オタクな映画を上映する映画館は
たいてい狭いので
いつも意外に混んでいるのですよ(笑)

はい その日もほぼ満席状態でした

3月の春分の日に観に行ったのは

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」

ふたりの女王 メアリーとエリザベスのポスター

原題は Mary Queen of Scots
2018年のイギリス映画です

イングランド女王のエリザベス1世
スコットランド女王の
メアリー・スチュアート

エリザベスの方が9歳年上で
メアリーはエリザベスの従妹の子供になります

こういう関係を従姪と呼ぶそうですが
もちろん知りませんでした(笑)

メアリーとエリザベスの肖像画

このふたりの女王の関係は
これまでにさまざまな小説や戯曲の
テーマになっています

バージン・クイーンとして
生涯独身を貫き
大英帝国の基礎を築いたエリザベス1世

美貌と教養の持ち主で
生後6日でスコットランド王女となり
16歳でフランス王妃となり
18歳でスコットランドに帰国し
3度の結婚 1度の出産を経験したメアリー

対照的な人生経験のふたりは
イングランド国王の後継をめぐって
神経戦を繰り広げ

最終的にメアリーは
エリザベスの命により 45歳で斬首されます


下衆な書き手は
この手の話題は気になります

以前 清少納言と紫式部
才能あふれる女性ふたりのバトル(?)を
紹介をしましたが

どうも気が強い女性同士の葛藤には
興味があるのですよ(苦笑)


ましてや以前 WOWOWで
中谷美紀さんがメアリーを演じたお芝居をちょっと見て
さらに興味をかきたてられていました

中谷美紀さんがメアリーを演じたお芝居のポスター
中谷美紀さんがメアリーを演じたお芝居の様子

ということで
日比谷シャンテでは
エリザベスに絡んだこの2本の映画を上映していて
アカデミーに絡んだ右の方も面白そうでしたが

エリザベスに絡んだこの2本の映画のポスター

もちろん こちらを観たのですよ(笑)

ふたりの女王 メアリーとエリザベスのポスター


映画は
赤いペチコートを身に纏ったメアリーが
斬首されるシーンから始まります

メアリーの斬首シーン

うひゃー 重い幕開け
ひとりで観に来てよかったです(笑)

赤いペチコートを身に纏ったメアリー

メアリーは
本当に赤いペチコート姿で斬首されたそうで
うーん かなりインパクトがありますね


従来 メアリーについては

美貌と教養の持ち主だけれど
恋愛に関する情熱が強く
奔放な男性遍歴を度々繰り返し
それが故にスコットランド女王の座を追われ

イングランドに逃れて幽閉生活を送り
最後はエリザベスの暗殺計画に加担して処刑された

というコンセプトで語られてきました

メアリースチュアート

これは
イングランドと結婚し 生涯独身を貫いた
若さも美貌もメアリーに劣るエリザベスとの
コントラストを鮮明にさせるために
より強調されたものと言えるかもしれません

エリザベスはメアリーに嫉妬していた

メアリーとエリザベス

そういう筋書きの方が
世の下衆な男どもは喜びます(苦笑)


でも この映画では
描かれ方が異なっていました

そもそも原作が
エリザベスとメアリーの往復書簡を読み直したうえで
新たな解釈のもとに書かれた歴史書で

監督はロンドンの演劇界をリードする
若き女性演出家のジョージー・ルーク女史です

演出するジョージー・ルーク女史

ですから 自らのたぎる恋愛感情により
2番目の夫を謀殺し
その下手人と自ら進んで3度目の結婚をしたという
従来 伝えられてきたお話とは異なり

臣下の陰謀により無理やり結婚させられ
それが故にまんまと退位させられた
というストーリーが展開されます

映画のなかのメアリースチュアート

また メアリーの素直さ 寛大さが仇となり
謀反を許した臣下に何度も裏切られる様を描きます

女王を戴いていた男の臣下たちは
「女なんかに国を治めることはできない」
と思っていたのでしょうから


そして 内乱により退位させられ
スコットランドを追われた
ングランドに逃げたメアリーは
廃屋で初めてエリザベスと対面します

そこでは ふたりのプライドも激突しますが
陰謀がうず巻く男社会の中で
女王として生き抜いていかねばならなかったふたりの
シンパシーも語られるのです

もちろんこの会談は 空想上のものですが
ふたりの往復書簡を読み解くと
実際にそうしたやりとりがあっても
不思議ではないそうです

映画のなかのエリザベス女王

演出家のルークさんは

メアリーに関する誤解を
正したいという欲求があった

彼女は
男性の歴史家たちのバイアスのかかった記述により
指導者たるにはあまりに感情的で
有能たるには女でありすぎると
語られてきたが
それはフェイク・ニュースに過ぎない

歴史の資料を読み解くときは
その成立過程も注意深く見なければならない

と語っています

現代の女性の視点から
歴史資料の新たな解釈を行い
この映画の作製を試みたということでしょう


女性同士のエモーショナルなバトルに
興味がゆきがちな下衆な書き手にとっては
確かに勉強になりました(苦笑)


そういえば
プログラムに書かれていた年表を見て気が付きましたが

メアリーのフランス時代の旦那のフランソワ2世の妹が
「王妃マルゴ」のマルグリットだったのですね

フランスで
カトリックとプロテスタントの間で繰り広げられた
血で血を洗うユグノー戦争の真っただ中で
その生涯を翻弄されたマルゴを
イザベル・アジャーニ“さま”(笑)が演じたあの映画も
とても印象的でした

王妃マルゴを演じるイザベル・アジャーニ

ともに政治に翻弄されて
数奇な運命をたどる美貌のふたりが
フランスの宮廷で時を共有していたのかと思うと
なんとなく不思議な感じがします


ちなみに
エリザベスは織田信長の1歳年上
メアリーは徳川家康の1歳年上だそうです

なるほど~?(笑)
高橋医院