万葉集にも登場する
歌人の山上憶良は

「酒粕を湯でといて暖をとる」

という内容の歌を詠んでいたそうですから

既に7世紀には 
日本酒を温めて飲む風習があったようです


では
どうして日本酒を温めて飲む風習が
広がったのでしょう?

昔の日本の冬は 
暖冬の今とは違って寒かったから
体を暖める目的で 
自然とお酒を温めて飲むようになったのではないか
と言われているようですが

そうしたことが書かれている
一連の資料を読んでいて
書き手がとても印象深かったのは

日本酒をお燗してお客様に供することは
まさに「お・も・て・な・し」である 
というご指摘でした


なるほど

幸田露伴は娘さんに「酒は心を注げ」と 
燗酒の心得を説いたそうですが

確かに上手にお燗をするのは 
簡単そうに見えて難しい

実際に家で 
お燗の試行錯誤をしている
書き手が言うことだから
間違いありません?(苦笑)

ましてや ゲストのことを

寒くないかな 
お腹の減り具合はどうかな 
酔い具合はどうかな

などと考えながら 
お燗の温度を調節するのは
とても高度なおもてなしだと思います

「粋なおもてなしは日本酒から」と書かれたポスター

そうか 日本酒の燗は おもてなし か

これ 日本酒の広告のキャッチコピーに 
最適なのでは?(笑)


さて 
どうして日本酒を温めると 
美味しくなるのでしょう?

それは
味覚が温度により変化するからです

以前に舌の味蕾で感じる
甘・塩辛・酸・苦・うま味 
の味覚の話をしましたが

味わうものの温度が体温近くになってくると

*塩辛みはやわらかく 
 苦味は弱くなりますが

*甘味は強くなり
 さらに温度が上がると
 うま味を感じるようになり

*酸味は
 うま味に変化していきます

温度による塩辛み 甘味などの味覚の変化を示したグラフ

つまり日本酒の温度が上がることにより
 
辛みや酸味はなくなって 
まろやかに感じられるようになり

さらに
甘味やうま味を強く感じるようになる

そうしたことにより 
料理との相性も広がるそうで
これこそが お燗の効用

個人的にはとても納得できます!(笑)


お燗をすることで 
そのお酒の良さが引き出されることを

燗あがりする 燗映えする 

と表現するそうですが

「燗上がり」を説明するチラシ

そのようなタイプのお酒は
生酛造り・山廃造り純米醸造のタイプです

書き手が大好きなタイプの日本酒で
生酛や山廃についてウンチクしたいのですが
それはまた別の機会にして(苦笑)

ひとことで言うと
昔からの伝統的な手間のかかる方法で
造られたお酒です

生酛や山廃について説明した図

このタイプのお酒は
乳酸 コハク酸 アミノ酸といった
うま味成分が多く含まれているので
温めることによって 
うま味成分がより強く感じられ

さらにうまくバランスして美味しくなって
燗上がりするわけです

再度 なるほど です

山廃純米酒の一升瓶

ちなみに 若い女性などに人気がある
フルーティで良い香りがする大吟醸系
乳酸 コハク酸 アミノ酸は
ほとんど含まれておらず

冷えると美味しく感じる
リンゴ酸を多く含むので 
燗酒でなく冷酒で飲むのが美味しい

なるほど

燗酒で美味しいお酒には
うま味成分が多く

冷酒で美味しいお酒は
リンゴ酸が多い

なんだか ロジカルな感じがします!(笑)


それにしても うーん
大吟醸と純米の差異についても
色々と語りたいのですが
これも別の機会にすることにしましょう(再苦笑)

ということで
書き手のようなにわか日本酒ファンと違い 
本物の日本酒愛好家は

「冷たくすればどんな酒でも 
 冷たさでごまかされて美味しく感じるが 
 舌と同じ温度にすれば
 本当に美味しい酒しか美味しいと感じられない」

と言われ

夏場でも体温とほぼ同じぬる燗や熱燗で
楽しまれる方が多いそうです

そうか
ツウは夏でも燗酒か

夏になると冷酒を楽しんでしまう書き手は 
まだまだ修行が足りないようです
もっと勉強しないと?(苦笑)

錫のちろり

そのためには 
お燗するときに重宝する 錫のちろり 
買っちゃおうかな

でも 見つかったら
怒られそうだな(苦笑)


高橋医院