二次性貧血
二次性貧血とは 他の病気が原因で生じている貧血のことです 体内で持続的に炎症が続くと 赤血球が十分に作れなくなるので 貧血が生じます 持続的炎症は 膠原病 感染症 悪性腫瘍などが原因で起こってきます また 腎臓の機能が低下すると 腎性貧血が生じますし 肝臓の機能が低下して 二次的に脾臓が大きくなってくると 赤血球が多く破壊されるようになって やはり貧血が引き起こされます このように貧血は さまざまな病気の症状のひとつとして 現れてきますから 鉄 ビタミンB12 葉酸の欠乏や 骨髄の機能異常といった 貧血の原因が認められない場合は 背後に貧血の原因となる病気が隠れていないか 検査する必要があります <慢性関節リウマチ・膠原病> 慢性関節リウマチでは 患者さんの6割以上に貧血症状が見られます 貧血の程度は軽度から中程度で 高度な貧血になることは稀です よく処方される痛み止め(消炎鎮痛剤)が 胃を荒らしやすく 副作用として胃潰瘍を起こすことがあり 出血による鉄欠乏性貧血へとつながる恐れがあります また 鉄の利用障害 赤血球が壊れやすくなる といった原因が複合して 貧血を引き起こすと考えられています 全身性エリテマトーデスなどの膠原病でも しばしば貧血の症状が見られ 原因としては 慢性関節リウマチと同様のことが考えられています 慢性関節リウマチでも膠原病でも まずはリウマチや膠原病に対する治療を行います もとの病気がよくなれば貧血も改善しますが 完全に正常化することは稀です <感染症> 結核 感染性心内膜炎などの感染症では うまく赤血球が作れずに 貧血を起こしてしまうことがあります 特に 高齢の患者さんでは注意が必要です リウマチ 膠原病 感染症のような 持続炎症の際に貧血が生じてくる機序には 炎症で産生される TNF-α IL-6 IFNなどのサイトカインが関与します これらが 腎臓 骨髄 肝臓など 赤血球の分化・合成に関わる諸臓器に作用して 造血機能を障害して 貧血が生じてきてしまいます 特に IL-6が肝臓に作用して作られるヘプシジンは マクロファージからの貯蔵鉄の放出を抑制し 腸管からの鉄吸収を抑制して 貧血の発症に深く関わっています <腎性貧血> 腎臓で作られる造血因子の エリスロポエチンが不足して起こる貧血です 腎臓で作られるエリスロポエチンというホルモンが 赤芽球前駆細胞に作用して 赤血球が成熟するラインが動き始めますが 慢性的な腎臓病などで 腎臓でのエリスロポエチン産生が上手くいかないと 骨髄での赤血球への分化が滞って 貧血が起こります 遺伝子工学的に作られた エリスロポエチン製剤の開発により 定期的なエリスロポエチン投与が可能となり 腎性貧血は治療ができるようになりました <肝臓病 消化器の病気による貧血> 胃・十二指腸潰瘍や消化器の悪性腫瘍からの出血も 貧血の原因として重要です 貧血の原因が出血による場合は 鉄欠乏性貧血と同様の治療法が考えられ 鉄剤を用いた治療が行われます また アルコール性肝硬変で葉酸が不足したり 他の肝臓病で骨髄の造血機能が障害されている場合もあり 脾臓が肥大して 赤血球が壊れやすくなっていることもあります 但しこれらの場合は 貧血の程度 症状はそれほどひどくはならないので 肝臓病の治療に専念し 貧血については経過をみることが多いです <悪性腫瘍による貧血> 胃や大腸の悪性腫瘍の患部からの慢性的な出血により 貧血が起こることがあり この場合は鉄欠乏性貧血の症状が現れます また 出血がなくても 悪性腫瘍が進行すると貧血が見られるようになることがあり この場合は 腫瘍が組織を破壊していくにつれ 鉄が利用しにくくなり 徐々に貧血が進行していくと考えられています 特に高齢者で原因不明の貧血が見られる場合には 悪性腫瘍の精密検査を行うことが重要です
高橋医院