高血圧のリスク評価と治療方針
高血圧を治療する目的は 高血圧の持続による 心血管病の発症・進展・再発を抑制し 死亡を減少させることです 収縮期血圧が10mmHg下がると *脳卒中リスクは40% *冠動脈疾患リスクは20% 下がると言われています また 糖尿病 肥満など 他の心血管病発症リスクが多いほど 高血圧治療で得られる効果は 大きいとされています つまり 高血圧の治療は 心血管病リスクコントロールの 基本中の基本となるのです <治療する際に評価するリスク> 高血圧の治療を考慮する際に まず患者さんが *どのようなリスク因子を有しているか? *どのような臓器障害 心血管病を有しているか? を評価します リスク因子 臓器障害は 下記のようなものがあります @リスク因子 *65歳以上 *喫煙 *脂質異常 *肥満 特に内臓脂肪型 *メタボ(Mets) *50歳未満発症の心血管病の家族歴 *別格な危険因子としての 糖尿病 CKD @臓器障害 心血管病 *脳 : 脳出血 脳梗塞 一過性脳虚血発作 *心臓 : 左室肥大 狭心症 心筋梗塞 心不全 *腎臓 : 蛋白尿 アルブミン尿 低いeGFR CKD 糖尿病性腎症など *血管 : 動脈硬化性プラーク 大血管疾患 末梢動脈疾患 *眼底 : 高血圧性網膜症 @高血圧リスクの層別化 上記のリスク因子 臓器障害の程度を総合的に評価して 患者さんの「高血圧リスク」を層別化します *リスク第1層 ・リスク因子なし *リスク第2層 ・糖尿病以外の1~2個のリスク因子 ・3項目を満たすメタボ のいずれかあり *リスク第3層 ・リスク因子3個以上 ・糖尿病 CKD 心血管病 4項目を満たすメタボ のいずれかあり <高血圧の総合的なリスク状態の層別化> *層別化した高血圧リスク *高血圧の重症度(血圧測定値によるⅠ~Ⅲ度分類) により 患者さんの高血圧の「総合的なリスク状態」を層別化し 治療方針を決める際の参考にします @低リスク *Ⅰ度高血圧で リスクなし @中リスク *Ⅰ度高血圧で リスク第2層 *Ⅱ度高血圧で リスクなし @高リスク *Ⅰ度高血圧で リスク第3層 *Ⅱ度高血圧で リスク第2 3層 *Ⅲ度高血圧 <総合的なリスク状態別の治療方針> @高リスク *直ちに薬物治療を開始する @中リスク *まず1ヶ月の生活習慣指導を行う *それでも140/90mmHg以上なら 薬物治療を開始する @低リスク *まず3ヶ月の生活習慣指導を行う *それでも140/90mmHg以上なら 薬物治療を開始する @降圧目標 降圧目標は 140/90mmHg です 但し 糖尿病 タンパク尿陽性CKDの患者さんは 130/80mmHg以上で治療対象となり 降圧目標は 130/80mmHg未満と より厳しく設定されます また最近は 血圧は下げれば下げるほどよい より低いレベルを目指すのが妥当 と考えられています というのも SPRINT試験という臨床研究で 降圧目標を *120mmHgとした群(厳格降圧群) *140mmHgとした群(通常降圧群) の効果を比較したところ 厳格降圧群の方が 一次アウトカム 全死亡 心不全において 優れた効果が得られたからです 正常域に入れるだけでなく そのなかでも より低い値を目標にした方が良いというわけです
高橋医院