NAFLD 脂肪肝は 
贅沢な食事をしている証しだよ
と 自慢して(?)いられないのは

たちの悪いNAFLDである
NASHから 
肝硬変や肝がんに進展してしまうことがある

ということが明らかにされてきたからです

このシリーズの最初にも書きましたが

脂肪肝が肝硬変になるなんて 
従来の医学では考えられていませんでした
ましてや 肝がんにまでなるなんて 
全くの想定外!

だから 医者も脂肪肝を重視していなかった

<NAFLDから肝硬変 肝がんに進行することがある>

しかし NAFLDの10~20%は
炎症や線維化をともなう 
たちの悪いNASH・脂肪性肝炎で

NASHの5~20%が 
5~10年の経過で肝硬変になり

それからおよそ5年間の経過で 
肝硬変の0~15%が 
肝がんになってしまう

脂肪肝からNASH 肝硬変 肝がんに進展していく割合を示す図

ウイルス性肝炎に比べれば 
肝がんになる率は少ないものの
良性疾患と考えられていた脂肪肝が
がんになることがあるなんて、、、

最初にそのデータを見たときには 
本当に驚きました

しかし 
今やそれが常識です

NASHから10年以上の経過を経て 
70歳くらいで発がんすることが多い

発がん率は 
男性に多い傾向があります

また
糖尿病や脂質異常症をともなっている方は 
発がんしやすい

今やNASHは
日本の肝硬変の原因の2~6%
肝がんの原因の2~5%

C型肝炎がベースの肝硬変に比べ
発がん率は少なく 
予後も良いのですが

経口抗ウイルス薬の普及で
C型肝炎からの発がんの減少が予測される近い将来
肝がんの原因でいちばん多いのはNASH 
という日が来るかもしれません

欧米では日本より状況が凄くて
肝がんの原因の10~24%は
NASHによるもので

肝硬変や肝がんのために
肝移植をしなければいけなくなる原因の第一位は
既にNASHになっています

@どんな人が肝硬変や肝がんになるの?

しかし NASHの方でも
線維化が進行して 
肝硬変や肝がんになる方は少数派です

どんなNASHの方が 
病気が進行しやすいのでしょう?

検討によると

*年齢が高い

*糖尿病を併発されている

*肥満が高度

*生活習慣の改善が見られない

といった方では 
病態の進行のリスクが高いようです

NASHの予後予測因子

ということは 

たとえNASHであっても
張って生活習慣を改善して 
体重を減らしたり 
糖尿病にならないように努力すれば
肝硬変や肝がんに進展するリスクを
減らせるということです

なお 
NAFLDの多数を占めるNAFLからの発がん率は低いので
日本で1000~2000万人いると推定される
NAFLDの患者さん全てが
発がんの心配をされる必要はありません


<肝がんにならなくても NASHの生命予後は悪い>

また 肝がんを発がんしなくても
NAFLDになると生命予後が悪いことが
明らかにされていますから
注意が必要です

アメリカやドイツからの報告では
NAFLDは健常人に比し生命予後が不良で 
死亡率が10%ほど高い

死因は 
心筋梗塞などの心血管疾患 悪性腫瘍 肝疾患 
の順番で

死亡に関わる因子として

*年齢が高い

*糖尿病を併発している
(2.7倍も死亡率が高くなる)

*肝硬変に進展している

といったことが報告されています

特にNASHの予後は NAFLと比べても不良で
肝関連死が有意に高率で(NAFLの13.9倍)
心血管疾患による死亡率も高率です

但し ここでも
NAFLの生命予後は健常人とほぼ同等と
の報告もありますから

生命予後に関してもリスクが高いのはNASH 
ということになります

NASHの危険性を ご理解いただけたかと思います

そうなると 
健康診断などで肝機能異常を指摘されて
NAFLDが疑われている方は

ご自分が NAFLなのか
それとも 
肝がんになるリスクがあり 
生命予後が悪いNASHなのか

が とても気になると思います

次回は その点について説明します

もう1点 今日のお話で 
気に留めておいていただきたいことは

NASHに糖尿病を併発すると
肝硬変への進展 肝がんの発がん 生命予後
の全てに悪影響を及ぼす

ということです

NASHと糖尿病の関連については 
あとで詳しく説明しますから
憶えておいてください


高橋医院