更年期障害と閉経後に増加する疾患
女性の病気のいちばん大きな特徴は 閉経後に さまざまな病気の発症が増えることです また 閉経前後に起こる更年期障害も 大きな問題になります <閉経前後に現れてくる症状> @40代後半から起こる症状としては 顔のほてり のぼせ 発汗異常 めまい といったものがあります @50代からは 倦怠感 不眠 不安 憂鬱 記銘力の低下などの精神神経症状 老人性膣炎 外陰掻痒症 尿失禁などの 泌尿生殖器の萎縮症状 が増えてきます <閉経後に発症が増加する疾患> 50代からは 脂質異常症 糖尿病 動脈硬化 高血圧 心血管系疾患などが増え 60代からは 骨粗鬆症も増えてきます こうした病気の発症には 閉経後に生じる エストロゲンの急速な分泌低下が関与します <更年期障害> @更年期障害とは? 閉経を挟んだ前後5年の約10年間に 心身に現れる様々な不調です 日本人女性の 平均的な閉経年齢は50歳前後なので 更年期の始まりは40代半ば頃で 症状も その出方も 個人差がありますが 更年期の女性の9割近くが なにかしらの不調を感じています こうした症状によって日常生活に支障をきたす場合を 更年期障害と呼びます 卵巣の機能は 30代後半から少しずつ低下を始め この時期に更年期に似た症状が現れることがあり 「プレ更年期」「プレメノポーズ」と呼ばれます @原因 *身体的因子 卵巣機能の低下によって エストロゲンの分泌が減り その作用の急速な低下が 更年期症状発症に関わります *社会的因子 この年代に増えてくる 家庭や職場での人間関係などが関わります *心理的因子 患者さんご自身の 成長歴や性格など こうした因子が複合的に影響しあって 更年期障害が発症すると考えられています @症状 代表的な症状は *血管拡張 放熱 のぼせ 異常発汗:寒いときでも大量の汗をかく ほてり (ホットフラッシュ) *その他の自律神経失調症状 肩こり 全身倦怠感 頭痛 めまい 動悸 胸がしめつけられる 冷え しびれ *その他の身体症状 腰痛 背中 関節の痛み 皮膚のかゆみ 乾燥感 湿疹 食欲不振 下痢 便秘 頻尿 排尿障害 *精神症状 不眠 イライラ 気分の落ち込み 意欲の低下 情緒不安定 などです 肩こり(約半数で自覚) 疲労感 頭痛 のぼせ 腰痛 発汗 の順で多いと報告されています @治療 まずは 生活習慣の改善を行います *食事療法 バランスの良い食事を摂る *運動療法 十分な睡眠とともに 適度な運動を行います それとともに 過度にがんばらない 仲間との会話を勧める といった指導も行います *ホルモン補充療法・HRT エストロゲンと黄体ホルモンの併用補充療法で 飲み薬 貼り薬 塗り薬などがあります 主に血管拡張に関連する症状を緩和し 心血管疾患や骨粗しょう症の予防効果もあります 体がエストロゲンに晒される時間が5年以上になると 乳がんや子宮がんなど 婦人科系の重篤な病気を発症しやすくなるので 長期間に及ぶ治療は注意が必要です 更年期の頃から エストロゲンと同様の働きをする成分である 大豆イソフラボン ざくろ マカなどを積極的に摂取し エストロゲンの急激な減少に備える事も大切です *漢方薬 以下の3種類の漢方薬が 主に使用されます ・当帰芍薬散 比較的体力が低下しており 冷え症で貧血傾向がある方 ・加味逍遙散 比較的体質虚弱で疲労しやすく 不安・不眠などの精神症状を訴える方 ・桂枝茯苓丸 体力が中等度以上で のぼせ傾向にあり 下腹部に抵抗・圧痛を訴える方 *向精神薬 ひどい精神症状に対しては 抗うつ薬 抗不安薬 催眠鎮静薬が用いられます のぼせ ほてりなどの 血管拡張 放熱症状にも効果があるとされています こうした治療が功を奏しない場合は 心理療法も試みられます <更年期症状の背景に隠れている可能性のある疾患> 更年期障害の症状と似ているため 鑑別が重要な疾患としては *橋本病(甲状腺機能低下症) *うつ病 *悪性腫瘍 などがあります 当院にも ずっと更年期障害として経過観察されてきた方で 血液検査をしたら 甲状腺機能低下がみられ 投薬により症状の改善が得られた患者さんがおられます
高橋医院