実は エロオヤジ?

えっ クラーナハのことですよ

書き手のことでは 
ありませんからね(笑)

回顧展の最後の方に

女のちから 女のたくらみ

というタイトルのコーナーがありました

なんだか 
すごいタイトルですね(笑)

女のちから 女のたくらみ 

というのは

クラーナハが生涯 
描き続けたテーマで

ドイツ美術では 
このテーマが描かれることが多いのだそうです

女性の身体的魅力 性的誘惑によって 
男が堕落して破滅に至る

うひゃー 大人の世界ですね!

このコーナーで展示されていたのが

英雄ヘラクレスが 
女王オンファレにより骨抜きにされ
だらしないデレデレ顔で 
女性に取り囲まれているこの作品

英雄ヘラクレスがだらしないデレデレ顔で 女性に取り囲まれている様子

この作品は 
女のちからを如実に表現しているのですが

ヘラクレスと距離をおいて 
背後の右端に立つ女王オンファレの
見る者を挑発するかのような視線が 
ポイントなのだそうで

女性の 
絵画を見る者を見つめるような 
ちょっとあやしげな視線が
見る者の欲情を刺激するよう 
意図的に描いている

というのです

うーん そんなこと 
少なくとも意識下では
感じたことはなかったけれど

無意識下では 
感じていたのかしらん?(笑)

そして 
年老いた男性が 
若い美しい豊満な女性を抱き寄せて
うっとりと見つめている
「不釣り合いなカップル」

年老いた男性が 若い美しい豊満な女性を抱き寄せている様子

ジジイの目線がデレデレなのに 
女性の目線はとても冷めていて

そのコントラストが 
世の中の哀愁を感じさせますが

この絵も 女のたくらみ を
表現しているのかもしれません

そして面白かったのが
テレビ番組の 
ぶらぶら美術・博物館のクラーナハ特番で
コメンテーターの 
おぎ・やはぎ さんが 
こんな指摘をしたのですよ

これ 自画像じゃないの?

笑えました!

前回ご紹介したように 
クラーナハ自身が
画家兼実業家として成功をおさめ 
経済的に裕福でもありましたし

それに加えて 
女性が大好きで
自分の理想とする裸体画を
描き続けていたオヤジなわけですから

確かに 
デレッと若い女性を抱き寄せる裕福なオヤジは
クラーナハ自身かもしれません?(笑)

クラーナハ 
後世 この作品がそんな評価を受けるなんて
思ってもみなかったかな?(笑)

そして 女のちから 女のたくらみ を
締めくくる作品が

この  ユデイット

ユデイット

いやー この絵は美しかったです!

この回顧展のために
ウイーン美術史美術館での
3年間の修復 クリーニングを経たあとで

ビックリする 
思わず息を呑むほどの美しさで
作品の前でしばらく動けませんでした

ユデイットがホロフェルネスを誘惑して 
その首をとってしまう
という かなりショッキングなモチーフな
作品なのですが

ホントに美しいのですよ、、、

ユデイットは 
どちらかというと無表情で

一方 首を切られたホロフェルネスは 
恍惚とした表情にも見える

このコントラストが すごい

男を誘惑して滅ぼしてしまう運命の女 
ファムファタールの手にかかると
男は最後に 
こんな表情を示してしまうのでしょうか?

男って せつないですよね?(苦笑)

テレビ番組の日曜美術館のクラーナハ特番では 
ゲストが

ユデイットの表情は 能面のような表情だ

と評されていました

若い女性の能面

うまい比喩だ! と思いましたね

無表情のように見えますが
でも 得体の知れない妖しさが 
にじみ出ている

同番組の女性アナウンサーは
女性から見ると 力強さ 心地よさを感じる
と述べられていて

えーっ そうなの?


女のちから 女のたくらみ って 
ホント 奥が深いな!
と 書き手はしみじみ思ったわけですよ(苦笑)

ということで 
クラーナハの回顧展 
充分に楽しむことができました

これまでは
変わったヌードを描く画家といったイメージしか
ありませんでしたが

画家だけでなく実業家としても成功する一方で
ちょっと変態オヤジっぽいエロオヤジでもあった彼の
人となりが知れて
とても面白かったです
高橋医院