ニーチェ ボードレール 
ゴッホ ルノワール ロマン・ロラン
三島由紀夫 石川啄木 永井荷風

これらの人たちの
共通項は何でしょう?

ある夜のNHKのらららクラシックは 
こんな問いかけで始まりました

地域も分野も作風も
ずいぶんと異なるメンバーだけど

ここに 
ルートヴィヒ2世が加わると 
わかりますね?(笑)

世界のワグネリアンを示した図


そう 彼等は ワグネリアン

熱狂的な
リヒャルト・ワーグナー
の信奉者です

ワーグナーの写真

ワグネリアンの熱狂の度合いは 
半端じゃない

彼の音楽 
オペラの世界にひたすら没頭して
他の音楽家をうけつけない

毎年 夏に延々と繰り広げられる
バイロイト音楽祭の
凄いお祭り騒ぎを見れば
それも納得できます

バイロイト音楽祭の風景1

だって 
世界で1番
チケットがとりにくい音楽祭と言われ
世界中から10万人もの
ワグネリアンが集まるとか

バイロイト音楽祭の風景2


ただ それだけに 逆に批判も多い

バイエルンの狂王
と呼ばれたルートヴィヒ2世に至っては
ワーグナーのパトロンとして
彼に贅沢三昧の暮らしをさせただけでなく

ルートヴィヒ2世の写真

ノイシュバンシュタイン城やリンダーホフ城など
ワーグナーのオペラの世界を模した
荘厳にして華麗な城を
国のお金のほとんどをつぎ込んで造り

ついには国家財政を破綻させ
王の座を追われ 謎の死を遂げました

語りあうルートヴィヒ2世とワーグナー

彼の生涯をモチーフにした映画では
側近たちが
ワーグナーとの縁を切るように
王に迫るシーンが
とてもシリアスに描かれていたものです

ルートヴィヒ2世に迫る側近たち

しかも ワーグナーは 
ルートヴィヒ2世の権力を私的に利用した
確信犯だったのですよ!



番組ゲストのワグネリアンの作曲家さんは
ワーグナーは
ベートーベンやモーツアルトといった
それまでの どちらかというと清廉で貧しい
という音楽家のイメージを変え

クラシック音楽 オペラは偉い
作曲家は神様で
大衆は自分の作品を有り難く聴け!

というイメージを作り上げた 
とんでもない奴だと
言われていました(笑)


ワーグナーの世界は
人が心の奥底に秘めた
本能や不満を投影できる
神話性と高貴さに満ち溢れたもの

そんなワーグナーのオペラは
19世紀末のパリで
世界に先駆けて
一大ブームを起こしたそうです

ワーグナーのオペラの様子

1845年に オペラ座で 
タンホイザーが上演されると
そのエロスに満ち満ちた愛憎の世界に
人々は熱狂したとか

ビゼーは 
ワーグナーの世界は
官能 愛 優しさに満ち溢れている 
と評し

ロランは
文学 哲学 絵画 全ての基準は
ワーグナーにある

とまで言い切ったそうです


カトリックの国 フランスで
その教義に反するような
本能と快楽を前面に押し出した
ワーグナーの作品が大好評だったことは 
とても興味深い現象だと
音楽評論家の方々は語ります

カトリックが大切にする
聖なるものは
実は人間の汚れた部分に
あるのではないか?

聖だけでなく 
俗も見ていかなければ 
真理にたどり着けないのでは?

彼の世界が
カトリックが隠し封印したい
人間の淫靡な部分を表現しているだけに

逆に人々は 
彼のオペラを見ている間だけは
その封印を解いて
ダークな気持ちを開放することができる

ワーグナーの世界は
カトリックの人々にそんな気持ちを起こさせ
従来の価値観を壊して
新たな美の世界を開いたと言います


実際に演奏している人たちは 
彼の音楽の魅力を

展開が 期待の裏切りの連続
飽きさせないメロデイーのつなぎに満ちている
終わりそうで終わらない 延々と続く世界
と語っていました

なるほど 演奏家は 
そんな風に感じるのですね


番組の最後の方で
ワグネリアンのプロファイルが披露されて

20~30歳代の男性で
経済的 社会的に比較的恵まれている
虚弱なインドア系の人

ということでした

これ ちょっと笑えます!

モーツアルトなどが
サビを高音域で奏であげるのと異なり

ワーグナーは 
中低音域で徹底して攻めまくり
鼓舞するような力強いリズムで
熱狂的な世界を作り上げていく

これは 現代のロックやポップスの
先駆けとも言える

なるほど~

だから
そこそこのインテリで 
生活には困っていないけれど
内気にこもってしまう若い男性が
のめり込んでいくわけですね(笑)

ちなみに 
ヒトラーもワーグナーが
大好きだったとか


番組では最後に

ワグネリアンになるなら
自己責任がとれる人が 覚悟を持って
ヒトさまに迷惑をかけないように
その世界に入ってください

と まとめていました

うまい!(笑)

熱狂的なワグネリアンの人々

書き手は 
ワーグナーは嫌いではない 
むしろ好きですが

でも「ワグネリアン」には
なれそうにありません(笑)
高橋医院