非日常のお正月に使われるのが 漆の器

残念ながら我が家では 忙しい日常の食生活で
漆器を使う余裕はありません

でも お正月のお雑煮は
こちらでいただかないとね!

漆の食器の写真

録画してあったNHKの美の壺の
「華やかな漆芸」と題した 
漆器の特集を お正月休みに見ました

NHKの番組の宣伝

そもそも漆とは
ウルシノキから採取した樹液を加工した
ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料で

熱 湿気 酸 アルカリに強く
腐敗防止 防虫の効果もあるため
木の食器や家具に塗ると より固く丈夫にします

そして 初めは褐色の膜は
月日が経つに従って透明度を増し

歳月を重ねるに連れ
神秘的な光沢で 格調高く深みがある
美しい色あいに転化します

黒く輝く漆の器

これが美しいのですよ!


ウルシは木を育てるのも実に手間がかかり
苗を植えてから樹液が取れるまでに
10~15年もかかるそうで

木1本から採取される量は
わずか約250g 茶わん1杯ほどしかなく

採れるのは1年だけで

ウルシを採ったあとの木は
切り倒されてしまうそうです

漆の樹液の採取の模様
儚いのですね

日本における漆の利用は 縄文時代から開始され

縄文時代は漆文化の最盛期で
高い技術とエネルギーを有しており
朱塗りも始まっていました

縄文時代の朱塗り漆の道具

しかし弥生時代になると
縄文の頃の漆器のエネルギーが途絶えてしまい

中世になって 漆芸が頂点に達し
漆器作りの裾野も最も広まり
国民の食器になりました

日本には 食器を手に持ち口をつけるという
独特の食事作法文化がありますが

食器を手に持って食事をする江戸時代の人の写真

漆器が神性 魂を有していたので
自然に手に持ち 
口をつけるようになったのではないかと
推測されているそうです

そして 蒔絵が発展し
黒色漆塗りの技術が頂点に達します


15世紀の南蛮貿易で 
ポルトガルやオランダに輸出された漆器が
ヨーロッパで愛され「Japan」と称されました

Japan 漆器 のポスター

漆器はJapan 陶器はChina
中学の英語の時間に習いましたね(笑)


漆器の色は 赤 と 

赤と黒の漆器の器


は 縄文人にとって
特別な意味を持っていたそうです

縄文時代の赤い土器

太陽の色 復活再生を暗示する
血の色 生命の色で
縄文時代の精神性を示す色だとか


一方 黒 は弥生時代から登場し
上述したように 
その美しさは中世に頂点に達します

何度も塗り重ねて作られた漆の黒は

何度も塗り重ねて作られた輝く黒の漆器の器

他を寄せ付けない黒
どこまでも深くつややかな黒
奥から滲み出るような底艶のある黒

などと評価され

人々は漆黒に 
神性 
果てしなき宇宙の無限性を見たそうです

確かに漆の黒には 
人を惹きつける魅力があると思います

漆職人さんは
ピカッじゃなく
 
とろ~っと艶 があるのが一番いい

と言われていましたが

そう  ですね!


その黒の魅力を
さらに引き立たせるのが 

蒔絵

蒔絵の様子

沈金

沈金の様子

といった技術を駆使して

艶やかな漆の黒に
金の模様を浮かび上がらせます

金の模様が施された美しい黒の漆器

かの谷崎
ろうそくのほのかな明かりの下で 
蒔絵本来の魅力を見出したそうです

谷崎の陰影礼賛の本

金蒔絵は明るいところで
その全体を見るものではなく
模様の大半を闇に隠してしまっているのが
言い知れぬを催すのである

さすがは谷崎です!


番組で紹介されていた
沈金家で人間国宝の前大峰さんが作られた 
ネコの柄の漆器

ネコの柄の漆器

素晴らしい!

本物のネコが浮かび上がってくるようです

沈金で描かれたネコの顔


さて 我が家のお正月では 
こんな漆器が活躍します

我が家のお正月用の漆器

大きな赤い器の中には
マトリョーシカのように
小さな杯が重なって入っています

マトリョーシカのように
重ねられた杯

大きさが異なるそれぞれの杯には
異なる数の桜の花びらが示されていて

取りだされた大小の杯

このサイコロを振って出た数により
どの大きさの杯でお酒が飲めるかが決まります

金と黒のサイコロ

ノンベな書き手は
一番大きな杯で飲めないかと
いつも期待しながらサイを振ります(苦笑)


日本独自の伝統がある漆器

もっと日常生活で使いたいものです
高橋医院