タイムマシンが欲しい!
君 死にたまふことなかれ 舞台に立つ女優さんが 突然語り始めたのは 与謝野晶子の有名な詩 凛々しく そして情感たっぷりに 女優さんは延々と この長い詩を最後まで朗読されるのですよ インパクトのある幕開けです とある土曜日の午後 書き手が初めて降り立った駅 出たところでは カラフルで面白い人形が出迎えてくれました そして商店街の電柱には こんな旗が掲げられていて そう ここは 亀有 有名な漫画のキャラクターが あちこちに見受けられます どうして亀有に来たかというと このお芝居が かめありリリオホールという劇場であるから 松井須磨子 その名前を聞いたことはありますが どんな人だか さっぱりイメージできません でも 主演の女優さんなら知っています 栗原小巻さん 彼女の一人芝居が この劇場で行われました いつもロシア芸術関連の チケットをくださる方から このお芝居のチケットをいただいて 生まれて初めて ナマ栗原小巻さんを 拝見することになりました 栗原小巻さんは 昭和40年代に大活躍された女優さんで その人気は 同い年の吉永小百合さんと二人で 世の殿方を コマキスト サユリストに 二分されたほどだったそうです 書き手は 中学の頃に見た 戦争と平和という映画で 美しくて利発で勝気な中国人女性を 演じられていたのを覚えています とても魅力的でした コマキストにもサユリストにも 属しませんでしたが 当時の小巻さんのお写真を見ると 本当にきれいなのがわかります そして 単に美しいだけでなく 玄人受けする しっかりとした演技をなさる 正真正銘の女優さんだったそうです だから 遅ればせながら ナマで小巻さんを 見ておこうと思ったわけですよ 舞台は簡素な造りで 左手にピアノが1台置かれ 約1時間半 小巻さんがひとりで 語り 踊り 歌われます かなり前の方の席だったので オペラグラスも使わずに しっかりとお顔を拝見することができましたが さすがに若い頃に比べると歳をとられましたが 充分にお美しいです なんと 今年74歳になられたそうです! 74歳には見えません そして 声に張りがある 意外に低めのお声なので ちょっと驚きましたが(笑) 女優さんのしっかりとした演技を見ている という感じがします 小巻さんが演じるのは 日本初の新劇女優と言われた 松井須磨子 さん
彼女の生い立ち 女優になるきっかけ 女優として昇りつめていく過程 そのなかでの楽しい思い出と苦労 演出家の島村抱月さんとの不倫 女優として絶頂を迎えた矢先の 島村さんの突然の死と 彼に殉じて自ら命を絶ったときの心情 それらが全て 小巻さんによって 語り 演じられます かなり緊張感と迫力があり 想像していた以上に惹きこまれました ちょっと予想外でしたね 須磨子さんが イプセンの「人形の家」の主人公のノラを 演じられたときのエピソードが ふんだんに盛り込まれていましたが 書き手も中学時代に イプセンを結構一生懸命読んだので 懐かしい思いも感じながら 小巻さんの演技を見ていました 明治から大正にかけて それこそ 与謝野晶子さんが活躍されていた時代 日本の新劇の そして女優の先駆けとなった 松井須磨子さんの一生は まさに波乱万丈だったのですね 松井さんが芝居の中で歌われた歌は 何曲か大ヒットになったようで カチューシャ可愛や という 書き手にも聞き覚えがある曲などは 小巻さんが ピアノの伴奏で実際に歌われていましたが これがまた上手で 良く伸びるお声で 歌手顔負けでびっくりしました 74歳で 90分出っぱなしの 一人芝居 確かに舞台上の動きは少ないですが セリフの量だって膨大だし 見事にフラメンコのような踊りも 踊られていました いや~ 正直言って スゴイと思いましたよ 小巻さんも 大先輩の松井須磨子さんを演じられて 楽しかったのではないでしょうか ちなみに 演出をされていた加来英治さんは 実の弟さんなのですね ということで 初 ナマ 小巻さん かなり真剣に感動しました 遅ればせながら 今からコマキストになろうかなと 思いましたよ(笑) 彼女の若い頃に主演された映画を 見てみたいとも思いました 舞台では この前 映画で見た メアリー・スチュアートも 演じられていたようで それも見てみたかったです どこかに タイムマシン ないかな?(笑)
高橋医院