慢性炎症とは
直接関係ありませんが

免疫応答のブレーキ反応の
話題になったので
獲得免疫反応の制御機構
についても説明します


抗原特異的な獲得免疫反応は

*制御性Tリンパ球 (T reg)

*抑制性補助刺激分子によるアナジー誘導

のふたつのメカニズムがあります


@制御性Tリンパ球

FoxP3という
マスター遺伝子により分化誘導される
Tリンパ球の1種で

制御性Tリンパ球について説明した図

IL-10 TGF-βなどの
免疫抑制性サイトカインを産生して
抗原特異的Tリンパ球の反応を
抑制します

制御性Tリンパ球の作用機序を説明した図

この細胞は
日本人の坂口志文先生が発見され
坂口先生は
ノーベル賞の有力候補のおひとりです


@抑制性補助刺激分子

Tリンパ球が
抗原特異的に活性化される際には

抗原を提示する
マクロファージ 樹状細胞などの
抗原提示細胞と
Tリンパ球の相互作用が起こり
Tリンパ球に
活性化シグナルが伝わります

このとき

*抗原提示細胞上の抗原を提示する
 組織適合性抗原(MHC)と
 Tリンパ球上のTリンパ球レセプター(TCR)の
 結合により伝わるによる第1シグナル

*抗原提示細胞上の補助刺激分子と
 Tリンパ球上の補助刺激分子受容体の
 結合による第2シグナル

のふたつが必要となります

第2シグナルがないとTリンパ球は活性化されないことを示す図
第1シグナルだけで
第2シグナルがないと
Tリンパ球は活性化されません

第2シグナルを起こす補助刺激分子には
Tリンパ球を
活性化するタイプと
抑制するタイプの 
2種類があります

活性化タイプは
抗原提示細胞のCD80 CD86
Tリンパ球のCD28
の組合せ

抑制するタイプは
Tリンパ球のCTLA-4 PD-1と
抗原提示細胞上の受容体

です

CTLA-4 PD-1について説明した図
CTLA-4は
免疫反応の後期に
Tリンパ球上に発現してきて
CD28よりはるかに強く
抗原提示細胞のCD80 86に結合し
活性化されたTリンパ球の免疫反応に
ブレーキをかけます

PD-1は
Tリンパ球をはじめとする
種々の免疫細胞に発現し
抗原提示細胞のPD-L1 PD-L2と結合すると
Tリンパ球に抑制のシグナルが入ります

昨年ノーベル賞をとられた
本庶先生のグループが
発見された分子です


このように
抑制性補助刺激分子のシグナルが入ると
Tリンパ球は 
アナジー・免疫学的不応答状態になり
反応しません

この抑制性補助刺激分子を介した
免疫抑制反応は
自己反応性Tリンパ球の抑制に
働いています

 

高橋医院