脂肪肝か肝硬変か見分ける方法
健康診断で肝機能異常を指摘され 心配で来院される方が多くおられます 肝臓の病気というと B型 C型のウイルス性肝炎が 圧倒的に多かったのですが ウイルス性肝炎の良い薬が出てきたので(特にC型) 最近は減少傾向にあり 代わって増えてきたのが脂肪肝です 特にNASHと呼ばれる脂肪性肝炎が 患者さんの数も増加傾向にあり 注目を浴びています NASHについては このブログでも詳しく解説しましたが 最近はネットなどで 玉石混合の情報が飛び交っているので 来院される患者さんも 前もって勉強されて来られる方が多いです そして NASHの勉強をされた方の多くが 「肝硬変になるのが怖い」と言われます 確かに当院のブログでも 「NASHを放置すると肝硬変になるリスクがあります」 と書いてあるので 患者さんを必要以上に 心配させてしまうかもしれません(苦笑) でも そうした心配が動機となって 来院していただけるのは 病気を未然に防ぐという観点からは 良いことだと思います NASHは そう簡単に肝硬変に進展することはないこと 但し 体重増加が続いたり 糖尿病を併発したりするとリスクが増えること を説明しますが そうした説明を聞かれた患者さんが 次に心配されることが 「自分は既に肝硬変になってはいないだろうか?」 ということです そう心配されるお気持ちは よくわかります ただ 健康診断で肝障害を指摘され 脂肪肝やNASHが疑われる場合 既に肝硬変まで進展されていることは ほとんどありません NASHから肝硬変に進展する場合は 肝臓の中で「線維化」という現象が ゆっくりと時間をかけて積み重なっていきます この図に示されているように NASHから F0→F1→F2→F3→F4と 徐々に線維化が進行していきます この線維化こそが NASHの予後を規定する最も重要な因子です しかし その線維化の程度を評価するのが難しい 以前ブログで説明したように 肝臓の中でどの程度の線維化が生じているかを 正確に評価するためには 入院して「肝生検」という検査を しなくてはなりません アメリカ肝臓学会の NASHに関するガイドラインでも 肝生検の重要性が指摘されています でも 忙しい患者さんに 入院して肝生検をしましょうと提案しても なかなかできないことが多い そこで最近は アメリカ肝臓学会(AASLD)も ヨーロッパ肝臓学会(EASL)も それぞれのNASHのガイドラインのなかで 肝生検に代わって 肝内の線維化を予測する 血液検査 画像検査を推奨しています 約3年前のブログには 線維化を予測する血中マーカーとして CK18フラグメントの有用性が期待される と書きましたが 結局 これが良い! という血中マーカーは 残念なことに現れませんでした その代り FIB-4インデックスというものが 線維化予測マーカーとして重要視されています これは 年齢 AST ALT 血小板 の4項目を用い 下記の計算式でインデックスを算出するもので NHKの番組で紹介されたら 肝臓学会のHPにあるFIB-4計算コーナーに 1日に何万件ものアクセスがあったそうです! 最新のガイドラインでは まず このFIB-4インデックスを用いて 肝内の線維化の程度をスクリーニングします この値が1.3未満だと 線維化はほとんどないと判断され 脂肪肝の方の85%は 心配ないと評価されます しかし2.67を超えると 線維化が進んでいるリスクがあり 肝生検を勧められますが そうした方は1%ほどです 1.3から2.67の間の方は MRIを用いた精密検査が勧められます これがMREという特殊な検査です MREは 肝臓の線維化を反映する固さと 脂肪量をともに評価でき また 炎症の程度も評価できます 肝臓の固さを評価する検査としては エコーを用いたフィブロスキャンという 検査法もありますが 肝内の線維化の分布は不均一なことが多いので 肝全体の線維化の状況をみることができるMREは より正確な評価ができると推奨されています ということで まずFIB-4インデックスでスクリーニングして 本当に線維化が進んでいる可能性のある 少数の方をピックアップし MREで 線維化を正確に定量的に評価するという流れが 肝生検に代わり行われるようになりました FIB-4インデックスは 簡単な血液検査をすれば 外来でその場ですぐに計算できますから 心配な方は遠慮なく相談にお越しください
高橋医院