妊娠糖尿病
最近の中央区は 人口増加率が東京23区で一番高く 特に30~40歳代の若い人口が 増えているそうですが 当院に来院される患者さんを見ていても ベビーカーを押して来院されるお母さんも多いので このデータは納得できます 今日は そんなお母さんや これからお母さんになろうとしている方に参考になる 妊娠糖尿病の解説をします <お母さんが糖尿病だと心配なこと> 妊娠したお母さんが糖尿病の場合は 糖尿病が妊娠に及ぼす影響が心配です お母さんへの影響ですが 妊娠初期の血糖コントロールが不良の場合 流産率が高くなると言われており 赤ちゃんへの影響としては 妊娠初期にお母さんの血糖が高値だと 赤ちゃんの先天奇形の発生が高率となり 妊娠中期 後期にお母さんの血糖が高値だと 巨大児 新生児低血糖症 高ビリルビン血症 低カルシウム血症 呼吸窮迫症候群 多血症 などが起こりやすくなることが示されています ですから 専門医による適切な治療が必要ですが <妊娠糖尿病とは?> 妊娠時にホンモノの糖尿病ではなくても 妊娠経過中に 糖尿病に近い状態になることがあります これを 妊娠糖尿病 といいます 妊娠時に診断されたホンモノの糖尿病は含まれず 妊娠中にはじめて発見または発症した 糖尿病に至っていない糖代謝異常 のことを指します *妊娠初期の血糖値が100mg/dl以上の場合 *妊娠24~28週の血糖値が100mg/dl以上の場合 妊娠糖尿病と診断されます 妊娠糖尿病の頻度は 約10%とされています 意外に高率ですね! @妊娠糖尿病になりやすいリスク因子 *妊娠前のお母さんが肥満であること (非肥満者に比べ BMIが25~29.9だと2倍 30~34.9だと3倍のリスク) *妊娠初期の空腹時血糖値が高いこと (<75mg/dlに比べ 100~105mg/dlでは12倍のリスク) *妊娠糖尿病歴がある *妊娠中に過度の体重増加がある *糖尿病の家族歴がある *巨大児の出産歴がある *高齢出産 などがあげられます 妊娠糖尿病と診断された場合 本格的な糖尿病にならないように 糖尿病専門医に食事や運動について 相談していただく必要がありますが <妊娠糖尿病の方は 出産後にご注意!> 妊娠糖尿病でいちばん問題になっているのが 無事に出産したあとのことです というのも 妊娠糖尿病だった妊婦さんは その後 かなり高い確率で ホンモノの糖尿病や生活習慣病になることが 最近の研究で明らかにされてきたのです たとえば 糖尿病の発症に関しては 妊娠糖尿病だった妊婦さんは そうでない妊婦さんに比べ 7倍の発症リスクがあり 産後5年の調査では 正常血糖の方の発症率は1%なのに 妊娠糖尿病だった妊婦さんは20%にも達する という報告もあります また アメリカの産後3年の検討では 妊娠糖尿病の妊婦さんは そうでない妊婦さんと比べて 生活習慣病に 約4倍なりやすく 糖尿病の原因となるインスリン抵抗性には 約3倍なりやすい とされています つまり 妊娠中に妊娠糖尿病と診断された方は たとえ妊娠後に血糖値が正常化していても 数年以内に糖尿病を発症するリスクが高いので 注意して経過観察する必要があるのです しかし 残念ながら 妊娠糖尿病と診断された方で 出産後もきちんと経過観察されている方は 60%あまりで 40%の方は放置されてしまっている との報告があります 女性は閉経を境にして 女性ホルモンの分泌が減り 糖尿病や生活習慣病になりやすいことは 既に説明しましたが 妊娠糖尿病だった方は それ以前に糖尿病を発症するリスクがあるのに 放置されている場合が多いのは とても心配なことです 特定健診が始まるのは40歳からですから 30歳代前半までに出産されて その際に妊娠糖尿病だった方は 40歳までに糖尿病を発症してしまう可能性があるので 経過観察をしていないと 発症が見落とされてしまう危険性があります 逆に 出産後も定期的に経過観察していれば 糖尿病や生活習慣病の発症を 早期に見つけることができ 閉経後のそれらの増悪に 早くから対処できます ですから *妊娠経過中に妊娠糖尿病と診断された方 *糖尿病の家族歴がある方 *巨大児の出産歴がある方 などは 出産後は子育てに忙しくて大変だと思いますが 年に何回かは内科を受診されて 糖尿病のチェックをされることが大切です お母さんたちに 是非お願いしたいと思いますし 当院も お母さんたちが糖尿病にならないよう 尽力したいと思っています
高橋医院