骨粗鬆症の治療1
骨粗鬆症の治療について説明します <全般的な指針> *初期の骨量減少なら 食事や運動などの生活習慣を改善することで 骨量が増えてきます *病気が進むと 薬物療法をはじめます *治療の目的は 骨折を予防し この先長く日常生活を快適に過ごすことが できるようにすることです <治療の対象者> *骨粗鬆症と診断され 脆弱性骨折を有している人 *過度の飲酒(1日2単位以上) 現在の喫煙 大腿骨近位部骨折の家族歴 の3大骨折リスクを有する人 です <薬物治療> @作用機序により 3つに分類されます *骨の吸収を抑える 骨吸収抑制薬 *骨の形成を助ける 骨形成促進約 *骨の栄養素である各種ビタミン(D K)剤 種類としては 骨吸収抑制薬が多いです @薬物の選択 病態の中心が 骨吸収促進か 形成低下か により 使用される薬剤が選択されます *閉経後早期の骨吸収亢進には 長期投与できるSERM *カルシウム不足による骨吸収亢進が関わる場合は 活性型ビタミンD *大腿骨近位部骨折リスクがある場合は ビスホスホネート が用いられます 血液や尿中の骨代謝マーカーも参考になり *低値の場合は 骨代謝回転促進作用を有する テリパラチド *高値の場合は ビスホスホネート SERM デノスマブなどの 吸収抑制薬 が使用されます @薬の併用 *骨吸収抑制薬と活性化ビタミンDの併用は効果あり *骨吸収抑制薬同士の併用は限定的 と報告されています @治療効果 治療開始3~6か月後の骨代謝マーカーで評価できます 骨吸収のあとに骨形成が起こるので *3か月では 骨吸収マーカー *6か月を超えると 骨形成マーカー が有用です <骨吸収抑制薬> この薬の作用で 骨吸収がゆるやかになると 骨形成が追いついて カルシウムが新しい骨が骨の吸収された部位に きちんと埋め込まれ 骨密度の高い骨が出来上がります @ビスホスホネート製剤 製剤としては 経口剤 注射剤があり 服用の仕方として 4週間に1回 1週間に1回 1日に1回 などがあります 破骨細胞に作用し 過剰な骨吸収を抑えることで 骨密度を増やす作用があります ビスホスホネートを取り込んだ破骨細胞は アポトーシスに至り 骨吸収が抑制され その結果骨密度が上昇し 骨折の予防につながるのです *側鎖に窒素を含まない 第一世代のエチドロン酸(ダイドロネル) *側鎖に窒素を含むが環状構造を有さない 第二世代のアレンドロン酸(ボナロン フォサマック) イバンドロン酸(ボンビバ) *側鎖に窒素を含み環状構造を有する 第三世代のリセドロン酸(アクトネル ベネット) ミノドロン酸(ボノテオ リカルボン) があり 第二 第三世代は 第一世代と異なる機序で骨吸収を抑制するため 1000倍から10000倍も効果が高いといわれています 日本では *骨粗鬆症と指摘された場合 *脆弱性骨折を起こした場合 *他疾患でステロイド全身投与を導入され 骨粗鬆症予防が必要とされた場合 に投与され ガイドラインでは アレンドロン酸とリセドロン酸を 第一選択として推奨しています 但し 腎機能が低下していると 使用できません 椎体および大腿骨近位部の骨密度を上昇させ 骨密度は投与開始から5%程度の改善があり その後はプラトーとなります 骨折の一次予防は あまり効果なく 骨折の二次予防は 椎体骨折 非椎体骨折 大腿骨近位部骨折の いずれも減らすことができ効果が期待できます 投与開始し6〜12ヶ月で 椎体骨折の予防効果が出現し 12〜18ヶ月以降になって 大腿骨近位部骨折を含む非椎体骨折の予防効果が現れます 長期的な骨折予防効果が持続するかは不明です 効果を検証した研究のほとんどは カルシウム製剤と活性型ビタミンD3製剤を 併用しているため ビスホスホネートを投与開始する際は 活性型ビタミンD3製剤を併用し 必要があればカルシウム製剤も併用します アメリカでは ビスホスホネートによる大腿骨非定形骨折の リスク増加を受けて 5年以上使用する場合には 継続するべきか再検討するように 2010年に警告しています @SERM(selective estrogen receptor modulator) 塩酸ラロキシフェン バゼドキシフェン酢酸塩 (エビスタ ビビアント) エストロゲン受容体に作用する パーシャルアゴニストで
骨代謝では エストロゲン作用を増強するアゴニスト 骨以外には 作用を減弱するアンタゴニスト として作用するため エストロゲンのように 乳癌や子宮癌のリスクを増やしません 骨に対しては エストロゲンと似た作用で骨密度を増加させます 骨密度は投与開始から3%程度の改善があり その後はプラトーとなります ビスホスホネート系薬剤にはない 骨質改善効果があると報告されてますが 椎体骨折以外の骨折を減らしたという エビデンスはありません 浮腫をきたしやすいという欠点があり 下肢静脈血栓症のリスクを上げてしまうため 寝たきり患者などの臥床者には使用できません この薬は 第一選択にはなりませんが *ビスホスホネートが使用できない場合 *ビスホスホネートを5年ほど使用し中止した場合 *ビスホスホネートを使用しても 椎体骨折を繰り返している女性で 内服による血栓症のリスク増加を許容できるくらい ADLが良い場合 などに 使用が検討されます @カルシトニン製剤 骨吸収を抑制する注射薬ですが 単独では 骨密度改善効果は期待できません 強い鎮痛作用も認められ 骨粗鬆症に伴う背中や腰の痛みに対して用いられます @デノスマブ 抗RANKL抗体薬 (ブラリア) 破骨細胞の分化・成熟・活性化シグナルである RANKリガンドに作用して 破骨細胞の活動を抑制し 骨吸収を抑制します 生理活性物質の働きを抑制する モノクローナル抗体(新たな生物製剤)で 非常に高い骨密度改善効果があります 6ヵ月に1回の皮下注射のため 継続しやすいというメリットがあります 血中のカルシウムが低下しやすいので ビタミンD カルシウム マグネシウムの合剤(デノタス錠)の 併用が必要です
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