最近 本屋さんに行くと
美術書コーナーでなく
ビジネスや経済関連のコーナーで
美術やアートに関するタイトルの本を
見ることが少なくありません

そんななかで見つけた1

アートは資本主義の行方を予言する



銀座で東京画廊を主宰されている
画商の山本豊津さんが
書かれた本を読みました



とても面白かったので紹介したいと思います

 
<アートと資本主義>

山本さんは冒頭で
美術作品は 美術品であり 商品である
と言われます



絵画や彫刻を 
商品として見たことがないので
なんとなく面食らってしまいます(笑)

芸術と経済は 
相反する存在ではない

いずれも 人が価値を判断し
価格をつけるものである

作品の持つ純粋性は
人間が作り出した価値であり

それをとりまいて起こる経済の現象も
また人間の価値である


なるほど

そして
 
そのいずれにも顔を突っ込んでいるのが
画商である

と 自らの立ち位置を説明されます




ついで 
資本主義経済のなかで 
美術品が有するユニークさ
を紹介されます

興味深いことに
美術品は時として 他の商品に見られないほどの
価格の暴騰を見せることがあるそうです



数万円で購入した作品が 
時を経て何億円になることもある

こうした激しい価格の暴騰は 
資本主義の仕組みそのもので

資本主義の特質を最も先鋭な形で
表しているのがアートである

と解説されます


そうなんだ 全く知りませんでした

そして 
芸術と経済の関わりに関する認識が
時代によって大きく変化している 
と指摘されます

戦前は 
作品そのものを重視する教養主義が跋扈していて
売れるものを描くのは画家の良心に反する 
といった気風がありましたが

戦後は
美術は商品でもあるという商業主義が
根付いてきたそうです



なんだか 面白そうですね!

 
<投資対象としてのアート作品>

絵画は
投資対象としては特別なものだそうです

なんといっても
価格の伸びしろが 
他の投資対象と比較していちばん大きいので
投資家にとっては究極の投資対象となる

しかも かさばらず 軽く
持ち運びに便利な資産

ただし
価格が上がるまでに長い時間がかかるのが 
玉に瑕

投資対象としての絵画の特徴を 
このように分析されます

現代アートでは 
特にそうした特徴が強く見られ

価格が数千円から何百億円まで
飛躍的に上がることが珍しくないとか

こうしたことを踏まえ
絵画は生活に必要ではないのに 
最も高い価格がつくことは何故だろう?
と 疑問を呈されます

そして 使用価値と交換価値 という
商品が有するふたつの価値
について言及されます



経済学を学ばれた方には 
懐かしい言葉なのかな?

たとえば 1本のペンには

ものを書く道具という使用価値

1100円という 
手に入れるための交換価値=価格 

があります




使用価値と交換価値の乖離が 
資本主義のひとつの特徴で
使用価値が高いものほど 
価格が高いとは限らない

むしろ 使用価値が低いものほど
時間がたつと 
人の思惑で交換価値が上がる可能性があるのです

希少性があるものの交換価値は上がる

これが 価値と価格のパラドックス

こうしたことが起こる背景には
交換価値=価格は 
人の思惑でどんどん上がる
という事情があります

資本主義経済社会の
根幹をなす貨幣そのものが
価値の転換と飛躍から成り立っています

なぜなら 
1万円札の原価は22円にすぎないのに
世の中では 
1万円札は10000円で交換されているのです

つまり 
資本主義経済は 
価値の転換と飛躍から成り立っているわけで
その特徴が極端に反映されているのが 
アートの価格に他ならない
というわけです



なるほど なんとなく 面白い

つづきます

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