COPDの説明を続けます

<疫学>

@世界のCOPD

2015年のWHOの調査では
40歳以上のCOPDの有病率は10%前後で
死因の4位を占めています

2030年には
有病率は30%増加して
死因も3位になると予想されています

COPDの有病率 死因順位の変動を示すグラフ


@日本のCOPD

日本のCOPDの有病率は8.6%で

40歳以上の530万人
70歳以上の約210万人が
罹患していると報告されています

日本におけるCOPDの罹患者数の変化を示すグラフ

男性が女性の2.3倍多く
患者数は 女性は横ばい 男性は増加傾向にあり
高齢者で増加傾向を認めます

日本のCOPD患者の性差の経時的変化を示すグラフ

しかし 診断されているのは9.4%で
500万人以上の患者さんは
診断がつかず見過ごされていると推定されています

この点が大きな問題です

COPDと診断がつかず見過ごされている患者が多数いることを示すグラフ

息苦しさなどの症状が
加齢のせいだと思われて
受診していないことが多いようです

死因は10位で
(男性では8位 女性は20位)
高齢者が多く 半数以上が80歳代です

日本のCOPDの死者の性別 年齢を示すフラフ


<危険因子>

@タバコの煙

最大の危険因子です

患者さんの90%に喫煙歴あり
死亡率は非喫煙者より10倍高くなります


COPD患者の90%が喫煙者であることを示すグラフ

発症率は
加齢 喫煙暴露量の増加とともに増えることが
明らかにされています

発症率が加齢 喫煙暴露量の増加とともに増えることを示すグラフ

また
禁煙は進行を抑制しますが
健常者と同程度まで呼吸機能が改善するかは
今のところ不明です

一方
喫煙者でCOPDを発症するのは15~20%程度で
喫煙者でも
発症しやすい人 しにくい人がいます

喫煙感受性を規定する遺伝子の存在が
想定されていて
その有無が 喫煙者の発症を規定すると
考えられています

また 受動喫煙も危険因子で
頻度が2倍に増えると報告されています

妊娠中の母体の喫煙が
子供の成人後のCOPD発症と関連があるとの
報告があります

@大気汚染

デイーゼル排気粒子 PM10 PM2.5 黄砂などが
関与します


@室内の汚染物質

PM NO2 CO バイオマス燃料からの煙などが
調理に従事する女性の原因として注目されています

特に発展途上国では
COPDによる死亡の50%がバイオマス関連と
報告されています

こうしたことから
室内作業中の換気が重要と指摘されています

一方 人の側の内因性危険因子もあります

COPDの危険因子についてまとめた図表

@呼吸器感染

小児期の呼吸器感染は
大人でのCOPD発症のリスクになり
肺結核の既往もリスクになります

@低栄養

@肺の病態

気道過敏性の存在や 喘息の罹患は 
リスク因子とされています

@発症感受性遺伝子

代表的なのがα1アンチトリプシン欠損症
肺胞構造を破壊するプロテアーゼの抑制因子である
α1アンチトリプシンの遺伝子が欠損すると
COPDを発症しますが
日本では極めて少ない病態です

その他の 疾患感受性遺伝子としては
*アンチプロテアーゼ
*抗酸化因子
*MMP
*炎症性サイトカイン
*免疫制御因子 サーファクタントプロテインD
などの遺伝子が報告されています


<病理>

COPDでは
肺のさまざまなレベルで病理的変化が見られます

COPDの肺のさまざまなレベルで病理的変化を示す図

@中枢気道

炎症細胞の浸潤を認め
粘膜下線 杯細胞の増大により
気道での過分泌が生じて喀痰になります


@末梢気道(2mm以下の細気管支)

炎症細胞浸潤 気道壁の線維化・肥厚などにより
気道の変形 細気管支の破壊による
気道消失が認められます

@肺胞領域

壁が破壊され 非可逆的に拡大して
気腫性病変となります

線維化は認められません

@肺血管

内膜 血管平滑筋の肥厚
炎症細胞の浸潤を認めます

これらは 血管内皮の機能障害
肺高血圧症 右心負荷の原因となります

@炎症

あらゆる部位において
慢性炎症がみられるのが基本です

マクロファージ 好中球
CD8 Th17 自然リンパ球
といった免疫細胞の浸潤が見られます

タバコの煙などの有害物質の吸入が原因と
考えられています

この慢性炎症は
禁煙後も長時間持続することが
明らかになっており
その理由として
自己免疫反応の関与などが推定されています
高橋医院