巨赤芽球性貧血
今日は鉄欠乏性貧血と同様 日々の食生活の栄養不足で起こり得る 巨赤芽球性貧血 について解説します <巨赤芽球性貧血とは?> ビタミンB12 葉酸 の欠乏により 起こる貧血です 体内のビタミンB12や葉酸が 欠乏することによって 細胞分裂が正常に行われなくなり 骨髄中で赤血球が造られるプロセスで 赤芽球の段階で分化がとまってしまいます ビタミンB12と葉酸が DNA合成に必須で これらの不足が DNA合成を不可能にするからです 白血球や血小板も同様の状態となり 赤血球 白血球 血小板のすべてが減少する 汎血球減少症になります <原因> ビタミンB12 葉酸の 摂取不良や吸収障害により起こります @ビタミンB12 1日の必要量は2.5μgですが 体内には5~1mgが貯蔵されており さらに腸肝循環により 再利用されるものもあります しかし 何らかの理由により 吸収されていない場合は 徐々に貯金を使い続け 約5年後には使い果たして貧血の症状がでてきます 小腸や胃の摘出手術を受けた場合や 胃酸の分泌が減少している場合などでは ビタミンB12の吸収率が低下して 起こることもあります @ビタミンB12の吸収過程 摂取されたビタミンB12は 胃壁の細胞から分泌される内因子と結合した後 回腸から吸収され 主に肝臓で貯蔵されます 胃壁の細胞を攻撃する 自己抗体を持っているヒトでは 内因子が分泌されず ビタミンB12吸収障害が発生します この自己抗体の存在による ビタミンB12欠乏を原因とする巨赤芽球性貧血は 悪性貧血と呼ばれ 日本人の巨赤芽球性貧血の 61%を占めています 胃全摘は 巨赤芽球性貧血の発症原因の34%で その他のビタミンB12欠乏が2%を占めています また ベジタリアンは ビタミンB12の摂取が不十分で 発症することがあります @葉酸 葉酸は 動物性食品とともに植物性食品にも含まれており 特に新鮮な野菜や果物に 豊富に存在しています しかし アルコールの飲みすぎなどにより 小腸での吸収が障害されますし 葉酸を必要とする妊娠時に欠乏することが 多くなります 葉酸の貯蔵量は5~1mgありますが 1日の必要量が50~200μgと多いので ビタミンB12より早期に 貧血の症状が現れてきます 巨赤芽球性貧血の約2%は 葉酸欠乏を原因としています <症状> 一般的な貧血の症状として 動悸 息切れ 全身倦怠感 疲労感 顔面蒼白などがあり それに加えて *舌の表面が平滑になり 痛みや灼熱感を生じるハンター舌炎 *味覚低下や食欲不振といった消化器症状 が 他の貧血と比べて特徴的です ビタミンB12欠乏では 四肢のしびれや歩行障害をきたすケースもみられます 症状は徐々に進行していきます <検査> *赤血球だけでなく 白血球や血小板も減少する *鉄欠乏性貧血と正反対の 大球性高色素性貧血がみられる *間接ビリルビン LDHが高い *ヘモグロビン結合蛋白である ハプトグロビンの値が低い のが 巨赤芽球性貧血の特徴です <治療> ビタミンB12欠乏は ビタミンB12が注射か点滴で投与され 経口投与も有効です ただし根本的な治療とはならないため 定期的なビタミンB12の補充が必要です 葉酸欠乏では 葉酸の経口投与による補充療法が基本になります 葉酸を多量に含む ほうれん草やレバーなどの食品の摂取も指導されます
高橋医院