食後に中性脂肪値の高値が持続する状態の
怖さについて解説してきましたが

食後高TG血症の診断は 
どのように行えばよいのでしょう?

食後高血糖の診断には 
経口ブドウ糖負荷試験が行われます

食後高血糖の診断に用いられる経口ブドウ糖負荷試験の概要を示す図

75gのブドウ糖が入った飲み物を 
一気に飲んでいただき
飲む前 
飲んだあと1時間 
2時間後
に採血をします

食後高TG血症の診断にも
似たような 経口脂質負荷試験 が必要でしょうか?

実際に 
脂肪を含む食事の経口負荷試験が用いられることもありますが
(生クリームをベースにした200gの食事を食べる場合が多いです)

たっぷりの生クリーム

実施方法が繁雑で長時間を要するため
被験者の負担が大きく
さらに標準化された方法や正常値なども
確立していないのが現状です


確かに
経口ブドウ糖負荷試験では
ジュースを一気飲みすればいいですが
経口脂質負荷試験は
クリームの一気食いですから(しかも美味しくない)
ちょっときついかも(笑)


<食後高脂血症の診断に用いられる指標>

@食後TG値

そこで 
食後の血中TG値で判断するのが一般的です

血中TG値は
早朝空腹時は150mg/dl以下が基準値ですが

血中中性脂肪値が示す意味をまとめた図


糖尿病やメタボの方は 
120mg/dl前後まで下げないと
食後高TG血症が解消されないとの
日本人を対象とする報告があります

そして
食後の血中TG値が 200mg/dl以上なら
明らかに食後高TG血症と診断し
治療介入を要するとされています

200をリミットとするサイン


@レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP-C)

TG値の代わりに
血中レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP-C)
測定されることもあります

RLP-Cは 
LDLやHDL以外のリポタンパクを測定しており
厳密には食後血中TG値を正確に反映しているとは言えませんが
参考にはなります

レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP-C)についてまとめた図


@カイロミクロン カイロミクロンレムナントに
 特異的なアポタンパク

食後血中TG値を正確に反映する
カイロミクロン カイロミクロンレムナントの
双方の構成アポタンパクの
Apo B-48を計測する試みもなされており

カイロミクロン カイロミクロンレムナントを構成するApo B-48を示す図

実際に
耐糖能異常症例 冠動脈疾患症例で
高値を示すようです


耐糖能異常症例 冠動脈疾患症例でApo B-48が高値を示すことを明らかにするグラフ


未だ研究レベルですが
新たな食後高TG血症マーカーとして注目されています


<食後高TG血症の治療>

基本はやはり 食事療法と運動療法 です

食事療法と運動療法をしている人の写真

肥満であれば まず3~5%の減量を目指します

@食事療法

食後TG値の上昇を抑える
EPA/DHAなどの
ω3系脂肪酸を豊富に含む青魚
脂質の吸収を抑制する食物繊維を
たくさん摂るようにします

魚に含まれるEPA DHA
それ以外にも

 *糖質やアルコールを控える

 *間食 
 とくに甘いものや果物のとり過ぎに注意

 *男性の場合は飲酒が主な原因である事が多いので 
 節酒につとめる 

といった注意が必要です

@薬物治療

EPA/DHAを原料とした製剤は 
TG値を低下させる作用があり
実際に高TG血症の治療に用いられています

EPA/DHAを原料とした製剤の写真


薬物療法ではフィブラート製剤が第一選択になります

フィブラート製剤の作用機序を示す図

この薬剤は 核内受容体PPARαに結合することにより

*脂肪酸からTGの合成を抑え

*LPL発現を増加させTGの分解を促進し

TG値を低下させます

フィブラート製剤の核内受容体PPARα結合による遺伝子発現増強を示す図


高LDL-C血症の治療に用いられる
スタチン製剤の一部には
LDL-C値だけでなくTG値もさげる作用があります

同じく高LDL-C血症の治療に用いられる
エゼチミブ
同様の作用があるようです
高橋医院