肥満症とメタボ
最近は メタボリックシンドロームという名前を 色々な場面で見聞きするでしょうし 「メタボ健診」を受診された方も多いと思います でも メタボと肥満はどのように関係しているか? こんがらがっておられる方も少なくないと思います また メタボ健診で行われるウエスト周囲長の測定が 病気としての肥満症の定義に入っているので 余計に肥満とメタボの関係が気になる という方も多いと思います 今日は そのあたりをすっきりさせましょう <メタボリックシンドロームとは?> メタボリックシンドロームは 心血管疾患を起こさせないようにするための 予防的な概念 病態です その診断基準は 1.内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲長で評価)がある =ウエスト周囲長が 男性>85cm 女性>90cm 2.それに加えて 高血圧症 脂質異常症 高血糖 のふたつ以上の病気がある *脂質異常症 : 中性脂肪>150mg/dl かつ/または HDL<40mg/dl *高血圧 : 収縮期>130mmHg かつ/または 拡張期>85mmHg *高血糖 : 空腹時血糖>110mg/dl となっています メタボリックシンドロームの人は 心血管疾患発症の高リスク群で メタボでない人と比べて 発症リスクが2倍 死亡率は1.5倍 に増加することが明らかにされています また 上記の脂質異常症などの 危険因子の数が増えるほど 心血管疾患発症の発症リスクは 飛躍的に増加します では なぜ内臓脂肪蓄積が メタボ診断の必須項目なのでしょう? それは 内臓脂肪蓄積にともなう アデイポカイン産生調節異常が 高血圧症 脂質異常症 高血糖などの 病態の原因と考えられているからです 内臓脂肪が蓄積すると 以前にご紹介した 悪玉アデイポカインを産生するようになり それにより インスリン抵抗性 高血糖 脂質代謝異常 高血圧などを招き ひいては 心血管疾患の発症リスクを増やすことに つながります 内臓脂肪の特徴としては *皮下脂肪に比べて 脂肪の合成 分解活性が高い *分解で生じた遊離脂肪酸が 門脈を介して直接肝臓に入り これにより 糖代謝異常 脂質代謝異常が生じ 脂肪合成促進 インスリン抵抗性が惹起される *減量により 皮下脂肪より減少しやすい といったことがあります さて メタボリックシンドロームの人は 男性では30歳代 女性では40歳代 から増加し始め 40~75歳全体では 男性は2人に1人 女性では5人に1人 が該当します ですから できるだけ早い年代からの 生活習慣介入による予防が重要で 病気の発症後も 重症化 合併症の進行を防ぐよう 取り組むことが大切です 内臓脂肪量を減少させれば 効率的にメタボリックシンドロームの病態を 一挙に改善することができるので メタボの早期発見と治療はとても重要です <なぜ ウエスト周囲長を測るのか?> メタボリックシンドロームになりやすいのは 臍レベルでの内臓脂肪面積(VFA)が100cm2以上 と考えられています 高血圧 脂質異常 高血糖の 平均合併数1個以上の人のVFAは 性別 年齢を問わず100cm2以上だからです VFAはSFA(皮下脂肪面積)よりも メタボの優れた指標で メタボの危険因子の数は VFAの増加とともに増加しますが SFAとは関連ありません ちなみに 男性はVFA 女性はSFA が有意に大きい傾向があります またVFAは減量により減りやすく 5%の減量で SFAは5%しか減りませんが VFAは20%も減少します さて 内臓脂肪面積(VFA)は 腹部CT検査で正確に測定できますが メタボ健診で全ての方に 腹部CTを受けていただくわけにはいきません そこで その代わりに ウエスト周囲長を測定するのです VFAは ウエスト周囲長と最も相関が高く VFA100cm2の方のウエスト周囲長は 男性で85cm 女性で90cm であることが明らかにされています ですから ウエスト周囲長が 男性で85cm 女性で90cm を超えている人は 内臓脂肪面積が100cm2以上ある メタボになりやすい人と見做されるわけです <メタボリックシンドローム=肥満症 なのか?> 肥満症は 肥満にともない高血圧 脂質異常 高血糖 などの病気を発症する病態ですから そうした病気の発症に関わる 内臓脂肪量 ウエスト周囲長が 診断に用いられるわけです つまり 肥満症の方は ほぼ100%がメタボリックシンドロームと言えます しかし 逆は真ならずで メタボリックシンドロームの人でも 肥満ではない人がいます というのも 肥満症の定義であるBMI>25を満たしていなくても 内臓脂肪が蓄積している場合があり そうした人は 肥満症ではないけれどメタボリックシンドローム と診断されるのです 特に 日本人は太っていなくても内臓脂肪量が多く 高血圧や糖尿病になる人が多いので 肥満でなくても メタボリックシンドロームになり得るという点に 注意しなければなりません
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