健康格差
以前 朝日新聞で掲載された 「生活習慣病は自己責任か」 という記事を紹介しましたが その記事を読んでいたら 「健康格差」 という言葉を新たに認識しました そういえば数年前に NHKスペシャルで 「私たちのこれから 健康格差」 という番組を放送していて ご覧になった方もおられると思います その内容が 講談社現代新書にまとめられて 2017年に発行されました 書き手は 番組は見れなかったのですが 本を読んだら 知らなかったことが多く とても面白かったので ご紹介しようと思います <健康格差の現実> 人の死亡率 寿命 罹患率は 年収 地域 雇用形態 家族構成 等により 差があって 低所得者の死亡率は 高所得者のおよそ3倍も高い こうした 寿命は社会が決めるという現実を 「健康格差」と呼びます 健康格差を解消できれば 社会保障費が10年間で5兆円 消費税2%分の税収に相当する額が 節約できるそうです 社会問題としての健康格差は 日本だけでなく世界的な問題で WHOから警鐘が鳴らされています <日本社会が抱える時限爆弾> 現在の日本の国民医療費は 40兆円を超えていて 年々増加する傾向にあり 国家予算の歳出の半分に迫る勢いです そのうちの半分は 65歳以上の人の医療費で 75歳以上の後期高齢者で 1/3を占めています 各世代に拡がる健康格差が こうした医療費の伸びに 大きく影響していることは明らかです 健康格差は 生涯を通じて時間をかけながら 徐々に蓄積されていくので 問題が顕在化してから 対策に取り込むのでは遅い まさに時限爆弾とも言える問題で 予防するために 早く対策を打たなければなりません <健康格差の原因は 社会の構造変化> 健康格差は さまざまな社会の構造変化により 生まれると考えられています たとえば 非正規雇用者数が増大して 約4割に達していますが 非正規雇用者は糖尿病が多く 合併症のリスクも高く 重症化することが 明らかにされています 収入格差の拡大や子供の貧困も 健康格差の原因となります 貧困家庭の子供は肥満が多く 学校が休みの間に肥満化することが 報告されていますし 低所得層の老人は 病院に行けないので 病気の発見が遅れて重症化しやすい 貧困な人 非正規雇用者 未婚者が増えて 健康格差はますます拡大し 医療費 生活保護費が さらに増大する傾向が顕著なのです 健康格差 個人の寿命を規定している 具体的な因子として *所得 *居住地 *雇用形態 *家族構成 の4つが挙げられています <自己責任か? 社会問題か?> 健康格差の問題で 注目されている論点のひとつが 「健康格差が生まれたのは 自己責任によるのか? 社会問題なのか?」 という点です 健康格差は 自己管理能力の低さにより生じるのではなく 上記の社会的な4要素により 気づかないうちに生まれてしまうと考えられ 自己責任だけでは解決できない問題と 見做されていますが 社会的には 自己責任と思われていることが多いのが 実情といえます そうした現状が 問題解決に影響を与えていますが この点については 稿を改めて紹介します
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