フリーラジカル
前回に解説した活性酸素と並んで 酸化ストレスを起こす張本人が フリーラジカルです フリーラジカルは 活性酸素と何が違うのでしょう? <フリーラジカル不対電子を有している> フリーラジカルは 不対電子という 対になっていない単独の電子を有する 原子や分子です 通常の原子や分子は いちばん外側の電子軌道を 回っている軌道電子が 2つずつ対になって存在し そのために安定していて 他の原子や分子とは反応しません しかし ここに熱や光などの形で エネルギーが加えられると 片方の軌道電子が 軌道を外れて飛び出して 残った電子が ひとりぼっちの不対電子になり フリーラジカルができます フリーラジカルは ひとりぼっちの不対電子を 安定化させようとするため 他の物質から電子を奪おうとします ひとりぼっちの電子は 寂しがり屋なので 他の人とコンタクトしたがるわけです だから 反応性が高く いろいろな物質と 容易に酸化還元反応を起こしてしまい 電子が次々に受け渡される 連鎖反応が起きます 量はとても少なく 寿命もとても短いのですが 生成された局所で瞬間的に働いて 酸化ストレスによる ダメージを起こします <フリーラジカルは 窒素や脂質など さまざまな物質が反応して生じる> で 活性酸素との違いですが 活性酸素は 酸素をもとにした反応で生じてくる物質ですが フリーラジカルは 酸素だけでなく 窒素や脂質など さまざまな物質が反応して生じます また 反応性の基となる不対電子を 持っているかどうか がポイントで 前回ご紹介した活性酸素のうち スーパーオキシドとヒドロキシラジカルは 不対電子を持っているので フリーラジカルであり 過酸化水素と一重項酸素は 不対電子を持っていないので フリーラジカルではありません 大丈夫ですか? 混乱していませんか?(笑) <フリーラジカルの種類> フリーラジカルに属するものとして *酸素 水素原子 *活性酸素の スーパーオキシド ヒドロキシラジカル *窒素化合物 :一酸化窒素 二酸化窒素 *過酸化脂質 :脂質ペルオキシラジカル 脂質アルコキシルラジカル などがあります 上述したように 酸素だけでなく 窒素や脂質などから産生されるものがあるのが 活性酸素との大きな違いです <窒素化合物 NO> 窒素化合物は 反応性に富むフリーラジカルで なかでも注目されているのが 一酸化窒素・NO です 一酸化窒素合成酵素・NOSの働きにより 酸素とアミノ酸のアルギニンから合成されますが さまざまな生理機能を有しています サイクリックGMP を合成させ 細胞内のシグナル伝達に関与したり 神経伝達物質としても働きます また 血管内皮細胞で産生される内皮型NOは 血管の平滑筋を弛緩させて 血管を拡張させ 血圧を調節しています 血小板凝集抑制作用もあるので 抗動脈硬化作用を発揮します 一方で 脂質過酸化物を分解する グルタチオンペルオキシダーゼの働きを 抑制するので NOがあると 細胞内で脂質過酸化物が分解されず 過酸化脂質が増え 細胞障害につながります このように NOは 生体にとって有益な面と不利益な面を 併せ持っています 過酸化脂質は 話が長くなるので稿を改めて解説します ということで 生体にとって有害な酸化ストレス反応の主役 活性酸素とフリーラジカルの違いが イメージできたでしょうか? ともに他の物質との反応性が強く ダメージを与える厄介者ですが 活性酸素は ヒドロキシラジカルが主たる悪者ですが フリーラジカルは役者が多く さまざまな作用を有している そんなイメージで とらえていただければ良いと思います 次回は 活性酸素やフリーラジカルが産生される場面について 説明します
高橋医院