前回ご説明したように
不眠症の治療は 薬物治療の前に

不眠を慢性化させている
生活習慣や睡眠習慣の改善を
行うべきで

患者さんご本人にとって 
眠りやすい時間帯に 
年相応の睡眠を確保する

ことを目標とします


そうした背景のもと 厚労省は

睡眠障害対処・12の指針

を出していますので ご紹介します

睡眠障害対処・12の指針

1. 睡眠時間に拘らない 
  日中に眠くならなければ大丈夫

前回ご説明したように 
8時間睡眠信仰にとりつかれたり
眠れないという不安や恐怖があると
脳の覚醒レベルが上がって
さらに眠れなくなるという悪循環に陥ります

過度に心配せずに 
ドンとかまえることが大切です

8時間睡眠信仰にとりつかれている人


2. 寝る前には 刺激物を避け 
  自分なりの方法でリラックスする

寝る前のリラックスした環境作りは
快適で速やかな入眠を得るために大切です

具体的な注意としては

*パソコンやスマホは 
 寝る2時間前までに終わらせる

器機が発するブルーライトによって
メラトニンが減少して覚醒してしまいます

寝る前にパソコンを見ている人

*寝る1時間前くらいに 
 ぬるめの風呂に15~20分入って体を暖める

入眠には深部体温の低下が必要ですが 
低下には時間がかかるので
寝る直前の入浴は 
体温が上がり逆効果です

寝る1時間前くらいに風呂に入ると良いことを示すグラフ

*ニコチン カフェインには 
 強い覚醒作用があるので
 就寝3~4時間前の
 喫煙やカフェイン摂取は避けましょう


3. 就寝時間にかかわらず 
  眠たくなってから床につく

眠たくないのに 
早く寝ようとして床についても

午後5時~10時は覚醒しやすい
「睡眠禁止ゾーン」なので
起きたまま床の上で過ごすことになります

そうすると 
眠れないという不安感が増すだけで良くありません

睡眠禁止ゾーンで寝ることの危険性を訴える図

夕食後すぐに床に就かず 
家族との団らんや趣味の時間を過ごすなどして

本当に眠くなってから床につき
すぐに入眠できるように心掛けてください


4. 毎日 同じ時間に起きる

普段の寝不足を解消する目的での 
休日の朝寝坊はよくありません

体内時計が乱れて 
夜型になってしまうリスクもあります

休日に平日より3時間以上遅く起きている人は 
かえって不眠になりやすい
というデータもありますから

平日と休日の睡眠時間の差は 
2時間以内にするのが望ましい

平日と休日の睡眠時間の差を示すグラフ

どうしても休日に長く寝て 
睡眠時間を稼ぎたいなら
前日に寝る時間を1~2時間早めた方が良いです


5. 朝起きたら光を浴びる 夜の照明は控えめに

体内時計のリズムを維持するために
朝起きたら太陽の光を浴びて 
睡眠ホルモン・メラトニンの分泌を抑え
体全体を目覚めさせるようにしましょう

メラトニン分泌の日内変動を示すグラフ

逆に 夜に明るいと 
せっかく増えてきたメラトニン分泌が減って
眠気がそがれてしまいます

特に寝室では 
明るい照明は避けるようにしましょう

寝室での明るい照明の使用を避けるように勧めるポスター

続く


高橋医院