ピロリ菌の除菌治療
さて 除菌治療ですが 慢性胃炎でのピロリ菌除菌治療が 健康保険で認められているのは 世界で我が国のみです 胃がんが多い我が国ならではの 先進的な医療体制として誇れることと思います <1次除菌治療> 除菌治療(1次除菌)は *2種類の抗生剤と *1種類の胃酸分泌を抑える プロトンポンプ阻害剤(PPI) (潰瘍などの治療に用いられる薬です) 合計3種類の薬を 1日2回 1週間連続して服用します それだけで終了です 使用される抗生剤は *ペニシリン系抗生物質 アモキシリン(商品名 パセトシン サワシリン) *マクロライド系抗生物質 クラリスロマイシン(商品名 クラリス クラリシッド) です 抗生剤は ピロリ菌を殺菌するため プロトンポンプ阻害剤は 胃酸を抑えて 抗生剤が効きやすい状況を作るために使用します @除菌成功率 この治療での除菌成功率は 約70~80%ですが 抗生剤が効きにくい人では 約50%程度になります @除菌治療が上手くいかない人 *抗生剤にアレルギーがある *慢性呼吸器疾患(慢性気管支炎など)で 抗生物質を服用している したことがある *中耳炎 慢性副鼻腔炎で 抗生物質を服用している したことがある *風邪 肺炎などの呼吸器感染症で 抗生物質を服用している したことがある といった方では 除菌成功率が低下しています @クラリスロマイシン抵抗性のピロリ菌の増加 クラリスロマイシン抵抗性のピロリ菌が 増えているのも問題で 風邪でクラリスロマイシンを服用する機会が 増えているためと考えられています <2次除菌治療> 1次除菌が不成功だった場合 クラリスロマイシンの代わりに メトロニダゾールという抗原虫剤を使って 2次除菌治療を行います 2次除菌の成功率は約90~95%と高率です なお 2次除菌を行っている1週間は 飲酒を控えることが勧められています というのも 2次除菌で使用するメトロニダゾールは アルコールの代謝を妨げて 吐き気や腹痛を生じることがあるので 原則的に内服中は飲酒の中止が必要なのです 左利きの皆さん ご注意ください <新たな酸分泌抑制薬を用いた除菌治療> 最近のトピックとして PCABという新しい種類の胃酸分泌を抑える薬を用いた 除菌治療があります このPCAB(タケキャブ)は 従来使われていたプロトンポンプ阻害剤とは異なる仕組みで 胃酸分泌を強力に抑制するので 1次除菌の成功率は92.6% 2次除菌でも98.0%と 非常に高い成功率が得られます <3次除菌> 不幸にして2次除菌でも除菌できなかった場合は さらに抗生剤の種類を変えて 3次除菌を行うことになりますが 残念ながら3次除菌は 保健医療では認可されていないので 自費診療となります <除菌治療の副作用> さて 除菌治療で心配なのは 副作用だと思います これまでの統計学的解析により 約40%の方で副作用がおこると考えられています いちばん多いのが 下痢 軟便・水様便で 5%以上で認められます 1~5%の頻度でみられるのが 味覚異常 腹部膨満感 便秘 かゆみや発疹などの薬剤過敏症状です 頻度が1%以下の比較的珍しいのは 肝障害 動悸 血圧上昇 吐き気 口の渇き 口内炎 舌炎 胸焼け 下血 血便 腸炎 食道炎 胃部不快感 食欲不振 頭痛 めまい 倦怠感 顔のむくみ といった副作用です これらのなかでも 薬疹 発熱 動悸 腹痛 下痢 血便 などがあったら 服薬を中止してすぐに受診されることをお勧めします <治療の効果判定> うまく除菌できたかどうかの判定は 治療終了後4週間以上の間隔をとり 尿素呼気試験か便中抗原測定で検査して 評価します ただし PPIを服用している場合は 30-40%に偽陰性になるので それを防ぐために 判定前の2週間はPPIを休薬する必要があります ピロリ菌の除菌治療について イメージをしていただくことができたでしょうか? 当院では ピロリ感染胃炎の診断のための内視鏡検査は 聖路加国際病院か中央区内の専門施設に依頼し 除菌治療および判定は 院内で行っています ピロリ菌や除菌について 何か不明な点 相談したいことがありましたら お気軽にお問い合わせください
高橋医院