組織で慢性炎症が持続すると
組織内で線維化が進行して
臓器の機能不全が起こってきます

炎症と線維化の関係を示す図


<慢性炎症により生じる組織リモデリング・線維化>

慢性炎症が持続すると
どんな変化が
起こってくるのでしょう?

@慢性炎症が線維化を誘導し
 組織リモデリングを起こす

まず間質細胞という
組織の機能を担う実質細胞以外の細胞が
増えてきます

間質細胞の増殖を示す図

血管新生という
新しい血管が作られる病的な現象が起こり

線維芽細胞などが刺激され
細胞外マトリックスという
組織に蓄積して線維化させる物質の
過剰産生がおこります

細胞外マトリックスの過剰産生を示す図


慢性的な炎症で線維化が進行することを示す図
このようにして
組織リモデリング・間質の線維化
が生じますが

線維化が進行すると
組織の機能を担う実質細胞に
栄養が行きわたらなくなったり
実質細胞が線維組織に圧迫され
働けなくなり
臓器の機能低下が起こってきます

線維化の進行で臓器の機能低下が起こることを示す図

@脂肪組織の線維化

肥満や糖尿病で
脂肪組織に慢性炎症が起こると
内部で線維化が起こり

その程度は 
脂肪細胞径や脂肪組織の脂肪蓄積能と
逆相関を示します


脂肪細胞の線維化により異所性脂肪の蓄積が起こることを示す図
線維の蓄積による圧迫で
脂肪蓄積容量が低下して
制限されるようになりますから

中性脂肪は脂肪組織から飛び出し
肝臓や骨格筋などに
沈着することになり
異所性脂肪の蓄積が起こってきます

そして 
さまざまな組織では
沈着した異所性脂肪により
脂肪毒性が生じてきます

脂肪細胞そのものが
細胞外マトリックスを産生する可能性も
示唆されています

このようにして
脂肪組織の慢性炎症 線維化により
糖尿病の病態が形成されていきます



<慢性炎症による老化の促進>

慢性炎症は 老化現象にも関わっています

@加齢に伴う慢性炎症 Inflammaging

高齢者では
慢性炎症が起きやすいことが
明らかにされています

*血中炎症性サイトカインの増加

*組織での炎症シグナルの活性化

などが見られ
加齢関連疾患の発症・進展に関与しています

慢性炎症が少ない人は長寿傾向があることも
報告されています


@原因

老化にともない慢性炎症が生じる原因として

*免疫機能の老化により 
 炎症を収束できなくなる

*組織傷害により細胞外に放出される
 DAMPが蓄積しやすくなり
 慢性炎症が惹起される

といった機序が想定されています


@老化細胞そのものが 慢性炎症を引き起こす

老化細胞は
生理活性物質のSASP因子を分泌します

老化細胞がSASP因子を分泌し炎症反応を起こすことを示す図

SASPは

*炎症性メデイエーター

*蛋白分解酵素

などを含み
免疫細胞をリクルートして 
炎症反応を惹起します

SASP分泌は
不要な老化細胞を取り除き 
リモデリング 再生を促進する
生理的反応ですが

適切に処理されないと
病理的な慢性炎症をもたらします


SASP産生の機序として

*老化細胞では
 細胞質内の不要なDNAを除去する
 DNA分解酵素の量が減る

*処理されずに残ったDNA断片が
 DAMPとなり慢性炎症が起こる

*この結果SASPが産生されるようになる

が考えられています


実際に老化細胞の除去により
慢性炎症を抑制でき 
老化や病気を防げることが
明らかにされています


@慢性炎症によりサーチュイン遺伝子の働きが悪くなる

老化を制御する
サーチュイン遺伝子の働きは
慢性炎症により悪くなり

サーチュイン遺伝子の働きが悪くなると
慢性炎症が起きる 
という悪循環も生じています


慢性炎症とサーチュイン遺伝子の関係を示す図


 

高橋医院