ザ・トゥルース
NHK特番の 「ザ・トゥルース(真実)世界を変えた金融工学」 の続きです ソープが生み出した 金融工学 は 数学者ブラックと経済学者ショールズによって 大きく成長します 彼等は 金融派生商品の適正価格を的確にはじき出せる ブラック・ショールズ方程式 を 作り上げました これは ソープ理論を学問的により洗練させた 非常にシンプルな数式で 条件を変えることで 色々な金融商品の価格が計算でき これまでランダムとされていた 市場の動きのかなりの部分を この方程式で説明することができ 株式市場に革命をもたらすことになりました この方程式を用いて 次々と金融派生商品が生まれ 市場が拡大していきます 1994年には ショールズ自らが Long-Term Capital Management LTCM という投資会社を立ち上げ ブラック・ショールズ方程式を用いて 12兆円を運用 年率40%の利益をあげ続け! なんと1997年には ノーベル経済学賞を受賞したのです えーっ ノーベル経済まで しかもそんな短期間で 獲っちゃったの? 知りませんでした、、、 ちなみに それから20年後の今年 ノーベル経済学賞は 行動経済学の魁 リチャード・テイラーさんに贈られました 20年前にノーベル財団が 先見の明を示して ショールズさんでなく テイラーさんに賞を授与していたら 世界の経済の模様は 変わっていたかもしれませんね?(笑) さて ブラック・ショールズ方程式は ザ・トゥルース 真実という名の数式 と呼ばれました 予測不可能な市場の動きも 解析・数式化して的中させるための試み 全てを統一できると 科学者たちが信じた数式でしたが その一面で 富を得るための数式 錬金術 とも揶揄されました しかし 栄華が長続きしないのは世の常で 新たな市場開拓のために ロシアなどの新興国の国債を ターゲットにしたLTMCは 1998年のロシアの デフォルト・債務不履行により破綻して 損失は46億ドルにも上りました ブラック・ショールズ方程式では 0.0003% 100万年に3回の確率でしか起きない事象と 計算していた ロシアのデフォルトが 現実に起こってしまったのです 世のエコノミストたちは ショールズらが数式に頼りすぎていた 目の前の現実より数式を信じていた 数式は 平常時の状況は予測できるが 金融危機は予測できず対応できない 破綻はごくレアな現象ではあるが 数式が成り立つ前提条件が破綻すると うまくいかなくなる これが 金融工学の限界である などと論評しました 一敗地に塗れた 金融工学 しかし たくましく復活してきます マネーゲームの魅力は強力で 一度よい目を味わうと 失敗してもあきらめきれず より効率的なトゥルースを求めるため 金融会社は 多くの科学者を雇い たくさんの新たな金融派生商品を作り出します ちょうどその頃のウォール街には アポロ計画の終焉により職を失った 科学者・ロケット工学者が参入し始め 彼等は トゥルースの在り処を 月でなく金融の世界に求めたのです 当時 ロケット物理学から 金融工学の世界に転入した物理学者は 金融業界での仕事は 物理学のそれとほとんど変わりなく エキサイティングで 物理学の法則が 金融工学の世界にもあると信じていた そうです マーケットに進出してきた科学者たちは 自分たちの理 論の正しさを証明したい 金融市場で利益をあげたい 金儲けがしたい という 数学としての純粋な面 儲けたいという貪欲な面 の2面性を持ち 金融商品をヒットさせて 巨額のボーナスを得るという いかにもアメリカ的な価値観に基づく サクセスストーリー を描いていきました そして 新たな局面を迎えた金融工学の大躍進により 為替 原油 住宅ローン 天候 などが 投資の対象となり 市場はカジノのようになり 規模は500兆ドルに膨れ上がりました 金融派生商品(デリバティブ)は 世界のGDPの7倍以上のマネーで 運用されるという 実態をともなわない まさにバブルで異様な世界 となっていったのです でも 世の人々はその時点で BRCISなど新興国の好景気も合わせた 右肩上がりに浮かれてしまい そうした浮かれた状況の背景に潜む異様さに 哀しいことに 気がついていなかった もちろん 少し火遊びをしていた書き手も ことの重大性や異様さに 全く気がついていませんでした(苦笑) そして あの 2008年を迎えるわけです
高橋医院