活性酸素
生体にとって有害な 酸化ストレスを起こす正体が 活性酸素・フリーラジカルであることを 前回ご説明しました ただ 活性酸素やフリーラジカルという単語は 色々なところで 見聞きすることが多いと思いますが なにがどう違うのか よくわかりませんね?(笑) そこで まずは 活性酸素の説明から 活性酸素の正式名称は 活性酸素種 :ROS Reactive Oxygen Species 生体内で 酸素を消費する過程で発生する 酸素が変化した 不安定で反応性の高い物質です 電子が1個足りない状態 にあるので不安定で 足りない電子を補充するために 他の物質とやたらと 反応したがります 他の分子を酸化する能力が高く 生体成分である DNA 脂質 タンパク質 などと反応して それぞれに傷害を起こします 活性酸素の仲間は4種類あり まず 酸素からさまざまな反応により 電子がひとつ放出されると 1番目のメンバーの スーパーオキシドができます スーパーオキシドから 電子がひとつ放出されると 2番目のメンバーの 過酸化水素になります 過酸化水素から 電子がひとつ放出されると 3番目のメンバーの ヒドロキシルラジカルになります また上記の連続反応とは別口で 酸素に紫外線などのエネルギーが加わると 4番目のメンバーの 一重項酸素ができます では それぞれについて 少し詳しく見ていきましょう @スーパーオキシド わずかなエネルギーで 容易に生成します 生体内での濃度は比較的高いですが 脂質との反応性は低く 細胞膜を通過することはできません 活性酸素のメンバーのなかでは おとなしいタイプで 自身の反応性は低いのですが 他の悪さをするROSの 前駆物質の役割を果たしているので 侮ることはできません @過酸化水素 肝臓で作られる 生体内の濃度は比較的高いROSで 非常に安定しています 細胞膜を通過できますが 生体分子に傷害を及ぼすことはありません カタラーゼ ペルオキシダーゼにより分解され 酸素と水になります 傷の消毒にも用いられる有用性もあり 活性酸素の優等生的な存在です @ヒドロキシルラジカル 酸化力が最も強い活性酸素で いちばんの悪者です 最も反応性が高く 強力な酸化作用を有し アミノ酸 脂質 金属イオンなどの 生体を構成する分子に 大きなダメージを与えます 細胞膜の脂質を 毒性の高い過酸化脂質に変え そうした反応の誘導により 次々に反応が起こり 細胞死の引き金がひかれます 遷移金属(銅や鉄)の存在下で スーパーオキシドや過酸化水素から 生成されます 寿命はとても短いので 生成した局所のごく近くに存在する分子にしか反応せず 濃度も比較的低いのですが なにせエネルギーが強く 分子を構成する結合のなかでも強力な 炭素と水素の結合さえも 簡単に切断できてしまうので 非常に厄介です あとで詳しく説明しますが 生体には酸化ストレスに対する防御機構があり スーパーオキシドや過酸化水素を消去する 抗酸化物質は存在しますが いちばん手強いヒドロキシルラジカルを 消去する物質は あいにく存在しないのです そういう面からも ヒドロキシルラジカルは難敵です @一重項酸素 スーパーオキシドや過酸化水素よりも 反応性が高く ヒドロキシルラジカルについで 酸化力が高い物質で アミノ酸の ヒスチジン トリプトファン メチオニンと よく反応します このように 活性酸素は生体内で酸素が反応する際に生じる物質で その寿命は短いものの 生じた局所でまわりの分子を傷害する性質を 有しています 特にヒドロキシルラジカルは反応性が高く さまざまな分子を傷害して 疾患の病態形成に関わっています 活性酸素の イメージができたでしょうか? 次回は フリーラジカルについて説明します
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