動脈硬化の危険因子には
下記のようなものがあります

@脂質異常症

動脈硬化の主たる原因となるのは
脂質異常症ですから

脂質異常の状態を適切に管理して
動脈硬化を予防していくことが大切です

各脂質異常の管理目標値は 以下の通りです

LDL-C 140mg/dL 
(120~139 mg/dLは境界域とされます)

HDL-C 40mg/dL

中性脂肪 150mg/dL


中性脂肪は 
心血管疾患リスクにダイレクトには関わりませんが

中性脂肪の増加には
レムナントリポタンパクの増加
small dense LDLの増加 低HDL-Cの合併
メタボの合併
などの別の重要なリスク因子をともないます

また 心血管疾患発症リスクは
LDL-Cと中性脂肪が両方とも高値の場合は
大幅に増加しますし

その場合
非空腹時TG値が高いほどリスクが増えます

ですから 中性脂肪にも 
充分に注意する必要があります

さまざまな動脈硬化の危険因子を示した図
@喫煙

喫煙は
HDL-Cの低下 LDL-Cの酸化変性促進に関与します

そして心血管疾患発症リスクは
1日の喫煙本数が
20本以下で2.15倍
20本以上で3.28倍増え
5本未満でもリスクが増加すると
報告されています

また 受動喫煙も
冠動脈疾患 脳卒中の危険因子になります

脳卒中 腹部大動脈瘤 末梢動脈疾患の
危険因子にもなり

心血管疾患発症だけでなく
糖尿病 脂質異常症 メタボの
発症リスクも上げます


@高血圧

120/80mmHgを超えると
心血管疾患 脳卒中 CKDの
罹患 死亡リスクが増えます

心血管疾患の罹患リスクは約2倍で
死亡例の約半数が高血圧です


@糖尿病

単独でも
冠動脈疾患の発症率が2.6倍になります

無痛性心筋梗塞が多く 予後が悪いのが特徴で
31~40歳の若年男性での発症への影響も大きい

脳梗塞も多く 再発率が高い

末梢動脈疾患のリスクも 3~4倍になります


また 女性の動脈硬化性疾患発症リスクが
男性より高いのも特徴です


@CKD

CKDは生活習慣病を背景に発症してくるので
血圧 脂質 糖代謝などの動脈硬化の危険因子の
併存頻度 程度が増しています

また リン カルシウム代謝異常なども
動脈硬化の危険因子になります


CKDが進行した病態では
LDL-C非依存性の動脈硬化状態となり
スタチンが効かなくなるので早期からの対策が必要です

CKDは
一次予防群であっても高リスク群と見做され
脂質異常症などの危険因子の厳格な管理が必要とされます

自分で避けられる危険因子と 自分では避けられない危険因子

@加齢 性差

加齢は
動脈硬化性疾患(冠動脈疾患 脳血管障害)の
最も強い危険因子で

男性45歳以上 女性55歳以上が 
危険因子とされます


女性の冠動脈疾患の発症 死亡リスクは
男性より低いものの 加齢とともに差は縮小します


@動脈硬化により冠動脈疾患になった家族がいる

親 子 兄弟姉妹にそうした方がいる場合は
リスクは2~3倍高くなります

男性55歳未満 女性65歳未満で冠動脈疾患になられた
早発性冠動脈疾患の家族歴がある場合は
より高リスクになります


@他の動脈硬化性疾患の既往

冠動脈疾患 非心原性脳梗塞(動脈硬化に由来する)
の既往があると
脳血管障害を高率に合併します


下肢末梢動脈疾患(PAD)
の既往がある場合も 要注意です

PADは
下肢動脈の粥状硬化による狭窄 閉塞病変に基づく疾患で
下肢の冷感 間欠性歩行 潰瘍 壊死を認め
冠動脈疾患 脳血管障害を高率に起こしやすいとされています


腹部大動脈瘤 腎動脈狭窄も
動脈硬化性疾患を高率に合併します


@高尿酸血症

高血圧発症の独立した予測因子で
脳卒中の初発 再発リスク 心不全の
予後予測因子となる可能性があります

高尿酸血症の治療により
血圧 脳卒中 冠動脈疾患の発症抑制効果がある可能性が
指摘されています


@閉塞性睡眠時無呼吸

閉塞性睡眠時無呼吸では

*血管内皮機能が低下している

*高感度CRPが増加している

*血管の内・中膜複合体厚肥厚の独立した危険因子である

といったことが認められ 動脈硬化を促進させます

また 糖尿病 高血圧の発症リスクでもあり
重症例では 心血管疾患の発症リスクが
有意に増加します

現代社会に潜むさまざまな危険因子を示した図

@肥満 メタボ

なかでも内臓脂肪型肥満は
高血圧 高脂血症 糖尿病を併発します


@生活習慣

*運動不足

*ストレス

などが 危険因子になります

危険因子の数が増えると心血管病による死亡リスクが増えることを示した図

このように
動脈硬化の危険因子は多岐にわたり
それぞれについて適切なコントロールをすることが
大切になります
高橋医院