お芝居の興奮を引きずりながら
帰りの地下鉄のなかで
舞台のあとの 
もうひとつのお楽しみが始まります

それはプログラムで 
演出家さんや役者さんの声を聞くこと



プログラムを読みながら
舞台のシーンを思いだして

演出家や役者さんは 
こんなこと思いながら あの空間を作り出したのかと
色々と思いを巡らせます



演出家のブリーンさんは 
こんな風に語ります



私が罪と罰の台本を書いたのは
主人公のラスコリニコフと同じように
自分が普通の人間か 特別な人間なのか 
確かめたかったから

神の存在を否定する世界になり
人々が自分こそが
真実に到達できる魂の持ち主だと思いこむ

そんな病気が蔓延していて
ソーシャルメディアへの
過度な執着へとつながっている

この芝居で訴えたかったことは

神と人間の本質
悪と赦しの可能性

残虐で容赦のない世界にも 
赦しと恵みがあり
贖罪がある

ラスコリニコフが
逃れることができないものは何か

自分のしたことが間違っていると
どうやって知るのだろう?

彼は 
彼が忌み嫌う「普通の大多数の他人」の
ひとりであるソーニャにより
自分の罪を認め 償いを始めることが
できるようになる

サルトルは「地獄とは他人のことだ」 
と語ったが

地獄とは自身への執着に他ならない

そして 
天国の可能性は
他人の中にしか存在しない


なるほどねえ

それで舞台の最後のシーンは
シベリアに流刑されたラスコリニコフに
ついてきたソーニャがパンを分け与える光景に
なったわけですね


天国の可能性は 他人の中にしか存在しない

という言葉は 印象に残りました


三浦さんは



ラスコリニコフが 
迷い もがく瞬間を 
丁寧に表現で来たらと思います

最後に訪れる「救い」という一筋の光が
嘘に見えないように 全力で演じ切りたい

と語っていますが

その言葉通り
丁寧に そして一生懸命に
演じきられていたと思います

初めて彼の演技を拝見しましたが
しっかりと印象に残りましたし
また観てみたいと思いました


大島さんは 自らが演じるソーニャについて



自分よりも周囲の人の痛みを感じ
苦しむことが彼女の日常で

だから自分の痛みにには 
むしろ鈍くなっているけれど

それが彼女の持つ
ある種の強さの源になっている気がする

と語ります

そこまで深い分析をされて 演じられていたのですね

その”強さ”まで表現できていたか?
うーん どうだったかなあ

でも 芝居やセリフに対する真摯さは
しっかりと伝わってきました

将来に期待したいと思いました



バイプレーヤーで印象に残った
山路和弘さん
フィリップさんの演出について



物事を観客に
わかりやすく提示しようとする意識が強い

日本の芝居は ともすれば
わかりにくさが“味”で 
受け止め方は観客次第
という傾向があるけれど

それとは異なるフィリップの明確さは
僕は好きです

と語っています

役者さんのこういう語りは 面白いですね!


ちなみに 山路さんがいみじくも指摘された
「受け止め方は観客次第」という
日本の芝居の面白い特徴は
能の伝統を引きずったものかなと思いました

書き手は 
どちらのスタイルも好きです(笑)


勝村政信さん

何か言えばすぐに炎上させられてしまう

ニュースを見ても物事の判断基準が
マルかバツしかないような

そんな今の日本で
こういう芝居を作ることに意義がある


良い作品は 
だいたい気持ちが悪く スカッとしない

気持ちの悪いものを観ていただいて
その気持ちのまま帰っていただき
色々な話をしていただければいいと思います

と語っています


座布団3枚かな?(笑)

演劇の本質は 彼が言うように
実は気持ちの悪さなのかもしれません?(笑)



三浦さん 大島さん 
勝村さん 麻美さん の対談では



勝村さんが再度

この芝居で一番感じるのは 許す こと

悪いとなったら 徹底的に排除して
何でも善悪 是非のどちらかで
強引に線を引こうとする

そんな二極化が進む世界や日本で
許すことを考えることは
人間が次のステップに進むために
とても重要なこと 

と語ります

彼の演技の洒脱さ 軽妙さは
こうした洞察に裏付けられているのですね

彼に対する見方が 少し変わりました


そして4人とも 
舞台 演劇の楽しさを語ります

生の人間同士が向き合い
場を共有して息遣いが感じられるライブ感

客席の空気も含めた
刻一刻と変わる張りつめた緊張感

舞台の役者と観客が
劇場全体として造り上げる空間

客席から来るものを受け止められるのが演劇


舞台の上の役者さんが
客席から感じるものって 
どういうものなのでしょう?

そのあたり とても興味があります


舞台稽古の厳しさ 大変さも
語られていましたが



演出家のフィリップさんとの共同作業は
とても楽しいものだったようで



彼は 
演じる役者が出すアイデアを
即興的に取り上げて
トライアンドエラーを繰り返しながら
芝居を作り上げていくタイプの
演出をするそうで



そういうのは 
きっと面白いし 楽しいのでしょうね

羨ましい感じがします



ということで 
舞台も そのあとのプログラムも
充分に楽しみ 味わうことができました


罪と罰

「赦し」がモチーフだったなんて
若い頃に読んだときには
考えもしませんでした

いい歳をして 勉強になりましたよ(苦笑)


そういえば
会場でこんな広告を見つけました



あの ジーザス?!

えっ チケットをとっちゃうかも?(笑)

高橋医院