NAFLか? NASHか?
NAFLDの80~90%は 単に肝臓に脂肪が溜まったNAFLな状態で NAFLDの10~20%が 炎症が加わり線維化している状態の NASHである そしてNASHは NAFLと異なり 肝硬変や肝がんに進展するリスクがあり 生命予後も健常人に比べて悪いこと を説明してきました 以前は NAFLとNASHは別個の独立した異なる病態で NAFLからNASHに進行することはないと 考えられていましたが 最近は NAFLがNASHになることもあると 推定されています では *どんなNAFLの方が NASHに進展するか? *NASHの線維化は改善するか? *NAFLとNASHを どのようにして鑑別するか? 健診で肝機能異常を指摘されて NAFLDが疑われている方は そうしたことが とても気になると思います NAFLの方が 肝生検という入院して肝臓の組織を採取する検査を行い 顕微鏡で肝臓内部の線維化がどれだけあるかを評価して 診断されてから5年後にもう一度肝生検をして 再度 線維化の程度を評価した検討では 5年間の経過中に *線維化が進行したのは 32~53% *変わらなかったのが 30~50% *改善したのが 16~29% とされています <NASHになりやすい人> 前回説明したように 肥満や 既に説明した食生活などの生活習慣が 改善されないと 線維化は進行するし 経過中に糖尿病を発症すると やはり線維化が進行する 線維化の進行 つまりNASHになるリスク因子としては *肝機能のAST(GOT)が高値 *年齢が高い *糖尿病がある 経過中に発症する *肥満 経過中に体重が増える *高血圧を合併している などがあることが 明らかになりました やはり 生活習慣を改め 肥満や糖尿病のコントロールを充分にしないと 線維化が進行して NASHになってしまうリスクが高いようです <NAFLDとNASHの鑑別法> では NAFLかNASHかは どのように鑑別できるのか? 実は ここが頭の痛いところでして NASHかどうか? つまり肝内で炎症があり線維化が進んでいるかどうかは 入院して肝生検検査を受けていただき 顕微鏡で実際の肝臓の状態を目で見ないことには 正確に評価できないのです エコーやCT MRIなどの画像検査では 残念ながら炎症や線維化の程度は評価できませんし 血液検査でも NAFLとNASHを明確に鑑別できる項目はありません しかし NAFLDが疑われている方 全てに入院していただいて 肝生検検査を受けていただくことは 非現実的です そこでいくつかの検査項目を組み合わせて NAFLとNASHを鑑別するスコアリングシステムの開発が試みられ フェリチン インスリン 4型コラーゲン の3つの血液検査項目の組合せで評価するNAFIC scoreが 有望視されていますし 血小板という 血液を凝固させる働きを持つ血球細胞の数 肝障害を反映する AST(GOT)とALT(GPT)の比率 を用いた NAFLとNASHの鑑別も行われています AST ALTに関していうと ともに肝細胞がダメージを受けたときに 血中に放出される物質で 肝障害の程度を評価するときは ALTが指標になりますが ALTの値は線維化の程度は反映しません だから NAFLの経過観察をしていくときに ALT値が安定しているから 大丈夫 NASHにはなっていない とは言えないのです 線維化が進んでくると ALTよりASTの方が高くなってきますから 上述したようにASTとALTの比をみたり 血小板や4型コラーゲンなどの線維化を反映する項目を あわせて評価していくことが大切になります また NAFLとNASHを鑑別できるバイオマーカーとして 期待されているのが CK18 fragmentという物質です この物質は 以前にお話しした アポトーシスという細胞死に 関連するものですが NASHになると NAFLと比べて 肝細胞がアポトーシス状態になることが多いので CK18 fragmentを測定して NASHかどうか鑑別しようという目論見です 実際にNASHでは非NASHに比べ 高い値を示します まだ保険適応はされていませんが 将来 NAFLとNASHを鑑別する強力な武器になるかもしれません ということで NAFLとNASHの鑑別は一筋縄ではいきませんが NAFLの方が 生活習慣を改めず 太ったままでいたり 糖尿病を発症したりすると NASHになってしまうリスクが高いのは 間違いないようです 次回は NAFLDの生活習慣病としての側面を紹介します
高橋医院