危険因子の数により治療目標値が異なる
前回解説した動脈硬化の危険因子は その数が増えるほど 10年後に心筋梗塞 狭心症などで死亡する確率が 高くなります 危険因子の数が 1 2 3 4 5個と増えると 冠動脈疾患の発症リスクが 2 4 8 15 31倍になる と報告されているのです なかでも *糖尿病 *CKD *非心原性脳梗塞 *末梢動脈疾患・PAD は 高リスク因子とされ それらの疾患がある人は それだけで高リスク群と見做されます ですから 動脈硬化や脂質異常症などを管理する場合は こうした危険因子の状態を考慮してリスク分類を行い それに応じて治療を行うことが大切です <リスク分類> 実際に 年齢 性別 危険因子の数により 高リスク 中リスク 低リスク に分類されます @高リスク *男性 危険因子2個以上 60歳以上で1個 *女性 60歳以上で危険因子2個以上 @中リスク *男性 40~59歳で危険因子1個 60~74歳で危険因子0個 *女性 60~74歳で危険因子0~1個 @低リスク *男性 40~59歳で危険因子0個 *女性 40~59歳で危険因子0~1個 <脂質異常症のリスクに応じた治療> たとえば LDL-Cの管理は リスクを考慮して下記のように行われます @一次予防 冠動脈疾患の既往がない場合で まず生活習慣の改善を行い その結果により薬物療法の適応を考慮します 一次予防でのLDL-Cの管理目標値は *低リスクでは <160 mg/dL *中リスクでは <140 mg/dL *高リスクでは <120 mg/dL になります @二次予防 冠動脈疾患の既往がある場合で 生活習慣の是正とともに 早期からの薬物療法の適応を考慮します LDL-Cの管理目標値は <100 mg/dL と厳しくなります @より厳格な管理が必要な二次予防 家族性高コレステロール血症 急性冠症候群の患者さん 糖尿病 非心原性脳梗塞 PAD CKD メタボ 喫煙 などの危険因子が重複している方は より厳密な管理が必要になり LDL-Cの管理目標値は <70 mg/dL です <高血圧症のリスクに応じた治療> 血圧の管理に関しても同様で たとえば 降圧薬治療を開始する目安になる血圧は *危険因子がない人は 180/110mmHg以上 *糖尿病以外の危険因子が1~2個ある人は 160/100mmHg以上 *糖尿病 CKD 心臓病がある人は 130/80mmHg以上 となり 治療目標値は *危険因子がない人は 140/90mmHg未満 *糖尿病以外の危険因子が1~2個ある人は 140/90mmHg未満 *糖尿病 CKD 心臓病がある人は 130/80mmHg未満 となります このように 患者さんが有している危険因子の数により 脂質異常症や高血圧の管理目標値が 異なってくるのです 動脈硬化と生活習慣病が いかに密接な関係にあるか そして ひとつの病気を診るだけでなく 綜合的な視点から治療を行うことの大切さを ご理解いただけたでしょうか?
高橋医院