生活習慣病がCKDの重要な原因であることを
説明しましたが

生活習慣病がCKDの重要な原因であることを示す図

腎臓そのものの病気も 
CKDの原因になります

その代表例が 
慢性糸球体腎炎です

CKDの原因疾患としては
糖尿病性腎症についで2番目に多く 
18.8%を占めます

<慢性糸球体腎炎とは?>

糸球体に慢性的な炎症を起こす病気の総称で
下記のいくつかの病気が含まれます

慢性糸球体腎炎についてまとめた図

@IgA腎症

日本人にとても多く 
慢性糸球体腎炎の原因でいちばん多い病気です

@膜性腎症

尿に大量のタンパクが漏れて 
ネフローゼ症候群になります

@膜性増殖性糸球体腎炎

稀ですが 比較的若い人に多く
蛋白尿 血尿の両方を呈するのが特徴で
腎不全に進行しやすい

@巣状分節性糸球体硬化症

稀ですが 小児に比較的多く
ネフローゼの原因として多い病気で
腎不全に進行しやすい

代表的な IgA腎症 膜性腎症 について説明します

<IgA腎症>

IgA腎症についてまとめた図日本人でとても多く 
 慢性糸球体腎炎の原因の約40~50%を占めます

*年間受診患者数は24000人
*男性が68~85% 女性は15~35%と 
 男性に多く認められます

@若年成人に多く発症します

*5~10歳の子供 20代が発症のピークで 
 約80%を占めます
*50代での発症もあります

@高血圧 脂質異常症の合併も 
 多く見られます

@どうして起こる?

*免疫機能を司るIgAタイプの抗体 
 それが認識する抗原 
 補体成分のC3
 の3つの物質が免疫複合体を形成して 
 それが糸球体に沈着するために起こります

*糸球体の毛細血管と
 腎臓に入ってくる毛細血管をつなぐ
 メサンギウム領域に
 免疫複合体が沈着して悪さをします

IgA腎症の顕微鏡写真自覚症状がほとんどない

*70%は 無自覚 無症状で 
 健診の尿検査などで 偶然見つかります

*30%は 
 風邪などの扁桃腺炎のあとの血尿で見つかる

自覚症状がほとんどないことを示す図

@予後

*10年後に15~20% 
 20年後には約40%が
 末期腎不全に進行します

*診断されたときに
 蛋白尿の量が多い(1g/日以上) 
 クレアチニンが高い 
 血圧が高いと
 予後不良です

@治療

*副腎皮質ステロイド薬が中心になります
 経口薬 または 点滴によるパルス治療が行われます

*抗血小板薬・抗凝固薬も用いられ
 蛋白尿減少に有効です

*降圧薬(主にレニンアンギオテンシン系阻害薬)
 も用いられます

*免疫抑制薬も使われます

*過労や感染症を避けることも大切です

*治療は 
 GFRが低下する前の早期からの開始が重要です

扁桃炎の関与

*扁桃の炎症時にIgA抗体が産生されることから
 扁桃腺炎が原因の可能性があると
 考えられています

*特に若年者では 
 扁桃腺炎のあとに発症することが多く
 扁桃腺炎のあとに血尿が出たら要注意です

*扁桃腺炎を頻回に繰り返す場合は
 扁桃摘出術と 
 その後のステロイド療法で改善することもありますが
 完全な治癒には至らず 
 再発が多いのも事実です

扁桃摘出術の効果を示すグラフ

@腸管粘膜が絡むアレルギーも関与する?

*腸管では大量のIgA抗体が産生されるため 
 関与が推察され
 現在 盛んに研究が行われています

<膜性腎症>

中年以降では 
慢性糸球体腎炎の原因として 
膜性腎症が増えてきます

@どういう病気?

糸球体の血管壁に
沈着物(免疫複合体)が沈着してしまうため
尿にタンパクがもれてしまう病気です

男性にやや多く 
40~70歳に好発します

@自覚症状がないことが多い
検診で蛋白尿陽性を認め 
初めて診断されることもあります

膜性腎症の糸球体の病変を解説する図ネフローゼ症候群になりやすい

*ネフローゼ症候群は
 尿中に多量のタンパクが漏れ出す病態で
 1日に3.5g以上(健康人は150mg)漏れます

*蛋白尿 血中アルブミン低下 
 むくみ・体重増加 
 高コレステロール血症
 などを認めます

ネフローゼ症候群の症状をまとめた図

*膜性腎症は 
 成人のネフローゼ症候群の原因の
 30~80%を占めます

@悪性腫瘍の合併に注意

*悪性腫瘍が原因となる場合があります

*欧米ではそうした報告が多いのですが 
 日本では比較的低いとされています

@予後寛解と増悪を自然に繰り返したりする経過が多く
 自然に寛解することもあります

*ネフローゼ症候群になると 
 20年間で40%が腎不全に至ります

*男性 
 60歳以上での初発 
 クレアチニン値の増加
 は 予後不良のサインです

@治療

*副腎皮質ステロイド薬と
 免疫抑制薬 
 シクロスポリン シクロフォスファミド
 の併用が主です

*抗凝固薬・ワルファリン

*脂質異常症には スタチン

*高血圧には
 レニンアンギオテンシン系阻害薬が投与され 
 蛋白尿が減少します






 

高橋医院