最後に
動脈硬化予防のための脂質異常症に対する薬物療法
について説明します


<治療開始時期>

@一次予防の高リスク群で
 生活習慣の改善による効果が期待できないとき

@二次予防では
 発症後早期から積極的にLDL-C低下療法を行うことが
 勧められています

@合併する危険因子によりLDL-C累積が促進され
 より早期に心血管イベントが発症するので
 そのような場合では
 早期からLDL-C低下療法を開始します

@スタチン製剤によるLDL-C管理が基本になります


<治療薬の種類と適応>

@スタチン

@小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
 (エゼチミブ)

@フィブラート系薬剤
 (ベザフィブラート フェノフィブラート)

の各薬剤については 既に説明しましたので
そちらをご参照ください

ここでは それら以外の治療薬について説明します


@陰イオン交換樹脂(レジン)
 コレスチラミン コテスチミド

*LDL-Cが高い場合に用いられます

*副作用でスタチンが使えない場合 妊娠の場合に
 第1選択になり得ます

*腸管内で胆汁酸を吸着することにより
 胆汁酸の再吸収による腸肝循環を阻害して
 コレステロールから胆汁酸への異化を促進して
 体内のコレステロールプールを減少させ
 肝でのLDL受容体の合成亢進をもたらし
 それらの結果により
 血中LDL-Cを低下させます

胆汁酸代謝とコレステロール代謝の関連の解説図

陰イオン交換樹脂(レジン)の作用機序の図説

*HMG-CoA還元酵素の活性化による
 LDL-C生合成亢進を伴うことがあるので
 HMG-CoA還元酵素を抑制するスタチンとの併用が理想的です


@多価不飽和脂肪酸
 イコサペント酸エチル オメガ3c脂肪酸エチル
 EPA DHA

中性脂肪が高い場合に用いられます

多価不飽和脂肪酸の作用機序

*肝でのVLDL合成を抑制し中性脂肪を低下させ
 HDL-Cも増加させます

*抗血小板作用 抗炎症作用による動脈硬化予防も期待されます


@PCSK9阻害薬 ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体
 エボロクマブ アリロクマブ

家族性高コレステロール血症の患者さん
 高リスク群でスタチン効果が不充分な患者さん
 が適応です

*皮下注射薬です

*肝でのLDL受容体分解に関わるPCSK9の作用を阻害して
 LDL受容体のリサイクリングを増加させることで
 血中のLDL-Cの肝内への取込みを促進して
 LDL-Cを低下させます

PCSK9によるLDL受容体の分解の図示

PCSK9阻害薬の作用機序の図説

*スタチンはLDL受容体 PCSK9合成を増やすので
 スタチンとの併用が合理的です

*LDL-C低下作用は現存する薬剤のなかで最強で
 70~75%の低下作用を示します

*中性脂肪は20~25%低下
 HDL-Cは10~15%増加させます


<スタチンとの併用により動脈硬化性疾患予防を示す薬剤>

上記のように

*エゼチミブ

*PCSK9阻害薬

*EPA製剤 フィブラート系薬剤

が挙げられており
スタチン単独では充分な治療効果が得られない場合は
併用が推奨されます


<高LDL-C血症 高中性脂肪血症 どちらが先?>

LDL-C 中性脂肪がともに高値の場合は
先に高LDL-C血症の治療を行い
ついで高中性脂肪血症の治療を行います

高橋医院