骨粗鬆症に罹りやすい
リスクについて説明します


@一般的な注意

骨粗鬆症は 
性別や年齢などの避けられないリスクだけでなく
日々の生活習慣の積み重ねも関係して
発症します

ですから
今の自分にあてはまるリスクに注意しながら
積極的に生活改善に取り組み
定期的に検診も受けることが大切です


@骨折の危険因子

  • 高齢
  • 女性
  • 身長・体重(BMIが低い)
  • 低骨密度
  • 既存骨折が有る
  • 両親のいずれかが大腿骨近位部骨折を経験している
  • 喫煙
  • 飲酒
  • ステロイド薬を使用している
  • 関節リウマチ
  • 運動不足 生活習慣病

これらのうち

*過度の飲酒(1日2単位以上)

*現在の喫煙 

*大腿骨近位部骨折の家族歴

3大リスクと言われています

骨粗鬆症の危険因子のまとめ

@女性の閉経

女性ホルモンのエストロゲン
骨にカルシウムを蓄える骨形成を促すとともに
骨からカルシウムが溶け出す骨吸収を
抑える働きがあります

エストロゲンの低下により骨粗鬆症が生じる機序の解説図
エストロゲンは
直接的に破骨細胞による骨吸収を抑制し
RANKLの発現を抑制し
破骨細胞の分化も抑制します

エストロゲンが破骨細胞に及ぼす影響の解説図

エストロゲンは
閉経によって分泌量が急激に減少するため
閉経後は骨粗鬆症になる危険性が高まりますから
要注意です

エストロゲン分泌の加齢による減少と骨量減少の関連を示したグラフ

なお 男性も
80歳をすぎると患者が増加します


@生活習慣病

糖尿病などの生活習慣病の影響で
骨質が悪くなった場合は
たとえ骨量に余裕があっても
骨粗鬆症につながります

糖尿病による骨粗鬆症の発症のメカニズムの解説図

@加齢

男性も女性も
骨は成長期に活発な代謝を繰り返して増加し
20歳前後で最大骨量に達します

40代半ばくらいまでは
一定の骨量を維持できますが
その後は加齢とともに徐々に減りはじめます

加齢による骨量の生理的変化を示したグラフ

加齢による骨量の減少は 
そのスピードを遅らせることは可能ですが
完全に食い止めることはできません


@遺伝

骨の強さは
遺伝的要素も影響するといわれており

近親者に骨粗鬆症
特に母親が大腿骨近位部骨折を経験した場合には
注意が必要です

ただ 家族間などで似ている生活習慣の影響を
遺伝と混同してしまうことがありますから
自分や家族の生活習慣も見直すことも大切です


@骨折経験

大腿骨近位部骨折がある60歳代の女性が
5年以内に再度骨折をする危険性は
骨折をしたことのない女性に比べ
16.9倍も高くなります

また 椎体の骨折を一度おこすと
1年以内に5人に1人が
再び骨折をおこすといわれていて

新規椎体骨折のリスクは約4倍 
大腿骨近位部骨折リスクは3~5倍に
それぞれ上昇します

骨折経験がある人が再び骨折する危険度を示したグラフ


この骨折経験は 
骨密度とは独立した危険因子です


@体型・骨密度

体重・BMI カルシウム摂取は 
骨密度と密接に関連します

もともと小柄な人は 骨が小さいため
カルシウムの蓄積量も少ない傾向があります

さらにやせていて筋肉の少ない人は 
骨を支える力が弱いため
骨が弱くなってしまいます

一般に 男性に比べて女性は
骨が細く筋肉も少ないことから
相対的にリスクが高い


思春期の女子はやせ願望を抱きやすくなりますが
無理な食事制限による極端なダイエットは
骨粗鬆症予防のためにも禁物です

骨量は 
小学校高学年から20歳頃までの成長期に
一気に増えます

この「骨の貯金」をする大切な時期に
極端なダイエットをすると
カルシウムやビタミンDといった
骨をつくるための栄養素が不足します

また 骨芽細胞を活性化させる
女性ホルモンも減少するなど
骨の形成に大きな悪影響を及ぼし 
将来 骨粗鬆症になるリスクを高めることになるのです

骨粗鬆症を招くさまざまな要因のまとめ

@喫煙

胃腸でのカルシウムの吸収を阻害し
エストロゲンの分泌も抑えるため
骨量不足を招きます

大腿骨近位部骨折のリスクを 
1.84倍高めます


@過度な飲酒

適度な飲酒は問題ありませんが
アルコールを過剰に摂取(1日2単位以上)すると
胃腸でカルシウムが吸収されにくくなります

さらに アルコールの利尿作用により
尿と一緒にカルシウムが
体外に排泄されてしまいます


1日3ドリンク以上の飲酒は 
大腿骨近位部骨折のリスクを1.68倍高め
リスクは アルコール摂取量に依存して上昇します


@その他の生活習慣

*偏った食生活

インスタント食品やジャンクフードといった
食塩やリンを多く含むものを過剰に食べていると
カルシウムなどの栄養素が不足するだけでなく 
吸収されにくくなってしまいます


*運動不足

運動不足の人は 
骨を鍛えるための負荷(圧力)をかける機会が少ないため
骨の強度が低くなります

さらに 筋力やバランス力も衰えてしまうので 
転倒・骨折の危険も高まります


@FRAX(fracture risk assessment tool;フラックス)

WHO(世界保健機関)が開発した 
自分自身で骨折発生のリスクを判定できる
評価法です

対象は40歳~90歳の人で
インターネットで公開されており

FRAXのホームページ

年齢 性別 体重 身長
骨折歴 
喫煙の有無 アルコール摂取など
12の質問に答えると
今後10年間の骨折発生の危険率が
自動的に算出されます

この危険率が15%以上の場合は
治療を開始した方が良いとされます
高橋医院