アルツハイマー病 うつ病と慢性炎症
慢性炎症と老化の関連について 紹介したので 老化が深く関わる 認知症 アルツハイマー病と 慢性炎症の関わりを解説します @認知症 認知症は 脳の機能が低下して 認識力 判断力 記憶力が低下する病気で 2012年には 450万人以上の患者さんが認められ 2025年の患者数の予測は700万人で 65歳以上の5人にひとりが認知症になると 推察さています 認知症の2割は 小さな脳梗塞 脳出血が原因の 脳血管型です @アルツハイマー病 アルツハイマー病は 認知症の6割を占める病気です 脳にアミロイドβが蓄積し アミロイド斑 老人斑が 形成され増加しています アミロイド斑の周囲の 神経細胞が死にはじめ 細胞数が減り 記憶力 判断力が低下していきます このアルツハイマー病の 脳内の病態形成に 慢性炎症が関与していると 考えられています アミロイドβは結晶を作り ミクログリア細胞に取り込まれ NLRP3を活性化し TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され 慢性炎症が起きるのです TNF-αにより 脳細胞がインスリン抵抗性になり 糖が栄養として利用できないので さらに機能が低下すると推察されています 脳内に慢性炎症があると 認知機能の低下が起こりやすい 炎症性サイトカインが低い患者では 認知機能の低下がほとんど見られない といったことが報告され 慢性炎症が治療の標的のひとつに なっています しかし 認知症がないまま亡くなった方の脳内にも アミロイド斑が存在しています ですから アミロイド斑が直接的に アルツハイマー病の発症に関与しているか不明で アミロイド以外の物質が 関与している可能性もあり 終末糖酸化物のAGEなどが ミクログリアを刺激しているとの推測もあります いずれにせよ 現在のアルツハイマー病の治療は アミロイド産生の抑制に注目されていますが 慢性炎症の病態への関与を考え 炎症を抑えた方がより有効な治療になる との考え方もあります 実際にアメリカでは 抗炎症薬を用いた臨床治験が行われていて プロスタグランジンを抑制するCOX-2阻害剤は 期待かずれのようですが TNF-α阻害剤は有望かもしれないと 報告されています @うつ病 うつ病の病態にも 慢性炎症が関与している可能性があります うつ病患者さんでは 血液中の炎症の程度を反映する 高感度CRP(hsCRP)が高いことが 報告されています また マウスでの実験ですが うつ病を引き起こす強いストレスを受けたマウスは 脳内でミクログリア細胞が活性化され 炎症性サイトカインが産生されていて それにより神経細胞が影響を受け うつ病様の行動をとるようになります しかし 慢性炎症を惹起するTLR2 TLR4などを 欠損したKOマウスでは こうしたことは起きません また IL-1 TNF-αの働きを阻害する抗体を投与しても うつ病は起きません こうしたことから うつ病の病態に 脳内炎症による神経細胞の機能変化が 関与している可能性が 推察されています うつ病の原因となるストレスが どのようにミクログリア細胞を活性化して 炎症性サイトカインを産生させるか? その機序の解明が期待されています
高橋医院