日本の各世代で
どのような健康格差があるのでしょう?


<年代ごとの健康格差>

@現役世代

30~40代の非正規雇用者
受診時に既に
網膜症などの合併症を有する
病状が進行した糖尿病が増えていて

彼等のゆとりのない生活が
原因のひとつと考えられています

非正規雇用者は
貧困にまつわるストレスを 
食欲で解消してしまい
乱れて不規則な食生活を送りがちです

所得が低いと
パン コメなどの
安い炭水化物ばかり食べてしまいます

肉 魚 野菜は値段が高く
さらに自炊しないといけないので
そう頻繁には食べられません


所得による肉 魚 野菜の摂取率の違いを示すグラフ

また
不規則な勤務形態で時間がないので
外食やコンビニ弁当 加工食品
安くてこってりした味付けで
すぐにお腹がいっぱいになる牛丼 ラーメン
などばかり食べ 
炭水化物の摂取量が増えるので
太って糖尿病になります

牛丼 ラーメンの写真

さらに
健康に関する
理解度・リテラシーや関心が低く
健診も受けず 医療機関を受診しません

非正規雇用者や低所得者の健診受診率は
低いのが現状です

所得による健診受診率の差異を示すグラフ
雇用形態による健診受診率の差異を示すグラフ

また 低所得だと 
自律神経失調症 うつ病も多く 精神疾患は3.4倍
肥満 脳卒中は1.5倍
も罹りやすいと報告されています

所得による精神疾患発症率の差異を示すグラフ

特に 
未婚の中高年男性は悲惨で
死亡率は既婚者の2倍になり
自殺率も2倍以上

コミュニティに属さず 
孤独な時間を過ごすことが多いのが
原因のひとつと考えられています

ちなみに 
女性は既婚者と差がありません

哀しいことに
男はやはりダメですね


@老人

一人暮らしの高齢者が増えていて
閉じこもりが多いのが問題です

健康に暮らせる「健康寿命」の期間が短いのですが
外出しないので 
身体機能 気力が低下して
寝たきりになりがちです

閉じこもり老人は健康寿命が短いことを示すグラフ

そして
低所得の方が 要介護認定の割合が2倍多い

認知症の急増も大きな問題ですが
周囲の人が
認知症の人も一緒に生活できる社会を
サポートしていけるような社会の在り方に
転換していく必要があります

社会参加と交流が 
高齢者の健康を維持するポイントなので
高齢者の社会とのつながりを増やさせることが
健康格差縮小の鍵と考えられています


@子供

子供の健康格差は 
家庭の所得状況に連鎖しています

びっくりしたのですが
日本の子供の貧困は 
先進国で最悪レベルだそうで
子供の6人に1人が貧困レベルにあるとのこと

貧困家庭の子供は
肥満率が高く 虫歯が多く 
運動習慣がない

収入と肥満率 虫歯の数の関連を示すグラフ

簡単に満腹感を得られて価格が安い
お菓子 インスタントラーメン カップ麺ばかり食べ
魚 大豆 野菜 果物は食べられない

そんな食生活なので太ってしまいます

そして 幼少時から高カロリーだと
大人になってから
肥満を契機に生活習慣病に
なりやすくなります


雇用形態・所得・住んでいる地域なども
健康格差を生じさせる大きな要因です

<雇用状態・所得の多寡による健康格差>

@非正規雇用者

上述したように 非正規雇用者
糖尿病になりやすく しかも悪化しやすく
糖尿病網膜症合併率は 
正社員の1.5倍も多いことが 明らかにされています


やはり前述したように 非正規雇用者は
食事が不規則で ストレスが多く
健診を受けられず 定期的な通院がしづらいことが
大きな原因と考えられています


@低所得者

一方 低所得者
精神疾患に3.4倍
肥満 脳卒中 骨粗鬆症に1.5倍
なりやすいと報告されています


所得が低いと
米 パンなどの炭水化物中心の食事になり
野菜 肉の摂取量が減り
カルシウムやビタミンがとれなくなります

所得による肉 野菜の摂取率の差異を示す表

1日の野菜摂取量は
年収200万未満だと 600万以上の人に比し
2割以上減るそうです

所得による野菜の摂取率の差異を示す表

このように 所得は
肥満率 健診受診率 野菜摂取量など
健康に関わるさまざまな点に
影響してきます

所得による肥満率 健診受診率 野菜摂取量などの差異を示すグラフ


こうした厳しい現実を
社会問題としてとらえるべきだ
との意見が多くあります

雇用状態や所得が厳しい人の
自炊をあきらめて睡眠を優先せざるを得ない環境
コンビニ弁当を食べざるを得ない生活
健康維持に時間が使えない環境

お金や時間がなくて
健診や受診が大切だとわかっていても
できない

そうした状況にいる人たちに
個人の健康意識の改善を訴えても
事態は変わりません

そして
このままだと社会保障費がどんどん膨れ上がり
やがて健康な人にも 影響が及んできてしまいます

一部の弱者だけの問題ではない
との警告が発せられています


<地域による健康格差>

@種々の健康関連項目の差異

住んでいる地域によって

*病気になったあとの予後の格差

*医療機関の充実度

*健康リテラシーの情報格差

などが異なる事実が明らかにされています


@がんの発症率

がんの発症率は地域により異なります

*食道がん

高い地域 秋田 東京 宮城 新潟

低い地域 滋賀 沖縄 鹿児島 三重

飲酒量と関連するとされています

地域による食道がんの発症率の差異を示す地図


*胃がん

高い地域 秋田 新潟 山形 石川 富山  日本海側

低い地域 沖縄 鹿児島 熊本 神奈川 千葉

地域による胃がんの発症率の差異を示す地図

差は3倍以上で
塩分の多い食事が要因のひとつと
考えられています

このように 
地域による食習慣の差
塩分 野菜 魚の消費量の差が
影響すると考えられますが

食生活 食文化は 
なかなか変えられないので

上述した事実 悪影響を
プロパガンダするだけでは不充分で
なんらかの工夫が求められています

高橋医院