲンI は低下

また
胃の出口にある幽門腺の領域が
相対的に拡張するため

胃の胃底腺 幽門腺領域の位置

ペプシノゲンI に対して
ペプシノゲンII の量が相対的に増加してきます


@ペプシノゲンI/IIの比 が示すこと

このように 
胃粘膜萎縮が進行すると
*ペプシノゲンI の量が低下し
*ペプシノゲンI/IIの比が低下
してきます


胃粘膜の萎縮度とペプシノゲンI/II比の関係

したがって
ペプシノゲンI/II比を見ることによって
胃底腺領域の胃粘膜の萎縮の程度を
予測することが出来るわけです

胃粘膜の萎縮の程度が強いと
発がんの可能性が高くなりますから
こうした予測は非常に重要です

実際に
ペプシノゲンI/II比と
内視鏡検査の結果を照合すると

ペプシノゲンI/II比が低い人ほど
胃がんの発見率が高く

胃がんの80%はペプシノゲン検査で
診断することが出来ました


<ペプシノゲンI量とペプシノゲンI/II比の評価による胃がんの予測>

そこで 
*ペプシノゲンIの量
*ペプシノゲンI/II比
の両方の値を評価により
胃がんの陽性率を推測することができます

結果は
ペプシノゲン検査 陽性 陰性
と表します

@強陽性(3+)
:ペプシノゲンIが30ng/ml以下 
 かつ ペプシノゲンI/II比が2以下

@中等度陽性(2+)
:ペプシノゲンIが30~50ng/ml
 かつ ペプシノゲンI/II比が2~3

@陽性(1+)
:ペプシノゲンIが50~70ng/ml
 かつ ペプシノゲンI/II比が3以下

@陰性(-)
:ペプシノゲンIが70ng/ml以上
 または ペプシノゲンI/II比が3より大きい


"ペプシノゲンI量

ただし 下記のような方は
血液中のペプシノゲン値が非生理的な変動をするため
正しく評価できないので注意が必要です

胃酸分泌抑制剤やプロトンポンプ阻害剤服用中の方
*胃切除後の方
*腎不全の方



<ABC健診の判定>

ABC健診の判定は
ピロリ菌抗体 ペプシノゲン検査の結果の組合せにより

@A群 ピロリ菌抗体・陰性 ペプシノゲン検査・陰性

@B群 ピロリ菌抗体・陽性 ペプシノゲン検査・陰性

@C群 ピロリ菌抗体・陽性 ペプシノゲン検査・陽性

@D群 ピロリ菌抗体・陰性 ペプシノゲン検査・陽性

の4群に分けて行われます


A群はもっとも胃がんのリスクが少なく
B群 C群 D群の順番に
リスクが高くなると判定します

A群は
ピロリ菌もいないし 
胃粘膜の萎縮もないので
大丈夫

B群は
ピロリ菌はいるけれど
まだ胃粘膜の萎縮はないので
心配ない

C群は
ピロリ菌がいて 
胃粘膜の萎縮があるので
心配

D群は
胃粘膜の萎縮があり
しかもピロリ菌がいなくなるほど
萎縮が進んでいる可能性があるので
最も心配

というわけです

ABC検査の結果の意味と胃がんの危険率

ですから
ABC健診で胃がんリスクありと判定されたら
必ず内視鏡検査を行い
実際に胃の中がどうなっているか確認すべきです

リスクがあると診断されても
必ずがんがあるわけではありませんから
必要以上の心配は無用ですが

しかし内視鏡検査は
是非とも受けられた方が良いでしょう

がんは 早期発見がいちばん大切です!

高橋医院