中央区・内科・高橋医院の
ダイエットに関する情報


糖質は
体にとって重要なエネルギー源なので

糖質を制限する糖質ダイエットでは
糖質の代わりのエネルギー源が
必要になります

ここで エネルギー源となるのが 脂肪です

糖質ダイエットで痩せる理由のひとつが
脂肪がエネルギー源として消費されるので減る 
ということでした

このときに 
糖の代わりにエネルギーの材料になるのが 
ケトン体 です

糖質制限とケトン体との関わりを示す図

ケトン体は
糖質が枯渇した状態の肝臓で 
脂肪酸から変換されるもので


糖質制限でケトン体が生じて燃やされるメカニズムの説明図


血流に乗って筋肉や心臓に運ばれ
それらの組織の細胞内で 
アセチルCoAに戻され
TCA回路でエネルギー産生の材料になります


ミトコンドリア内で脂肪が代謝されケトン体が出てくる過程を示した図


糖質ダイエットの是非をめぐる論争では
このケトン体が 
大きな主役になっています

というのも

ケトアシドーシスという

糖尿病のコントロールが
不良なときに起きてくる
ケトン体が過剰に蓄積して血液が酸性に傾く
命にかかわる危険な病態があり

糖尿病性ケトアシドーシスの発症機序の説明図

糖質制限で
ケトン体が産生されるようになると
ケトアシドーシスになって危険だと
考えられたからです

糖質ダイエット反対論者からは
今でも 
そうした危惧が懸念されています


この論争の決着をつける前に
ケトン体について
もう少し詳しく説明したいと思います

ケトン体
糖質不足時の重要なエネルギー源になることを
説明しましたが

水溶性なので脳にも容易に到達し
糖質と同様に 
脳のエネルギー源としても利用されます


ケトン体が脳でエネルギー源として使用されることを示した図

ケトン体は 
肝臓で 
ケトン体回路という代謝経路で産生されます

糖質がないと
脂肪細胞内の中性脂肪が分解され
血中に遊離脂肪酸が放出され 
肝臓に取り込まれて
それを原料にしてケトン体が変換されます

肝臓でケトン体が産生されることを示した図

上述したように
ケトン体は肝臓から血中に出て 
脳 心臓 筋肉などに運ばれ

それぞれの臓器の細胞内で
アセチルCoAに戻されて 
TCA回路でエネルギー産生の
材料になります

糖質が枯渇(約13時間を要する)してから
4~5時間たつと 
ケトン体回路が動き始めます


こうした事実から

ヒトのエネルギー産生系は 
2プラトンシステムである 

という考え方が提唱されています

2プラトンは

*糖質を原料とする
 エネルギー産生系(解糖系)

*脂質(脂肪酸)を原料とする
 エネルギー産生系(ケトジェニック系)

のふたつを意味します

解糖系は 
糖質を摂取したときに
糖がエネルギー源になり

ケトジェニック系は
糖質がないときに
ケトン体がエネルギー源になる

解糖系経路 ケトン体経路を比較した図

糖質がある状態だと
インスリンによる
中性脂肪分解抑制作用が働くので
ケトン体の原料となる脂肪酸が放出されず
ケトン体は産生されません

つまり

*糖質を摂っていると糖質系が動いて
 脂質系は休眠しており

*糖質が枯渇すると
 脂質系が動き出して
 ケトン体が産生される

こうした 
補助的な2プラトンシステムにより
ヒトのエネルギー産生は
制御されています


さて 
ケトン体が増えることの危険性について 
話を戻しましょう

糖尿病のコントロールが悪いと
ケトン体により
血液が酸性(ケトアシドーシス)になり
危険です

書き手も研修医の頃に
夜間当直をしていたとき
糖尿病性ケトアシドーシスで
意識が混濁した患者さんが
救急車で運び込まれ

真夜中に初めて診る
ケトアシドーシスの患者さんを
脚を震わせながら必死に治療したことがあり

あの夜のことは 
今でも強く記憶に残っています、、、

ケトアシドーシスは 
内科の医者なら誰もが
一度や二度は 
肝を冷やした経験があると思います

糖尿病性ケトアシドーシスの危険性を喚起する図

そんなケトアシドーシスを
厳格なアトキンスダイエットを行った
糖尿病患者さんが起こされて
亡くなってしまった事例が数例報告されて

糖質ダイエットは
ケトアシドーシスになって危険だという意見が
世の中に出回りました

では
本当に糖質ダイエットでケトン体が増えてくると 
危険なのでしょうか?

話が長くなったので 次回に続きにします
高橋医院