COPD
という単語を聞いたことがあるでしょうか?

Chronic Obstructive Lung Disease

アメリカのCOPDの啓蒙ポスター

日本語に訳すと 慢性閉塞性肺疾患 という
多くの人が罹患されている肺の病気のことです

日本のCOPDの啓蒙ポスター

の話をしましたので
今日からCOPDについて解説しようと思います


<COPDの定義>

COPDは 次のように定義される病気です

*タバコの煙を主とする有害物質を
 長期間 吸入することで生ずる
 肺の炎症性疾患

*呼吸機能検査で 気流閉塞を示す

*末梢性気道病変 気腫性病変が
 さまざまな割合で複合的に関与する

*徐々に進行する
 労作時の呼吸困難 慢性の咳 痰を示すが
 症状に乏しいこともある

*進行性の経過をとることが多い

COPDの定義を説明する図

昔は 慢性気管支炎 肺気腫と呼ばれていた
喫煙者が罹患する代表的な慢性呼吸器疾患で

喫煙者の20%前後
5~6人に1人が罹患するとされる
高齢者に多い 緩徐に進行する病気です

<診断基準>

COPDの診断基準は 下記の通りです

*長期の喫煙歴などの暴露因子がある

*気管支拡張薬吸入後の
 呼吸機能検査のスパイロメトリーで
 1秒量が70%未満

スパイロメトリーで1秒量が70%未満だとCOPDであることを示す図

*他の気流閉塞をきたしうる疾患を除外すること

また COPDを疑うべき人
*40歳以上の喫煙歴のある人

*労作時に呼吸困難がある人

*風邪を繰り返す 回復に時間がかかる人

などです


<気流閉塞・末梢性気道病変・気腫性病変>

気流閉塞というのは
聞き慣れない言葉だと思いますが

息を吐くときに
力いっぱい吐ききれない状態
吸った空気が出ていきづらい状態
のことを言います

この病態により
COPDのさまざまな症状が生じてきます

COPDのさまざまな症状を示す図

また 末梢性気道病変というのは
肺の末梢の方で
炎症などの病変が見られること

気腫性病変というのは
肺の末梢構造が破壊されて
気腫・風船のような状態になること

を言います

気腫性病変について説明する図

<COPDとは?>

要するに COPDは

長い間タバコを吸っていることが原因となり

肺に炎症が慢性的に起こり
徐々に末梢レベルで病変が生じて
肺胞レベルで破壊が起こってしまう

肺胞レベルでの破壊について説明する図

そうなると 
肺の構造が壊れてしまうので
気腫が生じて 肺が過膨張な状態になり
吸った空気が溜まってしまい
(専門的には 残基量が増加する と表現します)

吸った空気が溜まってしまう状態を説明する図

息が充分に吐ききれない状態になり
息苦しさ 呼吸困難が生じて
さらに咳 痰などが加わってくる

そのようにして起きてくる病気です

初期には自覚症状はありませんが
徐々に労作時の息切れを自覚するようになり
病気が進行すると
安静時にも息切れが起きるようになります

さらに進行すると 呼吸困難が一層増悪し
寝ている間も息苦しさを感じて眠れず
酸素吸入をしながらでないと
日常生活が送れなくなってしまいます


病期の進行にともなう症状の変化を示す図

読み手の皆さんは
COPDという単語を初めて聞く方が
多いと思います

確かに認知度は低いのですが
患者さんの数は多く
推定患者数は500万人以上とされていますが

COPDと実際にきちんと診断されて治療されている患者さんは少ないことを示す図

実際にきちんと診断されて治療されているのは
そのうちの数十万人に過ぎず
初期には自覚症状が少ないので
COPDと診断されず
喫煙を続けて重症化してしまうことが多い

そのため 日本呼吸器学会などは
COPDを世の中の人々に広く知ってもらおうと
キャンペーン活動を行っています

日本呼吸器学会のCOPD周知のためのポスター
東京都のCOPD周知のためのポスター
高橋医院