治療薬の紹介を続けます


<骨形成促進薬>

@活性型ビタミンD3製剤

カルシウム摂取量が少ない日本では 
重要な位置を占める薬物で
骨折抑制効果があります

エルデカルシトール 
(エディロール) 

アルファカルシドール 
(ワンアルファ アルファロール)

といった商品が有名です

カルシトリオール(ロカルトロール)
肝臓や腎臓における活性化の必要がなく
臓器障害があるときに使用されます

近年は
フォレカルシトール
ホーネル フルスタンなど)といった
強力な薬物も用いられています


作用機序としては
食事で摂取したカルシウムの
腸管からの吸収を増す働きがあり
骨形成と骨吸収のバランスも調整します

しかし 単独では
骨密度改善効果は期待できません

ビスホスホネートやSERMの
治療効果を示した臨床研究では
基本的にビタミンD3製剤が
併用されているデータが多いので

それらの薬を使用する際には
ビタミンD3製剤を併用することが多いです

抗RANKL抗体製剤を使用するときは
ビタミンD3製剤の併用が必須となります

カルシウム製剤と併用は
高カルシウム血症リスクがあるので注意が必要です

骨形成促進剤のまとめの図表

@ビタミンK2製剤 (メナテトレノン

骨密度を著しく増加させませんが
骨形成を促進し
骨折の予防効果が認められています

単独では 骨密度改善効果は期待できません


@副甲状腺ホルモン (テリパラチド

遺伝子組換えヒトPTH(1-34)ヒト副甲状腺ホルモンの
N末端1番から34番までのみを
遺伝子組換えにより製剤化したもので
唯一の骨新生促進効果を持つ薬剤です

骨芽細胞を活性化させ 骨強度を高めるので
骨密度が非常に低いなど
骨折リスクが高い患者さんに適した薬です 

副甲状腺ホルモン製剤の作用機序の解説図


商品名 フォルテオ・テリボン の
2剤が製品化されていて

*フォルテオは毎日1回の在宅自己注射(皮下注射)

*テリボンは週1回の医療機関での皮下注射

です

皮下注射であるため
患者さんが使用しにくいという短所がありますが
骨量増加作用は他の薬剤と比較して最も高い薬です


*ビスホスホネートやSERMなどによる治療を行っても
 骨折を生じた例

*高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例

*骨密度が著しい例

では テリパラチドの使用が推奨されています


今のところ
2年以上の長期投与の効果は証明されていません

嘔気などの消化器症状が出やすいとされています



<その他>

@カルシウム製剤

カルシウムは骨をつくる主要な成分 欠かせないミネラルで
食事の摂取と薬の摂取量をあわせて
1000mgが望ましいとされています

*リン酸水素カルシウム
*L-アスパラギン酸カルシウム(アスパラCA)

の2種類があり

リン酸水素カルシウムは散剤で
1日3g摂取すればカルシウムを699mg摂取できますが

L-アスパラギン酸カルシウムは錠剤で
1日1.2g摂取してもカルシウムは
134.4mgしか摂取ができません

サプリメントが多数市販されており
サプリメントやカルシウム製剤で
1日500mg以上を摂取しないのが目安で
食事と合わせても1日2000mgを超えないように摂取します

単独では 骨密度改善効果は期待できません

カルシウム薬の作用機序の解説図

@これらの薬以外にも

*イプリフラボン

*タンパク同化ホルモン製剤

などが処方される場合もあります



<薬物治療の問題点>

骨折リスクが増大した患者さんには
骨吸収抑制薬は骨折抑制効果を発揮できない

骨形成促進薬は 使用期限に制限がある

といった問題があります


また 骨強度の低下により
骨折リスクが増大している症例においては
せいぜい骨折リスクを30~50%ほど低下させるだけ
という限界もあります


一方で
大腿骨近位部骨折に対する薬物治療実施は
20%に満たないので
もっと積極的に行われるべきです




高橋医院